16、交渉に向けて
「まさかこの子達から攻撃を加えていたなんて、、っでも約は取り付けたはずよ、私が行けばそれで」
今にも出ていきそうなライラを伯爵がたしなめる
「これはそういう話じゃないのよライラ」
「今の話を元に整理するとね」
「異国の最低でも特級傭兵クラスの実力者がトロールの拠点を潰した」
「恐らくは、その直後にその子達に襲われ、後からきた貴方も圧倒され貴方の涙ながらの命乞いに応じて逃がした、食料など要求をしてね」
「確かにガキ共は偽ってはいたが何が違うてんだ?」
「大きく違うわよ、まずトロールは魔物であり人類の敵という認識よね」
「当たり前だろうがよ!」
「その人類の敵を討伐した直後に、彼等からすると異国人の私達に襲われた、ギルド長、貴方ならどう思うかしら?」
「そりゃおめえ、そんな奴らぶっ殺してやる、、」
とガルバのあらげていた口調は、歯切れの悪い物に変わっていく
「そうね、でも私ならこうも思うかも知れないわ、この国は人類の敵である魔物と協力関係にある、もしくは魔物を崇拝している邪教徒の国かもしれないってね」
「んなっそんな馬鹿げたことを、、」
「無いとは言い切れないわね」
「でもっ私は約を取り付けたわ!だから私が物をようしていけば!」
「確かにライラに対して慈悲はかけたのでしょう、けどそれはあくまで、その場は見逃すだけともとれるわよ?」
「それと、これは私の勘だけれど、彼等は逃がした後の対応なんて、どうでもいいんじゃないかしら?」
「なんの事をいってるのよユリア?」
伯爵は指を一つ指を立てて
「貴方が約を違えて行かないなら逃げたであろう町に攻撃を加える、場所は指定し直した日数から程なくして発見するでしょう」
二つ指を立てて
「貴方が約を違えて援軍を連れて襲ってくる、例え援軍を連れて来ても自信があるか、リスクなく退ける余裕があるのか」
三つ指を立てて
「貴方が約を守り物資を届ける、貴方は命も捧げると伝えたからには、始末されその後町を襲う可能性もある」
「そんなことっ!」
「無いとは言い切れないないし領主として都合よく上手く行くなんて考えられないわ」
「私達の取れる行動は、戦力を集められるだけ集めて対向する、期限の後4日、町の捜索に10日かかったと考えても、14日ではまず難かしいでしょう、相手は1級のライラを子供扱いをした怪物なんですから、情報からトロールの拠点を恐らく一夜で壊滅させ無傷なんておまけもあるわね」
「もうひとつは約を守り物資を届けた上で交渉し町と住人に被害を与えないよう約を取り付ける、私としては被害を最小限にするには、この道しかないと思っているわ、どう?」
「それしかねーだろうな」
「それなら私が何とかその約を取り付けるわ!」
「貴方だけでは無理ね、当然私も行くわ」
「ガキ共の暴発が引き金になったかもしれねえ、ギルドとしてもほっとけねぇ、俺もいくぜ?」
「ライラには悪いけど」
伯爵は机に置いてあるベルを3回ならすと
扉から10数名の騎士達が雪崩れ込んでくる
「おい!?伯爵!?」
「ユリア!?」
「そこにいる4人の傭兵を拘束し牢に入れて置きなさい」
「ちょっとまってユリア!?」
騎士達を止めようとするライラに伯爵は腰に帯刀するレイピアを素早く抜き放ちライラの首元に突き付け制止する
「連れて行きなさい」
騎士達は素早く4人を取り押さえ部屋の外へ連行する
4人は何かを口にしようとしたが、伯爵の気迫におされ、観念したのか黙って部屋を後にした
「どういうことなの?ユリア」
レイピアを腰に戻し椅子に腰掛けた伯爵
「ごめんなさいねユリア、あの子達は交渉の材料の一つにさせてもらうわ」
「それってどういうことよ!?」
「彼等の怒りや誤解が、あの子達の命で解けて上手く交渉が進むと言うなら、安い出費と言うことよ」
「ギルド長、良いわね?」
「ああ、かまわん、本来一般人を襲ったとなると誤認でも賠償が決まりだ、しかも奴らは虚偽の報告までしてる」
「ギルド長っ!?」
「うるせぇライラ!!どのみち奴等は傭兵の資格を剥奪だ!」
「それにライラよう、今回はたまたま相手が強く無傷だったが、魔法を付与した矢で頭撃ち抜いてやがんだぞ?」
「分かってんのか?本来なら誤認で殺しちまってる、しかも隠蔽だ、さらに聞けば他国の貴族らしい身なりってんだぞ?」
「よくて奴隷で死ぬまで労働、悪けりゃ張り付けの死刑だ」
ぐぅぅっと、うなり下を向きライラは黙る
「ギルド長の理解が早くて助かるわ、ここで彼等は渡さん!なんて言われたら領主として貴方も牢に入れなきゃならないところだったわ」
ふふっと笑う伯爵に
「わらえねえよ、俺だってどうにかしてやりてぇが、状況が悪すぎる」
「だから代わりに私がっ!」
「もうやめねぇかライラ!お前は確かに腕もいいが、お前の感じた通りだ特級クラスは化け物揃いだ、もし広範囲の魔法持ちなら地獄に変わるぞ?この町は」
「落ち着きなさいライラ、交渉の一つにすると言うだけよ、話を聞くに彼等からすると、あの子達は道端の石ころより無価値でしょう、差し出しても要らないということも充分あるもの」
「ならなんでよ?」
「言ったでしょ?私は領主なのよ、住人の事を町の事を第一に考えねばならないわ」
黙りちからなく椅子に座るライラをよそに
「では、要求された物資の用意を急ぎましょう、向かう人員は私、ライラ、ギルド長、私の側近の騎士を数名に、あの子達4人、傭兵ギルドからも多くても数人にして頂戴、後はリーリエにも来てもらうように頼むわ」
「グランギールでも屈指の賢者と言われる魔法士のエルフか、来てたのかこのランギールに」
「予定ならもうすぐ到着するわ、トロールの保険で呼んだのだけれどね」
「それと帝国との大戦時、山の部族に協力を仰ぐために用意した翻訳疎通のネックレスも幾つか残っているわ、万全をきしましょう」
それから伯爵の貯蔵している水、食料、魔力回復薬、魔力回復に至っては貯蔵している量では足らないと話し合い町で品質の良い物を追加で大量に用意をした
物資が揃った翌日の夕刻に魔法士のリーリエも到着し、状況説明をし随行することになり
伯爵にライラ、ギルド長のガルバ、当事者の若手4人の傭兵、側近の騎士5名、ギルドの2級傭兵の手練れ3名に魔法士のリーリエを加え計15人の少人数
用意した翻訳疎通のアイテムば伯爵、ライラ、ガルバ、リーリエがそれぞれ装備し
その日の夜にランギールを発ち、死の森のトロールの集落へ出発したのだった
それからランギール一行は、万全の準備をし、死の森を進み、トロールの集落へ向かう
集落へ到着したのは期限の6日目の昼であった
集落の入り口には、報告にあった青の豪華な武具に身を包み金髪の男が、転がる丸太を椅子がわりにし平然とこちらに目を向けている
傍らに立つ女性もまた報告通り、燃えるような赤い髪に、それもまた一目で解るみごとな赤い武具に身を包み、美しい顔達からは似つかわしくない鋭い視線をこちらに向けていた
伯爵は皆を止めフーっと息をひとつ吐くと前に進み出た




