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黒18

 シャルロッテは楽器はどれもそれほど得意ではなかった。

 聴く方は好きではあったが。

「あら、楽器もなさらないなんて」と残念そうにかつ誇らしげな表情を浮かべ、ご令嬢たちはお得意の楽器を手にする。

 向こうが持ちかけてきたこともあって、カルミア達の演奏はとても上手だった。プロの演奏家のよう。

 と言ってシャルロッテが褒めるとカルミアは一瞬嬉しそうで満足気な表情を浮かべたが、含む意図を読み取ったのか、少し表情が陰った。


 第一回目の茶会はそのようにして終わった。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


報告を終えるとアルフォートはくっと笑って

「準備は無駄になったようだな」

と言う。恐らく、この人は無駄な準備をしていると思っていたが黙って見ていたのだろう。

シャルロッテは憮然として

「お言葉ですが殿下、無事に事が済んだからこそ言えることにございます。」と。むしろ準備が無駄になってよかったではないかとシャルロッテが言うと、

「そのような顔をするなシャル。お前があまりに不満げな顔をするから、ついからかっただけだ」

と笑う。その後、真面目な顔になり「ラティフォリア家は油断ならぬ、くれぐれも用心せよ」と言う。


 その後に、シャルロッテ嬢は音楽もよく知らないという噂が駆け巡るが、放っておく。別に大したことではないので。

 夜会でわざわざこの曲ご存知、と試すような人が現れるが、笑顔で、作曲家の名前や演奏している楽器を褒めてやると、一様に悔しそうな顔をして去っていった。

 その様子を隣の男はとても愉快そうに眺めていた。


 その後、二度三度とカルミアからの茶会の誘いがあり、参加すると、やはり、毎回揃いのアイテムを身に付けていて仲間の結託を見せつける。会合の度に、刺繍やらお話会やら「あら、こんなこともなさらないの」「こんなこともご存知ないなんて」という遊びを続ける。

 その度に、素晴らしいですわ、何でもご存知ですのね、と言ってやれば満足のようだった。全くたいしたことないとシャルロッテは思う、バウヒニア先生の授業に比べればと。


 バウヒニア先生の場合ほめ方ですら気に入らなければ恐ろしい形相で何度でも訂正させる。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 ある日、あるご令嬢が、マナーについて指摘すると、シャルロッテが「まあ、教えてくださってありがとうございます。先生にも後ほどお伝えいたします。」と微笑む。「勉強熱心な方なので、後日、先生が伺うかもしれませんわ 教えてくださいませね」

と微笑む。自信満々な令嬢に、ほかの人が

「先生ってどの方ですの」と問うのでシャルロッテは笑顔で答える。

「ジャポニカ=バウヒニアですわ」と。その名を告げた瞬間、茶器の中で水滴が落ちる音が聞こえそうなくらい沈黙が広がる。

 マナーにお詳しいご令嬢が

「わたくしの覚え違いだったかも」

と震えだす。ほかの令嬢が顔を青くしながら

「シャルロッテ様は、よくバウヒニア先生とお会いになっていらっしゃるの」と問うので

「ええ。今授業を受けてますのよ。バウヒニア先生のことを皆様もよくご存知でいらっしゃるのね。今度先生にお会いしましたら、ぜひとも皆様のお話をさせていただきますわ」

と微笑むと、それ以降、マナーを指摘するような話は一切なくなった。


 そして、それ以降、何にも知らないシャルロッテ嬢の噂を社交界でぱったりと聞かなくなった。

 

読んでいただきましてありがとうございます。

バウヒニアパワーすごい。

そして、結局、名前はジャポニカを採用してしまいました。

シャルロッテ=マーリンにアルフォート=ブルーボーンと比べれば何を恥ずかしがることがあろうかと。

ニカというあだ名はそのままで。もう今はそう呼ぶ人はいないかもしれない。

 

もう少しカルミア会のお話が続きます。

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