JD-026「掘るというより収納するお仕事です」
お出かけしてて少し遅れました。
「本当にいいのか? この場所だと助けも期待できんぞ?」
恐らくは親切心からの忠告を口にする、鉱山ギルドの担当者。
自分もきっと掘ってるんだろうなと思わせる体つきだ。
何を言われているかと言えば、鉱山での掘る場所の権利を買い取る競売でのことだ。
人気の集中するのは下層から中層の他の箇所で実績がある付近。
俺は希望者のいない場所、上層の一区画に入札し、競う相手もいなかったのでそのままで決まったのだ。
何人かから疑問の目で見られながらも、文句は出てこなかった。
物を知らない冒険者の戯れ、と思われたんだと思うけどそれはそれで好都合だ。
「ええ、本当に試してみたいなと思ったぐらいで」
「気持ちはわからんでもないが、だったら下層でもいいだろうに。
何もなかったり、怪我で帰ってきてもお金は戻ってこないからな」
自分が狙っていたのに、という考えからではなく、本当に心配してくれてるらしいことがわかるのでかなり心苦しい。
ゴーレムもなんとかなるだろうし、そうでなくても目的がお金儲けではないから……ね。
掘るのも……掘ると言っていいのかな、あれは。
「無理はしませんよ。そういえば、つるはしとかで掘る代わりに貴石術は使ってもいいんですよね?」
「ん? ああ、そういうことか。おお、いいぞ。落盤や他の坑道を潰すようなことをしなければな」
俺の答えに何かに納得したのか、おじさんは自分の持ち場に戻っていった。
その間、ジルちゃんたちはお願いしていた通りにここでの買取価格だとかを調べてもらっていた。
今は展示されている原石を興味深そうに眺めている。
「お待たせ。面白いのはあった?」
「マスター、お疲れ様ですわ。そうですね……マスターのはありませんでしたが、やはり貴石の中でも良いものは高騰してますわね」
「うう、ジルコニア……安かった」
ラピスがあれこれ指折りしながらの報告をするのに対し、ジルちゃんは自分のモチーフが安いことにショックを受けているようだった。
というか……売ってるんだ。
「ジルコニアが自然に産出されてるの?」
鉱山ギルドを出て、宿への道すがら小さい声でラピスに問う。
周囲の喧騒に俺の言葉はすぐに溶けていく。
「自然に、というのは違うようですの。貴石術使いの中には貴石そのものを加工する術があるらしいのですけど、その実験や修行中に出来上がる物にあるようですわ」
「失敗扱いの副産物……しょんぼり」
言いながら、ジルちゃんを慰めるように抱き寄せるラピス。
(貴石を加工……か、面白そうだな)
少女×少女に見惚れつつ、頭ではラピスの調べてくれたごとがぐるぐるとめぐる。
俺もジルちゃんの頭を撫でつつ、宿へ。この宿は1人か2人、そして4人という組み合わせなので4人部屋なんだよね。
なぜか、浴室というか湯あみをする場所は隣の部屋として併設されてるんだけど。
扉がしっかりと閉まり、防音性能も結構ある。なんでだろうなあ……。
ただ、ベッドは結構ふかふかだし、お湯も安くもらえるのが助かる。
まあ、宿泊料金自体は高めだ。半日だけ、とかもあるしね。
宿での時間は明日からのスケジュール、と言ってもどこで掘るかはこれで決まったのであっさりとしたものだ。
依頼を受けていなくとも、ゴーレムの討伐は自由ということもわかった。
出てくるのはほとんどが石英と銅、スズ、そして鉄。なぜか稀に金銀、そして宝石に相当する奴らが出るらしい。
さすが異世界。鉱脈も謎すぎる。もしかしたらでき方も地球のそれとは違うんじゃないだろうか。
「マスター、明日に響きますわよ」
「ああ、ありがとう」
既にジルちゃんは夢の中。可愛らしい寝顔で寝ているけど、俺は窓際で物思いにふけっていた。
そんな俺をラピスが叱るように呼んでくれる。誰かと一緒ということに感謝しながら、ベッドに潜り……。
「ラピスの分があるだろ?」
「たまにはマスターと一緒に寝たいんです。駄目ですの?」
主に俺の理性的な理由で別のベッドになることが多いのだけど、こうして言われてしまえば断るのは難しい。
少女らしい体温を感じながら、眠れるような眠れないような夜が過ぎる。
そして翌朝。
「つるはしに鉱石を入れる袋に、スコップに……こんなもんか」
「お試し、ならそのぐらいがいいかと」
「ジルも、しっかりほるの」
朝早くだけど鉱山ギルドは人がおり、道具の貸し出しも行っていたので遠慮なく借りる。
壊したら弁償、ってやつだね。ジルちゃんはちゃっかりと小ぶりなつるはしを抱えている。
「おお、本当に行くんだな」
「あ、おはようございます」
そんな俺達に声をかけてきたのは食事とかを届けたおじさん。後ろには息子さん2人もいる。
「ついでにゴーレム退治でもするつもりで気軽にやりますよ」
「なるほど。でもまあ、やるからには儲けがあるといいな。
どうやって掘るのか気になるが……人それぞれだな!」
ガハハと豪快に笑うおじさんは良い笑顔だ。
こういう人が幸せになってほしいものだ……そうだ。
「よかったら一緒についてきて手伝ってくれませんか?
俺達、儲けるために掘るんじゃないんで」
「ん? まあ、息子だけでも今の場所は十分だが……。せっかくだ、お前さんがよければ……」
俺達の目的は中にいるんじゃないかと思っているコレクションと他の貴石が万一出たらいいなというぐらいなのだ。
逆に売れる物が出過ぎても捌ききれないんだよね。
息子2人はそろそろ独立させてもいいと思っていたそうで、ちょうどいいと言っていた。
準備はいつでもということでおじさんを連れて山の上へ。
「そうか、貴石術で掘るのか」
「近いですけどね。おじさんみたいに熟練なら、見聞きしたことを不用意に話したりはしないと信用してます」
きっと驚くと思いますけどね、と付け加えて山道をさらに上る。
時間的にまだ掘っている人の少ない山道は空いている。と、そんな道に動く人影。
「おい、あれがゴーレムだ」
「あれが……なるほど、勝手に動いてますね」
視線の先で山道を通せんぼするかのように小さなゴーレムがあちこちに動いている。
動きは遅い、が力は強そうだ。
「ふーん、人間みたいな手足があるんだな。よしっ」
一通り観察し、ぬいぐるみや人形が動いているような物だとわかった俺は聖剣を手に駆け出す。
こちらにゴーレムが気が付いたようだが、遅い。
スパンスパンと剣を振るうごとにゴーレムは切り裂かれ、いつの間にか動けないようになっていく。
「コアは……ここか」
ぷすっと一突き、それでゴーレムは沈黙である。
他の部分はこいつはほとんど岩みたいだ。入手でき石英の大きさはかなり大きい。
現在の聖剣のスキルはラピスの物だから、運が良かったといえる。
「ゴブリン以上、オーク未満というところでしょうか」
「やったね、ご主人様」
駆け寄ってくる2人にコアの石英を見せながら、おじさんが追いついてくるのを待つ。
「ははっ、これだけできるなら確かに上でも大丈夫か。
ちょっと心配してたんだよな、3人とも若いからな」
「ですよね、俺もそう思います。だから何かいいのが出た時には代わりに売ってもらおうかなとか思ってましたよ」
俺がそういうとおじさんは笑い、任せとけ、と言ってくれた。
その後はゴーレムに出会うことはなく、掘る予定の場所へとたどり着く。
「で、どうすんだ? 普通に掘るんじゃないんだろう?」
荷物を下ろした俺達におじさんがさっそくと聞いてくる。
そりゃ、気になるよね。俺は答えの代わりに聖剣を取り出した。
「ん?」
疑問の声には答えず、実験したようにずぶっと差し込む。
「お?」
そしてそのまま四角く切り込みを入れていく。
それが終わったら聖剣は一度置いて……収納袋を手にする。
念じるのは実験通りに1メートル四方の土の収納。
瞬きの間に、土がごそっと仕舞われ、そこには岩だけが残ってごろりと積み重なった。
「……は?」
「さ、良いのが無いか鑑定お願いします」
呆然とするおじさんに、我ながら良い笑顔でそうお願いするのだった。
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