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57、もう一度、お前に翼を

すみません、引き延ばしたくなかったので、ちょっと多いどころか通常時の倍あります。

意識が覚醒すると、何かが飛び付いて来る


「パパ!」


涙目のシアだった、軽く頭を撫で、周囲を見渡し確認すると、死の森の神殿内、神台の前だった


コンソールを出し、異常が無いか確認する、装備欄の指輪が消えている、目視でも指輪が消えている事を確認する


最悪の気分だが、蘇生の指輪は効果は発動したようだな、これで蘇生の指輪はソフィアとシアに装備させてある二つに、ストレージにある一つ、これで保険は一度ずつか、今後はより注意が必要になるか


それよりソフィアは? 何時もなら真っ先に来る所だが、もう一度周囲を確認すると


俺の真後ろに、両膝を地に付け、両手を組み祈る様に丸まり、小刻みに震えているソフィアがいた


「ソフィア」


俺の言葉に体をビクンと反応させると


『申し訳ありません、申し訳ありません、申し訳ありません』


と呪文でも唱える様に繰り返している



「落ち着けソフィア、負けはしたが、種が分かればどうと言うことは無い」


ソフィアを落ち着かせ、休息を取る事にした、シアを抱き抱えて座るソフィアの背中は、とても小さく弱々しい少女の様だった



さてどうするか、あの水龍の使用した魔法ないしスキルは反射系だろう、魔法とは相性が最悪だな


直接攻撃で何とかしたいが、あのヘドロの湖に入った上で、巨大な水龍と殺り合う事は不可能だろう


強大な一撃や集中砲火では無く、ちまちまソフィアに神槍で削らせるか?


ソフィアに目をやり考えるが、無理だな、集中を切らさず長期戦をこなせるとは思えん


水龍の討伐は諦めるか? しかしあの最後に出現した黒い翼、十中八九戦神絡みだろう、無視する訳にもいかんな


しかし今のソフィアを連れて殺れるか? いっそソフィアとシアを置いて、俺だけで殺るか、、


するとシアが首を小さく横に振り、睨み付けてくる


無理矢理にでも同行しかねんな、現状のソフィアを見るに、まともに戦えるとは思えんが、ここで置いて行けば、俺の信用を失ったと感じ、今後使い物にならなくなる危険もあるか


仕事でも大きなミスを犯し、その後重圧に潰れ、辞めて行く者を、俺は数多く見てきている


当然、ミスを咎め責め立てる真似等した事は無いが、ミスした箇所の改善を指導し、フォローした所で潰れる者は潰れる


最終的には本人次第だ、解決するには、辞めるか、もう一度トライし成功をもって自信と変えるかだ


どちらの方法も正解だ、望めるならば後者を選択して欲しいが、重大なミスであればあるほど、後者は困難であるし、心身に異常をきたすほどならば、前者を選択すべきだろう


ソフィアの負担を減らし、自信を取り戻させるには、、反射、反射か、あれを使うか、一度きりのスペシャルだが、あれならば、ソフィアはアブソルトウイナーを使用後、全力の神槍を一発放つだけですむ


「ソフィア、明日もう一度、水龍を殺りに行く」


『はい、レオン様』


返事は弱々しく、目もどこか虚ろだ


「心配するな、お前は俺を信じて付いてこい、俺は勿論、シアもお前を信じている」


「そうなの! シアにおまかせなの!」


『分かりましたレオン様、ありがとうシア』


ソフィアは微かに笑うと、その目に少しだけ力が戻った様に見えた


 

その後、打ち合わせを済ませ、とりとめのない会話をし明日に備えた


翌朝、準備を済ませ、転移で鍾乳洞へ飛び、湖に向かい一本道を進む



湖に到着すると、水龍がヘドロから姿を現す、今回は初めから背に翼が有るか


「よし、手筈通りに行くぞソフィア! アブソルトウイナー!」


俺が唱えるとソフィアの前に、二振りの剣が出現する、ソフィアが剣を握ると剣は光の粒子に変わり、ソフィアの背に赤と白の二対、四枚の翼が顕現するが、、



「パリーーーーン」


と音を立て翼は砕けて飛散した


何だと!? 水龍は反射だけでなく、強化魔法の打ち消しも使えるのか?



水龍が首を持ち上げると、口先に黒い球体が現れる


ソフィアは翼を消され狼狽え棒立ちだ、「チッ」やはり前の敗走が響いているか


「ソフィア! 集中しろ! 隙を見てアブソルトウイナーをもう一度試すぞ」


シア、バックアップを頼むぞ



「ガァアアアアアアア!!」


咆哮と共に水龍が、持ち上げた首をこちらに振るうと、黒い球体は無数に別れながら俺達を襲う


俺は剣を抜き迎撃する、無数に飛来する球体をソフィア、シアの盾になる様に前に出ながら撃ち落としていく


行けるな、前に奴が放った黒槍より遥かに遅く、俺の振るう剣でも容易に迎撃出来る、撃ち漏らしに被弾するが大した衝撃も無い



俺を飛び越え、後方へと向かった球体は、ソフィアが剣を振るい迎撃するが、動きが悪すぎる


そのザルな迎撃を、シアが地面から枝を無数に出してフォローしていた



水龍は攻撃を防がれている事に激昂したのか、その眼を赤く光らせ、黒い翼を大きく広げると、湖から大量のヘドロが巻き上がり、巨大な黒槍を形取る


「グルガアァァァーー!」


咆哮と共に黒槍が俺へと放たれる、俺はストレージから素早く水晶を取り出す


予定変更だ、これを先に使用し、奴に致命傷を与え、その後ソフィアに止めを刺させる


ここ最近、切り札のバーゲンセールだな、このアイテムはゲーム時のボス、堕ちた戦神討伐時のドロップアイテムなのだがな


俺が水晶を握り締めると、水晶は砕け散り、俺の前に光り輝く盾が出現する


飛来した巨大な黒槍が盾によって阻まれると


音も無く黒槍は消える


次の瞬間、盾が更に光りを放つと、先程の黒槍の3倍の大きさの黒槍が、水龍へと放たれた


水龍はソフィアの神槍を防いだ時同様に、ドーム状のヘドロで身を覆うが


反射した黒槍はドームを突き破り、水龍の右半身、背にある黒い翼の一枚を貫き消える



「グワァグルガアァァァーー!!」


と大きく半身を抉られ、悲鳴を上げ、ヘドロを撒き散らしながら悶え狂う水龍


このアイテムの名称は、神罰の水晶と言う、名称についてはもはや触れないが、効果は一度だけどんな攻撃でも反射する、反射される攻撃は元の攻撃の300%で反射され、この攻撃は防ぐ事も軽減する事も出来ない、この攻撃を受ける者の防御力は0として計算する、だ


死ぬほどの痛みを貰った礼だ、精々苦しみもがけ、本来ならソフィアの神槍を反射させて、それを更に反射させて消滅させてやろうと思ったのだがな



「ソフィア、止めをさせ! 行くぞ、アブソルトウイナー!!」


二振りの剣がソフィアの前に出現し、ソフィアが剣を握る


握ったまま微動だにしないソフィア


「何をしている!? 早く翼を顕現させ、水龍に止めをさせ!!」



ソフィアは体を小さく震わせながら、消え入る様な声で



『も、持てません、、何で、、何で持てないの、、』



ソフィアの手元をよく見ると、握っているのでは無く、手は剣をすり抜けている


俺がアブソルトウイナーで、出現した剣を握ろうとした時と同じだ、、



翼が消滅したのは、水龍のスキルか何かかと思ったが


俺の戦神強化魔法、アブソルトウイナー、絶対的な勝者、相応しくない者は使う事を許さんのか?


一度の敗走ごときでか?


剣を使用出来ず、狼狽え、焦り、絶望しているソフィアを見る


いや違うな、アブソルトウイナーは、ソフィアを絶対的な勝者にする為の魔法だ、そのソフィアが勝利を疑い、迷えば、絶対的な勝利など訪れる訳もない、使用出来ないのは道理か



後方から悲鳴とは違う咆哮が響く


振り返ると、半身を削られた水龍が口を大きく開け、その口からヘドロを俺に向けて放つ瞬間だった


放たれたヘドロは放物線を描き、俺の頭上から降り注いで来る


剣では防ぎきれんな、後方へと飛び退避する


「ぐっ、くそ!」


退避しようとしたが、先程被弾したヘドロが固まり、足が地面から離れない


迫るヘドロの中、強引に足を引き抜き退避しようとするが、直撃は避けたが、間に合わずヘドロに押し出される形で後方へと吹き飛ばされた


『レオン様!!』


「パパ!」


吹き飛ばされる俺の体に、枝が巻き付き、ソフィアとシアの元で降ろされる



「良くやった、シア」


「はいなの!」


『レ、レオン様、私は、、どうしたら、、』


「まるで初めて会った時のソフィアの様だな、迷い、嘆き、無力に絶望する少女」


『今は、今はもう違います、レオン様に御力を頂き、私は強くなりました』


「そうだな、お前は強くなったな、俺が時間を稼ぐ、アブソルトウイナーを使え、ソフィア」


ソフィアはグッと下唇を噛むと


『剣を握る事が出来ないんです、、きっと私が負けたからもう、、』


「望めソフィア、勝利を、俺は何時でも、どんな敵が相手でも、お前を勝たせてやる、必ずな」


『レオン様、、』


「シア、駄目なママを頼むぞ」


「まかせてなの!」



再び水龍の前に出る、俺を睨み付け唸るが、直ぐには攻撃をしてこない、奴も限界が近いか、まぁ俺も限界は近いがな


先程喰らったヘドロだが、スリップダメージ、所謂継続的にダメージを受ける物の様だ、ヘドロを受けた箇所から煙が上がり、皮膚に熱した油をかけ続けられる様な痛みがある、継続的に回復薬を使用しても何処までもつやら


俺はストレージから複数の呪符を取り出し、水龍へ投げると、呪符からバスケットボール程の火球が飛び出し、次々と水龍に直撃していく


「グガァ、グゥ」と小さく悲鳴を上げる水龍だが、やはり大して効果は無いか


「痛いか? 腐れトカゲが! お前がくたばるまで御馳走してやろう!」


回復薬を飲みながら、ひたすら呪符を投げ続ける、一枚につき1ダメージか? 10ダメージか? どうせガチャの外れアイテムだ、腹一杯、胸焼けを起こして嘔吐しようとも御馳走してやる、火属性の呪符は9999枚ある、足らぬのなら他属性も9999枚だ、存分に味わえ


水龍もヘドロを俺へ吐き出し応戦するが、先程より遥かに小さく少ないヘドロだ、俺はヘドロをかわしながら、ひたすら呪符を投げ続ける


水龍は俺の呪符に対して、反射を使用する気配すら無い、MP切れか? それとも小賢しく温存か?


そんな攻防が暫く続くと、水龍は激昂したのか、デッドラインが近いのか、背に一枚残った翼を大きく広げると、首を大きく持ち上げる、開幕撃ち込んで来た黒槍か


「グガァアアアア!!」と黒槍を放つ水龍だが、打ち出された黒槍は以前の速度は無い、余裕で回避出来る速度だが、水龍の顔がまるで勝ち誇った様に嫌らしく歪む



黒槍は俺へと向かわず、後方へと飛んで行く


飛ぶ先には、アブソルトウイナーを必死に掴もうとするソフィアと、直ぐ隣にシアがいる


「この腐れトカゲが!」俺はソフィアとシアの元へ走る、ダメだ最後の神の涙を使用したとしても間に合う距離じゃない


迫る黒槍に気付き、慌てて迎撃をしようとするソフィアの前にシアが立つ


「シアにまかせるの! ママはシアがまもるの!!」


『シア!』


「シア!」


迫る黒槍に対して、シアは杖を両手で握り締め掲げると、地面から大量の枝が突き出し、枝は一つに纏まり分厚い壁になる


「ジュシューーーー!」と黒槍は壁に阻まれるが、徐々に壁を溶かし壁を突き進んでいる



ダメだ防ぎきれない、が此なら間に合う!


俺は黒槍が壁を突き抜けた所で、シアの元にたどり着いた、壁を貫いた事で槍の形状が崩れ、ヘドロとなってシアに振りかかる寸前で、シアを抱き締め覆い被さる


「ジュシューー!!」


と俺の背が溶ける音がする中



「パパ!」


『レオン様!!』


「いつぅーー、、ほ、本当に良くやったなシア、町に戻ったら好きな物を買ってやろう」



後方から再び雄叫びが上がる、止めを刺しに来たか、しぶとい上に良い性格してやがる、流石に限界だ


俺とシアの元に駆け付けようとするソフィアを手で静止する



「アブソルトウイナーを使え、勝利を疑うな、必ず勝てる」


『でも、剣が、、、やっぱり私にはむ、、』


「ママはできるの! パパをしんじて!!」


「お前は護るんだろう? 俺とシアを、俺は、俺とシアはお前を信じているぞ、剣を取れソフィア!」



ソフィアは目を閉じ、二振りの剣に手を伸ばし掴み取ると、剣は飛散し、ソフィアの背に赤と白、二対四枚の翼が顕現する


ソフィアは瞬時に、俺達と迫る黒槍の間に立つと、四枚の翼で前方を覆い黒槍を防ぐ、次の瞬間翼を広げると、黒槍は飛散し消えていく



よし、いけたか、、安堵していると、二対の内の一対、白い翼が砕けて消える


まだダメなのか? するとソフィアは、残った一対の赤い翼を大きく広げ、手を天にかざし



『神炎ウリエル、罪深き者を滅却しなさい』


頭上に巨大な火球が現れるが、以前の赤黒い物ではなく、赤、美しいソフィアの髪と同じ色の火球だった



浮かんだ火球が不規則に歪み始めると、まるで卵を突き破り産まれ出る様に、炎で出来た龍が火球を食い破り出現する


炎の龍は水龍目掛けて降下し呑み込もうするが、水龍も最後の力を振り絞ったのか、湖からヘドロが吹き出し、ドーム状に水龍を覆う、炎の龍はヘドロに激突し、食い破ろうとするがヘドロに呑み込まれ消えていった



ドーム状のヘドロが解かれ、中から水龍が姿を現す、残った一枚の翼を広げ、ヘドロが壁を形成すると壁から、ヘドロで出来た龍、黒龍が姿を現し、此方に向けて放たれた


不味い、どうする? ダメージのせいか頭が回らん、リターンで間に合うか?



「リターンを使え、退避を」


「パパ、だいじょぶなの」


『御安心下さいレオン様、絶対的な勝利を、私は必ず勝ちます』



何を言っている? あの威力の反射だ、食らえば即死は間逃れん



ソフィアは手を前に突き出し


『愚者に神罰を、万物を弾け、神盾アイギス!!』



ソフィアがそう唱えると、前方に光り輝く盾が現れる、神罰の水晶を使用し現れた盾と同様、いやその盾より数倍でかい盾だ


反射された黒龍は、光りの盾に衝突した瞬間に姿を消す、直後、盾から美しい赤い炎の龍が、再び水龍へと放たれた、放たれた炎龍は3倍、いや5倍の大きさはあるか


「グゥオオグアアアア!」と最後の雄叫びを上げた水龍は、炎龍に瞬く間に呑み込まれ湖へと沈んで行った



湖全体から火柱が巻き上がり、ヘドロが蒸発していく、炎龍は水龍とヘドロの全てを滅却し頭上へと登り、丸まり火球へ戻る、火球が弾け飛散すると同時に、頭上から光り輝く大量の水が降り注いだ



光りの盾も飛散し、粒子となってソフィアの背に帰り、その背には赤と白の翼、二対四枚の翼が戻る


光り輝く雨の中、湖には虹が架かる




ソフィアの背に戻った翼は、何時にも増して美しく、その後ろ姿は自信に溢れている様に見えた



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