JD-030「宝石娘は若くありませんの」
どんな空間かの具体的な想像はお任せします(えー
「もう……いつでも大丈夫ですとこの前も言いましたのに……」
「そ、そうは言ってもだな……」
2人を起こしてしまうから、とラピスに引きずられていったのは隣にある扉の閉まる湯あみ場の部屋。
石材で出来たそこには排水溝と、すのこのように木でつくられた床板、そして座るための椅子に寝転がれそうなベッドの土台の様なものがある。
その中の土台の方に2人して座る。 なんとなく、タオルなんかを敷くんじゃないかなと思うような物だ。
左側から抱き付かれた状態で、扉にすぐに逃げられない姿勢。
ひんやりする部屋の中で、ラピスの薄着である寝間着越しに伝わる体温が妙に温かく感じる。
壁際にある灯りが照らし出す彼女は体が透けているような、透けていないような。
そんな考えは太ももを滑るラピスの指の感触によって吹き飛んでしまう。
「マスターは私たちが嫌いですの?」
「そんなことはないよ。でも、色々するには若すぎるんじゃないかって」
ラピスの問いかけに、観念して俺は正直に答えた。
そう、ラピスだってジルちゃんたちよりは大きいけど、それでも上に見ても中学生なりたて程度だ。
そんな彼女たちに手を出せというのは問題がありすぎる。
既にあんな風に石英を入れたりしてる時点で手遅れという意見は認めない、認めないぞ!
「ふふっ、マスター、お忘れですか?」
「え? 何を……?」
俺が正直に悩んでる部分を答えると、ラピスはさらに足を絡ませるようにしてきながら囁いてきた。
(忘れてる? 俺が?)
一体何をだろうと悩んでいると、ラピスが人を安心させるかのような顔になって口を開く。
「私たちの元は宝石たちですけど、みーんな、何百、何千年も前に出来始めた石ですのよ?
ジルちゃんは……それでも20年ぐらいでしょうか。そんな石の化身なのですもの……。
見た目はちょっと小さいかもしれませんけど、みんなマスターより年上ですわ?」
……え? それってありなのだろうか?
「まあ、確かに。それが駄目なら産まれた時に大人でも生まれたてだから0歳です、か」
「その通りですの。だ・か・ら」
困惑のまま、考えを口にするとラピスはすぐさまそれを肯定し、意味ありげなつぶやきと共に俺を押し倒してきた。
大して力が入っていないはずなのに、ごろんと転がってしまう俺。
「ちょ、ラピス!?」
「貴石解放はマナがもったいないですもの。今日はこれで……」
あおむけのようになってしまった俺の腰の上に跨るラピス。
背中がやや冷たい分、逆にラピスのぬくもりを強く感じてしまう。
柔らかく、女の子ということを感じてしまう密着具合。正直、こんな姿勢になって色々と我慢できるわけがない。
きっと……ばればれだ。
「マスター……本当にお嫌だったらここで……」
俺にもたれかかるようにしてラピスが顔を近づけてくる。その顔は羞恥にか、赤い。
──今日はこのままご奉仕いたしますわ。
そう……ラピスは耳元で囁く。こんな顔でそれは卑怯だ、とは言葉にはしない。
そうしてしまったらだめだと思ったからだ。彼女だって何かしら覚悟を決めて今、ここにいる。
きっと、いつかこうなるとはわかっていた。
だったらと返事の代わりに頬を撫でてあげる。
「マスターの聖剣の扱いはお任せくださいませ」
熱のこもった吐息の様なつぶやきの後、その……なんだ。
とおるは ごほうし されてしまった!
翌朝、というか早朝か。本来なら眠くて仕方がないはずの時間に俺は一人、湯あみ側の部屋から窓の外を眺めていた。
ラピスは少しでも寝ますねと言ってベッドの中。俺は一人、起きている。
(スキルのリジェネーション・ソウルがそっちの持続性や体力にまで影響あるとか聞いてないんだけど、女神様)
煙草は吸わないし、暇をつぶせるような何かも無いのでぼんやりと外を見るだけ。
結局なんというべきか、ラピスの貴石術で洗い流してもらわないとお互いの汗やらなんやらでひどいことになってしまったのだ。
あ、まあご奉仕されただけなんだけどね?
「っと、今日はニーナを連れて一度能力の確認をするかな」
考えるほど思い出してしまうし、沼にはまりそうな気がしたので考えを切り替える。
確認すべきは祝福の内容と、貴石術の強の意味。障壁化はなんとなくわかる。
ジルちゃんたちが武器に出来るように、盾や壁のように土の力を使うのだろう。
小さい子に盾役をさせるのもちょっと気になるところだけど。
いつの間にか街の空が白さを増していく。どこからか音が聞こえ、声が聞こえる。
朝が、始まるのだ。死んだように沈黙していた街に命の息吹が蘇る。
(え、賢者タイム過ぎだろ? しょうがない、しょうがないんだ!)
俺は心のどこかのつっこみに同じく心でつっこみ返して考え込むのはこの辺にしておこうと思う。
先に1人で下に降りて朝食を受け取ってこよう。
この宿は部屋でも1階の広間でも食事がとれるんだよね……今気が付いた。
この宿、あれだ……逢引とか連れ込み兼用なんだ。
「だからかぁ……道理で宿の人がニヤニヤしてたわけだ……俺、2人連れ込んでるようなもんだ……」
出る時にニーナの説明をしたほうがいいのか?と余分なことを考えながら下に降り、食事を受け取る。
1人増えた、と告げると、おばちゃんにあんたも好きだねえという顔をされ、若いのはそうじゃなくっちゃ!と謎の励ましをもらった。
そういうもの……らしい。
部屋に戻ると起きてきたジルちゃん、ニーナ、最後にラピス。
それぞれに食事を始める中、ジルちゃんが俺を見て、次にラピスを見て、首を傾げる。
「どうしたの、ジルちゃん」
なんとなく、嫌な予感がしながらも聞かないわけにはいかない。
「ご主人様は疲れてるのにどこかすっきりしてる。
ラピスは元気そうなのにでも疲れてる? ふしぎ」
的確過ぎる表現に、俺の顔が引きつりそうになる。
だけど、ラピスがニコニコとごまかしているので俺もなんとか乗り越えた。
「ニーナ、改めてよろしくね」
「はいなのです。みんなをお守りするのです!」
一晩寝て元気になったらしいニーナは短めのツインテールと背丈の割に大きい胸を元気に揺らして答える。
思わず目で追ってしまうのは許してほしい。
「トール様?」
「な、なんでもないよ。今日は4人で掘りに行こうか。せっかく一週間分買ったんだしね」
きょとんとしたニーナの問いかけにごまかしにかかる俺だったけど、ジルちゃんはともかくラピスにはわかってしまったようで視線で、いいんですよ、と言われた気がした。
何が、良いんだろうね?
非常に気になるところだけど、今確認するのは危険だと感じた。
その後、朝早くではあるけど4人で宿を出て道具を借りに鉱山ギルドへ。
昨日の採掘分がさっそく一部売れたらしく、また出たら持って来いよと声をかけられた。
「運よく出たらそうしますよ」
「初日にあれだけだ。兄ちゃんはついてるんだろうさ」
どこまで本気かはわからないけど、お世辞だとしても嬉しいことだ。
手を振りながらギルドを出て山道を登り、権利を買った場所へと向かっていく。
今日はどのぐらい掘ろうか……あ、そういえば。
「ニーナ、スキルか貴石術で落盤を防ぐとかってある?」
「直接は……無いのです。でもでも、そばにいると崩れにくくなるですよ?」
さすがに全部は都合よくいかない様だったけど、それでも便利な手段があるようだった。
メインアタッカーの俺に補助の2人、そして防御のニーナ。
こうなると後衛のアタッカーが欲しいなと思うのはゲームのやり過ぎだろうか?
俺は穴にたどり着くまでそんなことを考えていた。
やりました!(2日目
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増えると執筆意欲に倍プッシュ、です。
リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは
R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。
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