表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/33

黒12

 扉の向こうで、エリーゼとアルフォートが話している頃。


 シャルロッテはしばらく1人考えていた。

 アルフォートに愛されているという幻想を見かけていたということについて。両親の愛に対しては、愛なんて口当たりのよい言葉で誤魔化されぬと拒否しているのに、アルフォートに対してはそんな甘さを求めていた、なんて。


「先ほどの話、聞いておりまして? ルフィール様。」

すぐ近くにいる護衛に声をかけると、えー 聞いてなかったことにしていい? って言いたそうな顔をしながら立っていた。

「愛って何でしょう。」

切実そうな表情のシャルロッテの問いに、ルフィールはほらーやっぱりーそういう系じゃーんと明らかに逃げ出したそうな表情と声で言う。

「ええとぉ、職務中ですので」

「わたくしが許可します。」

シャルロッテがきっぱりという。

これ、絶対無駄口に含まれるよなーと思いながらも、多少シャルロッテに対し同情する気持ちもあったのでお話に付き合うことにした。心の中で、エリーゼ様の話長引きますようにと祈りながら、少し考える。

「シャルロッテ嬢は、アルのこと嫌い?」

もちろん、そうではないということを知っての上での質問である。

シャルロッテは少し考えて、

「アルフォート殿下に対し、嫌悪の感情を抱くことは絶対に有り得ません。」と答える。

続けて「じゃあ好き?」と問う。その問いに関しては

「わたくしにとってアルフォート殿下は、好悪の対象とは成り得ません。恩に報い、失望されぬよう邁進するのみです。」

と即座に言う。

「それって、もしかして殿下という立場に対しての話じゃない?」

と問うと、シャルロッテは目を見張る。「オレは、アルを殿下としてもすごいって思うけど、たとえ何かあって殿下でなくなっちゃったとしても大好きだと思う!」と答え、「あー、でも、アルが殿下じゃなくなっちゃうと、今度はにーちゃんが面倒くさい立場になるのかぁ…。それは困るなー…」とひとりで勝手に悩みはじめる。

 シャルロッテは、かつて、己がマーリン家の後継という身分をなくした時のことを思い出していた。周りの人々は、目に見えて態度が変わったものだった。その中で、唯一と言っていいほど、変わらぬ態度で接していた幼馴染のことを思い出す。彼との間にある感情は、何であろう。ただ、彼にとって有用な人間で有ろうというその想いは。それは、男女間に生ずる類のものではないようにシャルロッテには思えていた。役目を遂行するためには愛する対象となり得なくてよかったのだろう。むしろ、情のような不確かなものの方が、容易に変化してしまう気がした。

「ありがとうございましたルフィール様、おかげでどのように在れば良いかわかったような気がします。」

という。

「よかったよ。でもこの会話はアルには内緒にしておいてね。」

ルフィールは、ふう、これで勤務中の無駄口についてバレずにすんだー とほっとしていた。それから、面倒で恐ろしい問題に巻き込まれるのも回避できたー と思っていたのだった、この時は。

シャルロッテも異存はない、特に言いふらす内容でもないしと思いながら再度礼をいう。「愛を教えてくれてありがとうございます」

「シャルロッテ嬢、まって、それ何かちょっと…」

それなんか違うから、とルフィールが抗議を言いかけた時、バタンと大きな音を立てて目の前の扉が荒々しく開かれ、シャルロッテとルフィールは会話を止める。

「うわー…。」と思わず声が出ていた。ルフィールにとっては最悪のタイミングだった。しかも、アルフォートは想像以上に機嫌が悪そうだった…。


 出てきたアルフォートに対し、シャルロッテは頭を下げる。

「申し訳ございませんでした。」とアルフォートが部屋に入る前の非礼を詫びる。


アルフォートがルフィールに視線を向けると、明らかに狼狽していた。

「何があった。」

と短く問うと、シャルロッテは

「強いて言うなれば、愛について語り合ってました。」

と答える。ルフィールは、やーめーてー、それ違う、全く違う意味になっちゃうからー!と心の中で叫ぶ。

冷や汗が滝のように出てくるルフィールに、アルフォートは視線だけで、地上最強の化物と出くわした気持ちを味あわせていた。

 アルフォートは「ほう…」と低くつぶやき、「ルフィール、後で来い。」と言い残し去る。


 ルフィールは、人生終わったと思っていた。

 残り任務を終え1人ルフィールは重い足取りで歩く。別れ際に、シャルロッテが「やはりアルフォート殿下へわたくしより一言申し上げましょうか。」と言うが、むしろ悪化するからやーめーてーと、内心絶叫しながら、丁重に固辞した。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


処刑されるにしても、せめて、最後に、兄とは話をしておかねばと、ルフィールは兄の部屋へ向かう。


「にーちゃーーーん、オレもうダメかもー」

ルフィールの声が響き渡る。

ここまで、読んでいただきありがとうございます。

次、ノワーゼお兄ちゃん登場です。

年齢の上から、

・姉 レザンヌ:アルフォートのトラウマの従姉。既婚。遠方に嫁いだ。

・ノワーゼ:アルフォートの補佐的な仕事してる。

・ルフィール:護衛、だけど本職は何か軍とか騎士的な奴。

・妹 フロール:かわいい、辛辣。

の4兄弟姉妹です。

ちなみに、アルフォートは、ノワーゼの下のルフィールの上。

シャルロッテはアルフォートよりは下。

 具体的な年齢は、管理が難しいのでふわっとさせてください、ごめんなさい。

 基本、ふわふわした世界観で生きていきたいと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ