JD-090.「泡だらけの天使」
何度も書き直して、頑張ったのがお風呂シーンという謎。通報ボタンは一番下です!
(失敗したなぁ……落ち込む)
湯船のフチにうつ伏せでぼーっとしていると、疲れだとか色々がお湯に溶けていくような気がする。
視線の先では、4人の天使が泡だらけ。いうまでもなくジルちゃんやラピスたちだ。
いつだったか買い込んだ石鹸を使い、互いに洗いあっているために髪の毛にまで泡が飛んでいる。
きゃぴきゃぴとした声が耳に届き、だんだんと力が抜けていくのがわかる。
それでも、心が晴れ渡るというわけにはいかなかった。
(跡は残らなかったけど、危ないところだった)
一人、思いをはせるのは火山での戦い。
溶岩トカゲを倒しきり、ジルちゃんの元へと駆け寄った俺はその痛々しい状態の両手ごとジルちゃんを抱きしめ、自身への反省と彼女たちが無事だったことへの安堵に格好悪く泣いてしまうことになった。
ジルちゃんはそんな俺を責めるどころか、どこか痛いなら手当てしよう?等という始末。
痛いのは、泣きたいのはジルちゃんたちのはずなのに、だ。
しかし、そんな俺の言葉にジルちゃんは首を振り、貴石を回収にいっていたラピスたちもまた、同じように首を振っていた。
彼女たち曰く「俺のために産まれてきたのだからすべては俺のために」だそうだ。
正直、衝撃的であった。これまでにも似たような言葉は口にしていたけど、そこまでとは思わなかったのだ。
だけど、考えてみればもっともだった。実際、俺が女神様の勧誘で来なければ彼女たちはずっと石のままだったのだ。
それが、こうして人型となって語り、触れ合い、そして仲良く暮らせる。
それだけで十分幸せなのだということだ。重い、人の気持ちを受け止めるというのはこんなにも重いのか。
『その重さが心地よくなるぐらいがちょうどいいだろう。前を向くのだ』
そんなマリルの言葉が、今は深く染み入ってくる気がした。
見た目は可愛いアザラシだけど、彼は間違いなく俺より長く生きている。
人生経験豊富な説得力のある話をしてくれるのだ。
貴石解放後ということでマナも枯渇状態の4人。そんな状態でそのまま戻るのも危ないということでマナ液による簡易な補充を済ませ、俺達は街に戻っていった。
そうしてマリルと別れ、疲れた体を引きずるようにして宿に戻りまずはジルちゃんの治療に入った。
手に入れた貴石、ガーネットはまだ部屋に置いたままだ。
幸いにもしっかりとマナ液を塗りこむと火傷のような跡はすぐに消えていったが、彼女が実際に怪我を負ったということと、その光景は俺の頭から消えることはない。
気が付けば湯船に一人で浸かり、ジルちゃんたちは気を使ってか俺をそっとしておいてくれ、その間に互いに洗いっことなったわけだ。
「ご主人様」
「どうしたんだい?」
ぺたぺたと歩く音が聞こえたかと思うと、ジルちゃんが泡だらけのまま俺の前まで歩いてきていた。
しゃがまずにしゃべる物だから、俺が見上げる形となり慌てて顔を伏せる。
そりゃ、目の前に下半身が来るんだから驚くよね。
俺のその行動はジルちゃんにはお気に召さなかったらしい。
というのも、頭上からは「むー」という声なのか呻きなのかわからないものが聞こえたからだ。
顔に影が差したかと思うと、俺が顔を上げるより早く視界は誰かの裸でいっぱいになった。
誰のかなんていうまでもなく、ジルちゃんだ。
「むー……」
ジルちゃんの膝と膝の間に俺の顔が挟まるんじゃないかと思う距離で、不満そうにその小さな手で俺の顔を挟み込んだ。
ぷにぷにとした小さな手による圧迫はどちらかと言えば心地よいほどだけど、問題はジルちゃん自身が影になってるとはいえ、色々真正面に見えている状態のほうだった。
思ったより力強く挟まれているために視線をそらそうと思ったら力を入れるしかないけど、そうしたらまた不機嫌になりそうな気がした。
上を向けばほっそりした首元が、視線を降ろせばなだらかな胸元からお腹、さらにその下までもが視界に入ってしまう状態。
光の当たっている白い肌と影になった部分と泡とが何とも言えないコントラストを描き出している。
幸いにも泡がお約束のように隠しているけど、その分想像を掻き立てるのはなんというか、男ってと思う瞬間だった。
「ご主人様、めっ!」
「ジルちゃん?」
俺の頬をもむようにぐにぐにとした後、手を離したジルちゃんに何やら怒られてしまった。
しゃがみこんだままだけど、ぷんぷんとした様子で俺の頭をぺちぺちと叩いてくる。
その度にささやかな胸元や泡が震え、俺の視線をとらえて離さない。
困惑のまま彼女を見つめていると、ジルちゃんの後ろからラピスたちがやってきた。
ちなみに彼女たちも泡だらけのままである。
「とーるー。わかんないのー?」
「トール様はこういうところがにぶにぶなのです」
「マスターったら……もう」
2人がジルちゃんの左右から、ラピスはジルちゃんの後ろから女の子らしい内股かつ中腰の状態で覗き込んできていた。
3人ともちょうど首元からお腹の周りが視界に入るような絶妙な角度で、袋とじの中のグラビア撮影であるかのような光景が広がっていた。
ジルちゃんのように泡が肝心なところを覆い隠しているけど、実際に撮影があったら間違いなく問題になるだろう。
都合4人の少女に迫られていることになり、俺は別の意味で口ごもった。
「ジルはちゃんとご主人様を守れた? いけないことだったの?」
「どっちかはっきりしてほしいんですのよ、ジルちゃんは」
「あ……」
少し悲しそうなジルちゃんのつぶやきとラピスの囁くような声にようやく俺はそのことにたどり着いた。
そうだ。ジルちゃんが怪我を負ってしまったことに泣きはしても、その行動に対しては何も言ってなかったのだ。
じっとジルちゃんを見つめ返し、心に浮かぶ言葉を口にした。
「ジルちゃん、ありがとう。でも心配したよ。次は一緒に頑張ろう」
「うんっ。みんな一緒、だよっ」
笑顔のジルちゃんを眺めているとのぼせたのか、それとも感情の高ぶりにか頭が少しくらくらして来た。
ジルちゃんに微笑み返しながら湯船から立ち上がると視線を感じた。
4人が4人とも、だ。その視線の先には……おおっと。
慌てて一人出ていこうとした俺の腕がつかまれた。ついでに足も。
犯人は当然、裸な状態の少女4人。
「マスター。マスターには選択肢が2つありますわ」
4人を代表してか、ラピスが何かを宣告するように静かにつぶやいた。
それはそれとして、隠したいのだけど隠せない。自然とラピス以外の3人の視線が集まっている。
「2つ……?」
「ええ……2つです」
喋っている間にも右腕はラピス、左腕はジルちゃんにつかまれ、足はフローラとニーナがつかんだままだ。
一体何を言われるのかとラピスを見ると……流し目を送られた。
「ジルちゃんだけ先にか、みんな一度にかです」
(……え?)
正直、何の事だろうと思った。主語が全くなかったからだ。
でも4人に関係があるということは4人に何かするということで……ま、まさか。
1つ思い当たったことに、俺の常識の部分が悲鳴を上げる。
今さら何を言ってるんだと思うかもしれないが、大事な事だ。
「ご主人様、ジルね。貴石ステージをしっかり上げて強くなりたいの!」
だいぶ泡が落ちてきてしまい、きわどさが増したジルちゃんが力いっぱい叫ぶ。
勢いよく動く物だからますます泡が落ちて危険な姿になっていくことに気が付いているのだろうか?
掴まれたままの腕から伝わる体温もいつもより高い気がする。
現状、上限になっている様子の貴石ステージを再び上がるようにする方法はただ1つ。
女神様が言うからには他には方法はない。
その方法は……彼女たちと結ばれること。
「だいじょーぶ。なんとかなるよ!」
「そうなのです。試してみればわかるのです」
次々と彼女たちからそれはどうなんだと思う発言が飛び出し……俺は……決断をした。
とおるは のーたっちのやくそくを おおきくやぶってしまった!
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リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは
R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。
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