JD-049.「潮騒の街へ」
謎の野菜によるダメージを受けたり、石英を集めるべく討伐をする日々。
ジルちゃんが貴石ステージ5、ラピスも4、ニーナも3となる。
戦力的には向上し、カラードと呼ばれる色付きの石英もジルちゃんへの投入に成功した。
結構無理やりらしく、正直声を抑えてもらわないと衛兵さんが踏み込んできそうな感じだったので二回目はやりたくないなと思う。
本人は顔を赤くして、またやりたいなとつぶやいても俺が危ない。
2人に手足を抑えてもらって、俺自身がジルちゃんの口元を抑えておかないと声が漏れてしまうぐらいだったのだから……。
中身が悲鳴ではなく、嬌声に近いのが救い……な訳はない。ともあれ、今のところ体調不良も無いので一通り成功しているはずなのだが……。
「ねえ、そろそろ他の街に行かないと」
「まぁまぁ、まだいいじゃありませんか?」
俺をなだめるようにラピスがもたれかかってくるけど、今日こそは無理である。
そう言いながら、2か月ほど滞在していたのは内緒だ。女の子に男は弱いんだよ、基本的に。わかるだろう?
いい加減他の姉妹も探しに行かないとね。
「駄目だよ。ほら、他の子にもハチミツ食べさせてあげないとね」
「ご主人様、優しい」
ラピスは本人を攻め込んでもなかなか難しい。すました顔で、いつもうまい具合に躱されてしまう。だからこうして……横から攻めるのだ。
「くっ、成長しましたわね、マスター」
「ラピスのおかげさ」
ちなみにニーナはどちらでもいいらしい。というよりも、最近ガードしないといけないような戦いが少ないので速く強敵と、とつぶやいている。意外と武闘派なんだよね、この子。
その後も少しばかりもめたけど、新しい街への旅立ちが決まる。
向かう先は、実は決まっている。一番近い海辺の街、ルシースだ。
なんでも外洋に出る冒険船団もあるそうで、この国一番の賑わいの港を抱えているというから楽しみだ。
結構距離があるらしく、街へと向かう馬車というか商隊はかなり大規模なものしかないということで俺達はその集団の出発を待った。
どうせ行くなら同じようにいった方が手間が無いかなと思ったのだ。
護衛に参加するにはまだまだ見た目も若いので、勝手に近くを進むという形をとる。
他にも同じような人たちがいるようなので目立つことはない。いや、目立つことは目立つか。
結局、女の子3人に男が俺1人だからね。
運よく、ちょっかいを出されることもなく次の街へと出発できた。
俺はともかく、ジルちゃんたちも歩きでついてきてるのが意外だったのか、4人が固まって歩いているところを時々見られている気がする。
地球じゃ考えられなかったけど、今の俺なら一晩中歩いていても多分大丈夫だと思う。
それはマナが体力となっているジルちゃんたちも一緒だ。
「うみー、おさかなー、およぐー」
「うう、自分には辛い場所なのかもです」
何やら抑揚のない歌を歌うジルちゃんは楽しそうだけど、逆にニーナはしっかり泳げないらしく、気が重そうだ。
ラピスはそんな2人を、俺の横に立ちながら微笑みつつ見つめている。
「ラピスは海は大丈夫なの?」
「ええ、ほら、マーメイドといえば青でしょう? 私も例にもれず、海でも川でも大丈夫ですわ」
言われてみればそうだった。だからこそ、俺もこの世界に来る前に設定していた内容は水属性だったし、その通りだもんね。
そんな話をしながら4日。途中、なぜか商人の護衛から、大丈夫か?等と聞かれる場面はあったけど、貴石術使いですから、と言ってみたら頷いて帰っていった。万能だな、貴石術。
確かに、ジルちゃんの使える術の中にも旅に使えそうなものがあるんだよね。必要なかったのは内緒だけど。
そしてある朝、俺の鼻に独特の匂いが届く。懐かしい匂い、海だ。
小高い丘の上に立つと、地平線は代わりに水平線となっていた。ここからでも船らしきものが浮いているのがわかる。
新しい場所にドキドキしながら、俺達は馬車を追い抜きそうな勢いで歩いていく。ぎょっとした表情で見られた気もしたけど、気にしない。
女の子3人は早くお風呂か、お湯で体を拭きたいなーとこぼしているし、俺もそれには賛成だ。
いくら服は綺麗にできて、水もラピスが出せるから拭けると言ってもそれとこれとは別物だ。
ゆっくり休みたいなというのは男女とも、同じなのだ。
進む道もどんどん大きな物となり、馬車が行き交うために草も生えにくいのだろう。
土が見えている上に、あちこち穴だらけだ。
「みんな、足元に気を付けてね」
「はわわっ」
言うが早いか、目の前でニーナが躓き、俺に飛びかかるようにして抱き付いてくる。
とっさに受け止められたが、危なかった。謝ってくるニーナには背中を軽く叩くことで応えて俺は前を向く。
目に入るのは、船、そして無数の人、建物。活気に満ちた港町がそこにはあった。
まだ門をくぐる前だというのに、ここまで活気が伝わってくる。ここなら、色々と話が聞けそうだ。
門番に入場料(初回のみで札を渡された)を支払い、ひとまずギルドへと向かう。
ここも荒くれものの集まりのイメージは半分当たり、残りはプロの気配を感じる人々だった。
恐らく、地元の冒険者と流れ、といったところだろう。たまたま1つの受付がすいていたのでそこに向かうと、白髪の混じったおじさんが受付をしていた。横に杖があるから、足を悪くしてるのかもしれない。
「ん、来たばかりか」
「そうです。ひとまず依頼の確認と宿を探そうと思って」
地元の事は地元に聞く、これが一番である。特に俺の場合、壁の薄い宿では後々困る。
ちらりと、俺の後ろにいる3人を見たおじさんは何かに気が付いたように目を細める。嫌な予感がするが、話を続けるしかない。
「それで、宿の方ですが」
「ふむ。口が堅い宿ならこの辺だな。一泊当たりは多少割高だが、その分部屋もしっかりしている。宿泊者の検索は無しだぞ?」
そうして紹介された宿は簡易的な町の地図でもそうとわかる酒場とかの集まる区画のすぐ隣。
明らかにそっち系であることに顔を引きつらせつつも、お礼を言う。目的としてはある意味、それであってるのだからね。
石英投入などの時の声が問題であって、決して何かあった時にみんなの見てる前でとならないように、ではない。
無いのだよ。
ラピスだってそういう場所が無ければ我慢する……はず!って、我慢すると辛いのは俺の方じゃないのかな……。
頑張れよ、とからかいのこもった挨拶を受けつつ、4人で建物を出て宿へと向かう。
途中、やはりというかわかり切っていたけど既に営業を始めている酒場だらけの場所を通り過ぎるので視線がやってくる。子供が通るにはちょっと不向きだからね。かといって他の道は路地だからよろしくない。
「うーん、宿の場所失敗したかなあ?」
「夜はあまり出歩くべきではなさそうですわね」
ラピスの言うように、夜は危険がありそうだ。襲われるというより、酔っ払いは何をするかわからないからね。 隙があると色々と俺の理性を攻撃してくるラピスだけど、こういうところはしっかりしているので俺は安心している。
宿の受付は不愛想ながらも逆に余分なことを言わないという点では評価できると思う。
そのまま部屋に向かい、 これまでよりも丈夫そうな家具の造りになんとなく本来の利用者の方向性を感じ、一人ため息をつくのだった。
ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。
増えると執筆意欲に倍プッシュ、です。
リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは
R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。
誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします




