JD-054.「子供は風の子」
「ボクはフローラ! 今日からよろしくっ、とーる!」
一見すると少年のようにも見えるボーイッシュな姿。
ボクっ子だからさらにドン。青みがかった緑色の髪はショートで、その髪型と若干の胸のふくらみがかろうじて中性から少女に傾けている、といったところ。
背丈はジルちゃんと同じぐらいで幼女状態。無論、可愛い少女なのは間違いないんだけどね。
「ああ、よろしく」
ストームマンタの討伐の次の日、朝起きてトルマリンから呼び出すべく口づけをして……今に至る。
ちょっと舌足らずで、なんだろう、天然の気配を感じる。
「ほらフローラ、服がめくれてますわよ」
「それでお外に出ちゃ、ダメ」
今もまた、2人に言われるように、自分の服装を余り気にしていない。
召喚されたばかりだというのに元気に飛び跳ねたフローラはパンツに服の1部が挟み込まれてパンチラというかパンモロ状態だった。
「これで4人。トール様を四方から守るのことが可能なのです。全部で5人だから陣形が組めるのです!」
「ニーナの言うように戦闘訓練もしたほうがよさそうだね……」
2人ないし3人だったころと比べて、同じ場所で動くときには注意しないと互いに避ける先がぶつかる、なんてことも起きてしまいそうだ。
ちゃんと誰が何が出来て、どう動けるのか。把握する必要がある。
「じゃあシオニー」
「……しょうがないな」
安全と実入りを考えるとシオニーは優秀だ。
いくらでも湧いてくるし、町中お祭りのように騒いでいたから需要はまた復活しているからだろうからだ。
「とーる、まずは見て!」
「ん? あっ、そっか」
本人に言われたように、まずはフローラの能力を確認しておかないといけないな。
じゃあ準備して、と言ったところ、普通に全部脱ぎ始めるフローラ。
先に服じゃなくパンツをするっと脱ぐ当たりこだわりが……って。
「めくり上げるだけでいいから」
「え? そーなの? なーんだ」
ベッドに腰掛、片膝を上げてするっとパンツを脱いでいたせいで、ちょっと顔の向きを変えるだけで奥が見えてしまいそうだ。
知らずにやっていると思うと……フローラ、この先が怖い子だ。
何も知らない子に色々と教え込むような背徳感があるのはきっと気のせいだ。
はやくはやくーとせかされつつ、3人同様にすべすべしたお腹に目をやる。
そこに浮かぶ緑の魔法陣。続いて現れたプレートは……。
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守護名:フローラ
メイン貴石:トルマリン
サブ貴石:無し
貴石ステージ:1
マナ:十分
マナプール:
○習得貴石術
風属性
飛翔
○習得スキル
風色の祝福
共鳴飛翔
貴石解放(受)※現在使用不可
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貴石はトルマリンだけだけど、名前からするとフローライトかその辺が相性がいいのかな?
祝福の中身が気になるけど、一番のポイントは飛翔だ。文字通り飛べるんだと思う。
「フローラ、飛翔はどのぐらい飛べるの?」
「んー……まだわかんない! ボクだけなら2時間ぐらいかな?」
ゲームで空を飛ぶ移動手段を手に入れた時の様にはいかないようだ。
ま、そのほうがいいけどね。よくあることだけど、移動手段が増えると世界は狭くなる。
「きっと貴石ステージが上がればその時間も増えますわ。さ、まいりましょう」
「ご飯ゲットだよ」
そのまま騒がしい4人を引き連れて階下へ。
宿の受付の人はこんな時でも表情が変わらない。
いや、ピクンと眉毛があがったぞ。
「すいません、1人増えました」
「払ってくれるなら自由だ。好きにしていい……敢えて聞くが、年上は趣味じゃないのか?」
そういう訳じゃないんですけどねとごまかしつつ外へ。
巨大な魔物による襲撃があったというのに街は騒がしい。
いや、無事になんとかできたからこそ、なのかな。
「みんなで、守った街」
「トール様も頑張ったのです。だから胸を張っていいと思うのです」
立ち止まった俺の左右をジルちゃんとニーナがつかみ、微笑む。
その温かさと言葉にほんわかとした俺は頷きつつ、たまに目に入る酔いつぶれた人を視界に収めながら通りを行く。
大分昨日は騒いだらしいな……俺達はぐっすりだったけど。
「わわっ、すごいねー。人間って面白い!」
「フローラはみんなみたいに俺から色々持って行ってないのかい?」
何でもないような街の光景が珍しいのか、フローラは目をキラキラさせて騒がしいままだ。
石畳1つでも声を上げるのだから相当だ。
「んー? 見たような聞いたような、でも忘れちゃった!」
どうやらそういう子らしい。
若干の呆れを覚えつつも、ふと考えてしまう。
こんなジルちゃんとは違う意味で何も知らないような子が石英投入とかの時にはあんな声と姿に……。
よくよく考えなくても今の俺の想像だけでアウトである。
一瞬、ベッドで4人を半裸で侍らす俺が浮かび、全くあり得ないわけじゃなさそうな状況に半ば驚いたりもするのだった。
時々負けてるけど、俺の理性よ……頑張ってくれ。望み薄なそんな願いを心に秘めて、ギルドの建物へ。
中は騒がしい冒険者と疲労によるどんよりとした冒険者、両方にわかれていた。
「おはようございます」
「あ、トールさん。早いですね? 昨日の今日なのに」
事情を聴くべくカウンターに行くと、昨日報酬について話していたお兄さんがいた。
ちらりと俺は疲れた様子の冒険者たちに視線をやると、お兄さんは全てを悟ったようにうなずく。
さすが受付ともなれば色々と読む力に長けているのだろう。
「あの人たちはストームマンタの解体と運搬の依頼を受けた人ですよ。
放っておくと魔物に食べられちゃいますからね。今も絶賛解体中です」
あれこれ使える上にあの巨体だ。さぞ解体し甲斐があることだろう。
なんでも駆け出しや無理ができない冒険者には割の良い仕事になるとのこと。
確かに、外で薬草を集めたりするよりは逆によさそうだよね。
「ニッパ、じゃなかった。シオニーの買取は今日もやってますか?」
「え? ええ。だいぶ消費したでしょうしね。他の街に売るためにもあればあったほうがいいですね」
どうやらいい感じに需要が発生しているようだ。
心なしか、後ろで待機しているみんなの顔も輝いている気がする。
早速行ってくることを伝え、なじみとなった磯というか海辺へ。
今日もまた、変わらぬ光景で佇むシオニー達。
こいつら、何を食べて何のためにここにいるんだろうな?
お嫁さん探しと産卵のためかな?
「よーし、ボクの出番だ!」
一声叫んだと思うと、フローラは飛び上がって上空へ。
大体10メートルぐらいかな?
「フローラ、見えてる!」
「え? だいじょーぶだいじょーぶ!」
ジルちゃんたちと同じ服のまま飛び上がれば、当たり前のようにふわりと下側がめくれ上がり、下半身が丸見えだ。
そのままフローラは両手の中にマナを集め、緑色の手斧を作り出したかと思うと降りてくる勢いのまま、シオニーにたたきつけた。
「これは……マスター、しっかり手綱を握らないといけませんわよ」
「突撃仲間?」
若干引きつった笑みのラピスに対し、ジルちゃんは近接仲間が増えて嬉しそう。
一方ニーナは……。
「抱えてもらって落下すれば勢いばっちりなのです」
どうやら連携を独自に考えているようだ。
仲良くなれそうで何よりだ……と思う方が気が楽かな?
飛び回るフローラを見て、そんなことを思うのだった。
あっち方面でも無知担当1名はいりまーす(待って
ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。
増えると執筆意欲に倍プッシュ、です。
リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは
R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。
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