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黒15

 「やはりわたくしはカルミア様が一番ふさわしいと思ってますわ。」

という称賛の声を聞きながらカルミアはひと組の男女を眺めていた。その後に続く言葉は、あのような誰だかわからぬものを到底認めるわけにはいかないという()()()に対する言葉なので、曖昧に聞き流す。

 視線の先は、アルフォート王子。とその婚約者であるシャルロッテ嬢だった。


 かつてカルミアは王子の婚約者の第一候補として噂されていた。といっても正式なものではなく、しかも、同率一位が乱立するような状態だったのだが、彼女らからするとそれがまるで確実なもののように思えていた。中でもカルミアは、家柄もよく、父親の地位も高かったため、有力視されていた。

 アルフォート王子の婚約者が発表された以降もまだそれを信じ続ける者もいるという。


「ありがとう、でも…」

と困ったように笑ってみせると、決まって、

「まだわかりませんわ」

「まだ婚約ですもの。」

「議会でも反対されている方がいるみたい」

などと言って笑う。カルミアは笑顔を浮かべつつも内心少しため息をつく。


 カルミアはそのように持ち上げる者たちの思惑を感じとっていた。

 アルフォート王子の婚約者としてカルミアが良いと思っているのではなく、何の繋がりもないあの方が婚約者となってしまうと困るというだけのお話だと。


 再び、男女の方に視線を向けると、明らかに様子のおかしい人物がシャルロッテの方へ近寄っていく。周りの人々も気づいていないような素振りで様子を伺っていた。

 濃い紫の液体が揺れるワイングラスが傾く瞬間、タイミング悪くシャルロッテ嬢が大きく移動し、液体が床や壁を染める。その場が小さく騒然となるが、偶然にも、すぐ拭き取れば片が付く程度の被害だったため、シャルロッテが素早く近くの者に指示をして事が済む。不埒な行為を行なったものも、体格が良い方が連れてゆき、静かに退室していった。

 なーんだ、という感じの雰囲気が漂う。彼女の薄い色のドレスがワイン色の染みがつくのを望んでいたかのように。


「今のご覧になりまして。」

と声を潜めつつ楽しげに笑いあう声がする。実行犯の名前を言いながら

「あの方も災難ねー」

と笑うのを聞きながら、

(もしも選ばれたのがわたくしであれば、あのようなこと起こらなかったでしょうに)

とカルミアは思っていた。

 かつては、自分もよくあのようなことをされたものだった。年上の令嬢から、集団で詰め寄られたり、持ち物を取られたり、壊されたり。

 しかし、今から思えば、あれは良い経験であったようにカルミアは思っていた。自分の至らなさを教えていただいたのだと。

 自分が同じように教えて差し上げる立場になってより強く確信する。出過ぎた真似をすれば、あのように反感を買うのは当然であると。

 今は、周りにいるものは、カルミアの教えを受けたものばかりだった。その集団の中心にいるので、あのようなことは決して起こらない。


 やがて、アルフォートが離れ、シャルロッテは一人になる。

「参りましょう。」

と声をかけて、皆を連れてご挨拶に伺うことにした。



ここまで読んでいただきましてありがとうございます。

ようやく、ライバルの登場です。

カルミア様です。

カルミア ラティフォリアも花の名前です。白っぽかったりピンクっぽかったりする、とっても可愛いお花です。傘みたいな面白い形してます。

ただし、毒があります。花言葉も野心、大望、裏切りと怖いワードが並びます。


 キャラクターの話をすると、自業自得ながらも多少可哀想なところがあるのです。

 コロナリナは「私かわいい! 故に選ばれる!」って自分で思って自分で行動してた感じなのだけど、カルミアの場合は、親や周りからそそのかされている感じです。あなたなら大丈夫、お前なら絶対選ばれるって言われてたのに、あれ? っていう。その後ちょー落ち込んで寝込んだと思います。そのような姿を周りには見せないけど。で、やっと出てきたのが、今回の夜会なのでした。

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