JD-048.「白いいたずら」
帰りが遅くなりました。
ヴァイツの街で受けた新たな依頼、それは収穫時に問題が良く起きるという特殊な野菜の収穫のお手伝い、そしてそれを狙う奴らからの護衛だ。
護衛の方はもしやってきたら……らしいけどね。対象となるその名前は、ゴンダー。
どこかの眷属の様な名前であるが、事前の挿絵からダイコンっぽいとわかっている。わかっているのだけど……。
「きゃああ!」
「うう、くすぐったい」
「はわわわ!」
さっそくとばかりに収穫の手伝いに向かった俺達を待っていたのは……。
俺にとってはうらやまs……じゃない、けしからん光景だった。別の畑では村の人達が必死になって捕まえているというが、なるほど、これは厄介だ。
「どこかのエロガキか!?」
俺がそう叫んでしまうのも仕方がないと思う。確かにゴンダーはただの野菜ではなかった。
一番近いのは、あの太めの奴だろうか。ちなみに幼児のような手足付き。うん、とりあずキモイね。
噛みつくとか、怪我をするとかそういうことは無かった。その点ではありがたいのだけど、とにかく足が速い。そして、いたずらが多いのだ。
男が行けば髪の毛を抜こうと引っ張るし、ズボンを下げる。あるいは靴を脱がしてこけさせる。
伸びた葉っぱ部分で目つぶしのように顔を叩く。その間に逃げるのだ。
しかも、畑の中にしか逃げないからものすごい、苛つく。まるで追いつくのを待っているかのように、近づくとまた駆け出すのである。
反射で襲い掛かってくるボーゴと比べると、ゴンダーはもう魔物と言っていいんじゃなかろうか?
女性に対してはどうかというと、なんというかその……セクハラである。スカートめくりのように服を舞い上げるのはお手の物。
葉っぱでお尻や胸をはたくように走り回るのも得意だ。時には隙間から頭?をつっこんでもぞもぞしたかと思うと反対側から抜けていく。
3人の首元から無理やり抜ける時なんか、確実に胸の間を通ってるだろ!?
(ああっ! 俺だって揉んでないのに! 野菜だからノーカン、ノーカンだ!)
っと……落ち着け、俺。これでいわゆる頭がないし、口もない、目も無いんだ。謎すぎる生態である。
「こんの! よし1本!」
とはいえ、お仕事はお仕事。なんとか1本確保し、紐で縛りあげて続きに取り掛かる。
時々、痛いなあと思う程度に頭にぶつかってくるから余計に厄介だ。
「トール様ー! 今のうちになのです!」
「よし、そのまま! とう! あっ」
ニーナが自分の服の中に入って来たゴンダーを逃がさないように服の裾を握りしめて閉じ込めていた。
どこかのホラー映画の出産シーンの様ですが今はそうもいっていられない。
いざ!とつかもうと手を伸ばしたところで無理やり首元からゴンダーは逃げていき……。
むにゅっと、両手に残る感触。経験豊富なわけじゃないけど、明らかにこれは……。
「ご、ごめん」
「ふぇっ!? ト、トール様にだったら……その」
両手でもむ形になっていたニーナの胸元から慌てて手を離す俺。
かばうように両手を胸元にやり、うつむき気味にニーナは赤くなっている。褐色少女の赤らんだ顔、素敵だよね!
「マスター! そっち行きましたわ!」
「いってええ!?」
ラピスの助言もむなしく、棒立ちになっていた俺の後頭部にゴンダーの1本がぶつかる。
恐らく、普通のダイコンで殴られたのと同じぐらいの威力なのだけど、怪我が無いわりに、痛い。
女神様のくれた肉体は丈夫なはずなのに、なんでだろうな。
まるでいたずらを成功させた幼稚園児のようにそのゴンダーは畑の別方向へと駆けだした。
苛つくけど、砕いたりしたら駄目なのでなんとか捕まえるか、ぎりぎりで切るぐらいしかない。
「仕方ない……切る!」
器用にゴンダーの1本を抱えたままのジルちゃんは見たことの無いような真剣な顔で片手に透明な短剣を生み出して色の変わる部分を切り取った。
途端、大人しくなるゴンダー。脳味噌とかがあるわけじゃないけど、その辺が頭扱いなんだろうか。
「まずは数を減らしますわ」
「だったら……えええいなのです!」
いい加減3人も疲れてきたのか、ついに強攻策をとることにした。
ニーナが薄いながらも土壁を作り出し、ラピスがゴンダーの走る畑を一時的にだが凍らせる。
「よしっ!」
その隙に俺とジルちゃんはそれぞれの刃物でゴンダーの手足を切り取り、あるいは先端部分を切り取ってしまう。
本当は一番おいしいのは何も痛んでない状態らしいのでその状態の物はボーナスになるらしいけど、失敗するわけにもいかない。
大体のゴンダーは最終的にこうして捕まえることになってしまった。
(ゴンダー……恐ろしい相手だった……)
主に俺の堪忍袋の緒的に、ね。ふと見ると、ジルちゃんが動かなくなったゴンダーの1本を手に、何か考え込んでいた。
「ジルちゃん、どうしたの?」
「ご主人様、さっき……ニーナのお胸、触ってた」
おおう、見られていた。そりゃあ、同じ畑にいるんだから見てしまうよね。
何か言われるかと思いきや、ジルちゃんは手にしていたゴンダーを徐に服の下から自分の中に抱え込んだ。
(……え?)
そのまま、俺の方に体を向けると、何やらくねくねしだす。
「わー、ゴンダーがあばれるー、つかまえてー」
まるでお遊戯会のダンスのようであり、これはこれで可愛らしいけど、ずっと見てるわけにもいかないだろう。
とりあえず、お望みのままにゴンダーを捕まえるべく手を伸ばす。
「!?」
「わっ、ぐうぜん」
ところが、なぜかジルちゃんは俺の手がゴンダーに触る直前、すとんと手を離して足元にゴンダーを落としてしまう。
まさかそうなると思っていなかった俺の手は止まらず、ジルちゃんの胸元へ。
ふにょん。
そんな擬音が浮かんだ気がした。ジルちゃんも胸はないわけじゃない。
そんな感触が服越しに伝わり……ええ、小振りで柔らかかったです。
「ご主人様、お胸、好き?」
「ぐはぁ!?」
いかん、このままでは色々といけない。ジルちゃんの中での俺への評価が変わってしまう。
「もう、だったらいつでも言ってくださればいいのに」
横合いからのラピスの声は妙に艶やかな物だった。それはこの前の夜にも聞いたような、俺へのお誘いの声。
見てはいけない。
そうわかっていてもそちらを向かざるを得ない。当然、そこにはゴンダーの1本をわざとらしく服の中に抱えているラピス。
「取らないという選択肢は?」
「ありませんわ♪」
(ですよねー。とりあえずぎゅむっとやることは回避せねば)
中があきらめつつ、ラピスの胸の中のゴンダーに手を伸ばし……。
「ちょ!?」
「あら、ゴンダーが元気すぎて勢い余ってしまいましたわ!」
ゆっくりした俺の腕に焦れたのか、ラピスは飛びつくようにして俺の腕に体を押し付けてくる。
間にゴンダーをはさみ、強調されたラピスの胸が俺の手の中で形を変える。
それはただ腕の中に収めるよりも斬新な感覚で……。
「違った。ご主人様は、ちっさいお胸大好き人間」
ジルちゃんの無慈悲な宣告!
とおるは ちめいてき だめーじを うけた!
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リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは
R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。
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