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43、闘技場 前編

翌朝、闘技場に向かうのだが、案内はジギール自ら申し出てきた


本当に隙が無いというか気遣いの男だな、ランギールは武人タイプで実直と言っていたが、真逆の印象を受ける


数多くの経験を積み、柔軟に対処出来る、このレオンとしての外見は20台半ばの言わば若造だ


その若造の尊大な態度に、不甲斐な表情一つ出さずに低姿勢を貫くとは、領主と言うより商売人だな



馬車にて闘技場の手前まで行き内部に入ると、中々に見事な作りだ、ローマで見たコロッセオの数倍の規模はあるか


そこに集まる人の数も相当な物だ


テンプレならここで絡まれ一悶着ないし、返り討ちのざまぁな展開があるのだろうが、そんなものは一切なく、おそらくVIP専用と思われる観覧室に通される


領主のジギールに護衛の騎士達20人程の大所帯だ、それも警護の騎士達の警戒は尋常では無かった、そんな空気も有り、人波は自然と割れストレスフリーでの到着だ



観覧席に着席し、ジギールが闘技場について説明をする


腕に自信の有る者、傭兵に騎士崩れなど、他国から武芸者など様々な者が集まる様だ


一対一から、チーム戦など試合の形式も様々あるらしい、その全ては賭けの対象で現代の様にきちっとしたオッズにより運営しており、胴元、つまりジギールが必ず儲かる仕組みとの事



午前中の試合は、事前に登録してあるチーム戦との事で、大盛り上がり中、試合が行われている



「それでジギール、試合には参加出来るか?」


俺の問いに考え込むジギールに


「参加するのは俺だけだ、何も相手を殺したいだけと言うことではない、相手は魔法職が良い、賭けの対象から外しても構わんし、何なら此方が金を出してもいい」


「畏まりました、午後からになりますが、魔法職に絞り、エキシビションとして相手を募りましょう、3人程の勝ち抜き戦として募集し、参加した者には報酬を出せば直ぐに集まるでしょう、報酬は当然此方が用意致しますので」


「面倒をかけるな」


「いえ、寧ろ御役にたて光栄です」



その後、チーム戦を観覧したのだが、感想としては物足りない、連携など見ても参考になる様な物は無かった


連携の面で言うならば、以前見たライラ達傭兵やランギールの騎士達の連携と比べると2枚や3枚劣る物だった


当然か、それ程腕が立つならば、正規の仕事で稼げる筈で、闘技場で危険を冒す必要も無いだろう


その事についてジギールに聞いてみると、確かにそうではあるが、チーム戦とは基本的に一対一ではマッチメイク出来ないレベルにある者、もしくは新人等が闘技場デビューの入門として行う事が多いとのことだ



最初は大興奮だったシアも飽きてきたのか、ジギールの用意した菓子を頬張りながらソフィアにじゃれている


ソフィアはそれに相手をしているが、元々ソフィアからすれば、とるに足らんつまらん戦いだろう


そして次のチーム戦が午前の最終戦という所で、会場内が盛り上がり大歓声が上がる


何事かと見ていると、ローブを纏いフードを深くかぶった二人組が現れる


片方は細身で小柄、片方は巨漢の二人組、対する相手は、体長2メートルをゆうに越える魔物、熊型か



「随分な盛り上がりだな、魔物との戦いもあるのか」


「最近現れた二人組で、チーム戦で負けなしで、賭けの対象にならないため、魔物とのマッチメイクにしたようですな」


「観客に危険は無いのか?」


「客席との境には、魔導機を使い防壁を貼っております、当然防壁を破れる魔物を出す事はありません、もっともそんな魔物を捕らえる事の方が無理ですがな、ハッハッハ」



大歓声の中、試合が始まると、巨漢の男が槍を豪快に振るい魔物を牽制しながら惹き付け、小柄な男の方はその隙を付き、近接、手にはめた爪で魔物を削りとっている


動きも先程までの者達よりは良い、だが特別な物など感じないつまらないものだった


それから暫くすると魔物は倒れ、会場は大興奮、大歓声だ


思っていたより期待はずれだな、午後の個人での参加者に期待しよう、俺の練習相手になれば良いのだがな



するとそれまで試合を一切見ずに、シアの相手をしていたソフィアが、歓声に包まれている二人組に視線を向けている


「どうしたソフィア、何か気になったのか?」


『あの者、少しは出来る様です』


「見るべき物など無かった様に思ったが、気になる程か? 両方か?」


『確かに気になる程ではありませんが、小柄な者はマリーより僅かですが上回るかと』


「それは武装込みか?」


『はい、おそらく』


マリーの武装込みを上回るとなると、確かに人間にしては相当な者だ、出会った人間中で言うならば、帝国の将軍くらいか、しかもそんな者が闘技場にいるのは不自然ではある


まぁ気にする程の事でも無いか、さて午後からだが


「気にする事でも無いだろう、午後からの事だが、ソフィアお前はシアを連れ、街の中でも散策して来たらどうだ?」


『レオン様、それでは護衛が出来ません』


「今後、シアを連れるならば、別れ行動する機会も有るだろう、その時にトラブルが起き、後手に回るのも面白く無い、慣れておくことは必要だろう、それにシアも此処には飽きた様だしな」


シアに目を向けると、飽きたのだろう、退屈そうに落ち着きが無くなってきている



『そういう事ならば分かりました、しかし十分御気を付け下さい』


「ああ、迷宮での事もある注意しよう、ジギール、ソフィア達に案内を付けて貰えるか?」


「畏まりました、護衛も兼ねて10名騎士を同伴させましょう」


とジギールは控えている騎士に目配せをする




『御気を付けて』


「いってくるの!」


案内に連れられ二人は観覧室をあとにする


俺は軽く手を振り見送った



「宜しいのですか?」と問うジギールに


「女子供と常に一緒というのも息が詰まる、それに緊張感も緩みすぎるしな、たまにはむさ苦しい爺さんとサシも悪くない」


迷宮での油断、この世界に慣れて来た所であの様だ、それに加えシア、必要ならば親子ごっこもしてやろう


昨日の今日だ、戦神が仕掛けてくる事は無いだろうが、様々な事態に対処出来る様に、経験しておくことは必要だろう


俺自身も慣れてきた事での緩みと、戦闘経験の少なさを正さなければならないだろう


それにジギールに言った言葉も本心だ、単純に四六時中一緒ではな


そんな事を考えているとジギールから声がかかる



「では、試合が組まれるまで、むさ苦しい爺と景気付けも兼ねて一杯如何ですかな? ハッハ」


「それも悪くないな、試合に支障の無い程度に付き合おう」



闘技場内にあるレストランに案内され、軽く食事を兼ね談笑しながら試合が組まれるのを待った



程なくして試合が組まれた様だ、エキシビションの3連戦、相手は魔法を使用出来る者に限定


ジギールと別れ、闘技場の係員に騎士4人を伴い、試合の控え室に通される


出番を待つ間、係員に少し話を聞くと、午後の試合には実況、解説がつき、試合をさらに盛り上げるそうだ


成る程、ショービジネスとしては当然か、暫し待つと係員から声がかかり、控え室から通路を通り会場へと進む



会場に出ると、上から眺めるのとは違う印象を受ける、会場内に目をやっていると、魔法かアイテムなのかは知らんが、実況者と思われる声が会場全体に響き渡る



「はい、本日もやって参りました! 実況は皆のアイドルことセリーヌと、解説には何と何とグランギール1の魔法士とも言われる、賢者リーリエ様だぁ~~~!!!」


「うむ、宜しく頼む」


「うぉーーー!!」と大歓声の中


思わず、ずっこけそうになるわ! あの残念エルフ、姿が見えないと思ったら、こんな所まで潜り混んで来るとは


気を引き閉めようとした矢先にこれか、出そうになる溜め息をおさえ、向かいの通路から出てくる対戦相手に集中する事にした


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