ピアルーム
今になっても慣れない。この独特な空気。
押しつぶされそうになるあの感覚。
ぎゅーと胸の辺りが苦しくなる瞬間。
私は学校が嫌いだ。
_________________________________________
いってきます。と言って降りた車が恋しい。
動かない足を無理やり前に出し、進み始める。
向かうのは学校の正門、ではなく、ピアルームと呼ばれる特別教室の入り口。
ピアルームは、なんらかの形で他生徒との交流が難しくなってしまった人の居場所。私は中二の二学期という半端な時期からそこで過ごす事になった。
といっても、、いるのは私1人の時が多い。
ピアルームは校舎の渡り廊下を渡った所にあって、ほぼ校舎と繋がっている。
そのため、来る時間を間違えてしまえば、他生徒と鉢合わせしてしまう事もある。
(今日は、まだ大丈夫。)
私は一度校舎の外から教室を覗き、まだ授業中であることを確認してからピアルームへと向かった。
着くと、靴を脱いでから扉をノックして、素早く中に入る。
「…おはよ、ございます。」
そう小さな声で挨拶をすれば、ここの担当の先生、
安藤先生が駆け寄ってきてくれた。
「新葉さんおはようございます。今日も頑張って来たね。寒かったでしょう?」
先生はいつも私が来ると頑張ったねと言ってくれる。
それがとても嬉しいんだけど、反対に教室にも行けないのに何処が頑張ってるの?と思うこともある。
…ほんとに、捻くれている。
「新葉さん。今日は何をしますか?」
安藤先生はストーブを点けながら私に聞いた。
「えっと。今日は…、数学します。」
私はそう答えながら荷物を隅に置いて、その中から数学のワークと筆箱を取り出した。
他生徒と交流出来ないということは、教室に行けないという事で、授業が受けられないという事。
だから、私は自力でみんなに追いつかなければならないため、ゆっくりとはして居られない。
来て早々にワークを始める私を見て、安藤先生は少し心配そうな顔をしてから、出席報告のためにルームを出て行った。
(証明…。えっと、ここをこうして。)
苦手な証明の問題に頭を悩ませていると、安藤先生が私の担任、水川先生を伴って戻って来た。
今の時間は授業が無かったため、来たらしい。
「新葉さんよく来たねぇ。体調は?大丈夫ですか?
この頃は寒いから。」
水川先生の質問に、首を縦に動かす事で答える。
先生はいつも私を気にかけてくれるが、私はそれが少し苦手でいた。
「今日は数学のワークしてるんだね。そっか。
一応、机に入ってたプリント持ってきてみたんだけど、やってみる?」
そう言って先生が差し出してくれたプリントは、各教科のものだったり、学級で活動を進めているものだったりのようで、みんなに追いつきたい私は、それに頷いた。
先生はその答えに納得したようで、プリントの中の一枚を私に差し出しながら説明を始めた。
________________________________________