17、プライドの価値
幸いトロールのリポップはなかった
新しく変わったアブソルトウイナーを試してみたところ判明したのは
掛けた後に放つ1回目の神炎の強化で、使用すると赤い光の翼を消え今までのアブソルトウイナーと変わらないということと
神炎を使わず、翼のある状態はHPMPを除く全ステータスの20%UPになり、翼の効果時間はアブソルトウイナーが切れる60分と同じであった、ちなみに神槍に効果は無く使用しても翼は維持された
それと面白いことにアブソルトウイナーで呼び出した剣はソフィアが握らなければ、宙に浮いたまま俺の意思で、ある程度好きに動かせた、無論俺は握れずソフィアにしか使用出来ないのだが
やっとまともな補助系魔法になったと言うところだろう
アブソルトウイナーの効果の上昇に満足し、周囲にいる魔物を討伐しながら6日を消化した
魔物といっても神殿周りの魔物とは比べるまでもない弱い物で、道中の魔物も考えると神殿周りが一番強く、こちらに来るほど弱くなっているようだ
ただしトロールには正直驚いた、ゲーム時には無い全滅させることで、王が神にクラスアップする仕組みとは
さながらイベントの連続ボス演出のようだ、今後は獣人種の拠点での戦いは注意しなければならんな
さて6日目になり、食事を済ませて集落入り口に腰をかけているとソフィアが何者かが接近して来ているとのことだ
ソフィアには探知系のスキルが無いのにも関わらず、精度は低いものの明らかに探知できている
高いステータスの成せることか、あるいは戦神とは魔物を討伐するための存分だ、その為に備わっている力なのかは分からんが
それに敵の強さもある程度測れるようだ
「強さは?」
『先日の者同様、感じる力は極小すぎて弱いとしか』
「警戒はしておけ」
暫し待っていると人の集団を確認する
確認出来る分で10人程か?馬車を一台引き連れている、見逃した女の姿も確認出来る
馬車の中に人を連れているのか?ストレージがある以上、物資を運搬というのは不自然だ
「来たようだな」
『攻撃を開始しますか?』
「まぁ待て、あの様子から見ると約は違えたのだろうがな」
そう口にしつつ俺はチラリと頭上に目をやる
そう頭上にはアブソルトウイナーにより顕現した赤い光の剣が遥か頭上にある
奴等がもう少し接近したところで剣を投下しソフィアに使用させ神炎を撃ち込ませる
すると先頭にいる身なりの良い鎧を着けた女が一人前に出てくる
何か宝石の付いたネックレスを手に掲げて、こちらに話しかけているが、やはり理解は出来ない
あるいは魔法の詠唱か?と思っていると、その女は手に持つネックレスを自分で掛け、口を開くと
「私はグランギール王国、ランギール領主、ユリア=ランギールと言う、伝わるだろうか?」
おぉここにきて言語が解るとは、あのネックレスは通訳機能でもあるということか
「レオンだ、それでそのなんたら王国の領主が何のようだ?」
グランギール王国とは聞こえているが、んな王国は知らんを強く出し多少煽って見る
「先日の件、こちらの国所属の傭兵が貴殿等を攻撃した件について交渉がしたく私が伺った」
交戦する気はないのか?いや決裂すればさもありなんか
「交渉か、まず先に何故襲ってきた?」
「傭兵達がトロールの調査に来、集落を発見したが、勇みトロールと誤認して貴殿等を攻撃したようだ」
すると横にいるソフィアから視認出来るのではないかというほどの怒気が発せられ
『貴様等!レオン様と卑しき魔物を誤認したと言うのかっ!!神にあだなす背信者共め!死ね!』
と言うといなや左手を女に向け
『神槍グング』
「まてソフィア」
『しかし!レオン様!?』
「まぁ奴等の言い分も聞こうじゃないか、殺るのは何時でも出来る」
ランギール一行は凍り付き、慌てて警戒を強めているが、先頭の女、なかなかの胆力だな、表情は強張って要るものの平然としている
「ほう、トロールと誤認して襲って来たと、それを信じろと?」
「確かに都合の良い言い訳に聞こえるかも知れないが真実だ、人類の敵である魔物と誤認するなど最大の侮辱であることは理解している、誓って魔物を崇拝する邪教や魔物と協力関係にあるなどということは、けっしてない」
「俺は、そこの女と取引をしたつもりだったのだが、ぞろぞろと引き連れて来た理由は何だ?」
「彼女、ライラと言うがライラが約を取り付けたのは、その場の命の対価としての取引と、こちらは認識している」
「つまりは?」
「ライラとの取引成立後、報復としてランギールに攻撃を加えることを危惧し、ランギール領主として町への報復行為を行わないことを交渉に来た次第だ」
「それは、貴様等では俺達から町を守れないと?」
「悪戯に被害を出すのは双方にとって利が無いと思っている」
「双方に被害が出るか試してみるか?」
そう俺が言うと場はピーンと凍り付き、暫しの沈黙の後、女は意を決したのか口を開く
「失言を謝罪しよう、我等では守ることは困難と認識している、謝罪を含め賠償する形で町と住人の安全の約を取り付けたく交渉をしたい」
ふむ、賠償か、、普通矢で頭を射たれて生きてる奴など居やしないが死んだものとしての賠償か?
こちらとしても物資の補給はしたい、この世界、いやこの国での情報なども大きいな
それに何処までコイツらが信用できるかも疑問だ、領主か、、
部下の失態を何処まで持つつもりなのか、ひとつ試すか
「女、声が聞こえにくい近くまでよれ」
ほんの一瞬の間の後、女は俺達の近くまで進む
「これで良いだろうか?誓って争う気は無いのだ」
俺は丸太に腰掛けたまま女を見上げ
「俺の認識を言ってもいいか?」
「無論だ」
「お前の部下がへまを犯し、上司のお前が代わりに謝罪をしに来た、ここまではいいか?」
「概ね、立場は違うがそういうことになる」
「その謝罪相手には力があり報復を恐れている」
「その通りだ」
「決裂したら大変だな?」
「ああ、そうならないため私が来た」
「その大変な謝罪と言うのは人を見下ろしながら出来るものなのか?」
たまに客が不手際を受け謝罪を強要し土下座などをさせて炎上というニュースを目にする
日本人の大半はそれを客の傲慢で謝罪側が可哀想と口を揃えていう
客商売をしてきた俺から見るとサービス側の怠慢に感じる
その店側は本当に最初から可能な限り誠意ある対応を頭からしたのだろうか?
確かに、はなっから悪意しかない客もいるが大半は初動の対応に店側の傲慢差が引き金になり客をヒートアップさせることが多い
これは人気がある、大手である、このことから産まれる傲慢さが多い、後は対応がバイトで教育不足などだ
俺からすると頭を下げる、土下座することで客が納得してくれるなら、ラッキーだな程度にしか感じない
そこにはプライドなどは関係無い、サービス業とはそう言うものなのだ、本当に客の身になり初動から丁寧な対応をしてなお、激昂させたのなら、自分の対応の未熟さを恥じる
だからといって俺が客として土下座を強要するかといえば、NOだが
では何故こんなことを言ったのかと言えば、領主であればさぞやプライドも高いだろう、得体の知れぬ者に頭を下げるなど、さぞや屈辱だろう
その屈辱にまみれても取引として安全を取り付けたいのか、己のプライドと利を天秤にかけ迷うこと無く利を取れるのか
下らんプライドに固執する人間などを信用は出来ない
俺は注意深く女を見ると、女は少しの迷いもなく地に片膝を付き頭を下げ
「謝罪を受けてほしい、可能な限り賠償もしよう」
と迷いもなく口にする女に対し、後方の集団は主を辱しめられていると思ったのだろう、困惑と怒気が見てとれた
少なからず慕われ尊敬に値する領主ということなのだろう
「良いだろう、謝罪は受け取ろう、交渉に移ろうか」
そう俺は口にした




