JD-017「オークの親玉は仲間が少なかったようです」
「はっは! ゴブリンも一緒だったって? でかした。良い情報だ」
突然の騒動にも関わらず、おっちゃんの1人は破顔して俺の背中をバンバンと叩く。
全く痛くないあたり、やはり肉体としての防御力も向上しているに違いない。それはそれとして、朗報?
「ゴブリン、いっぱいだった。どうして良い情報?」
「まあ、数は厄介だがな。要はオークだけで揃えられていないってことさ。
その数ならちょっと強い、程度に収まるな。へへっ、運が良いこった」
コテンと首を傾げるジルちゃんの疑問に、隣にいた別の冒険者が笑みを浮かべながら答えてくれた。
なるほど……同じ100だとして、オークで全部そろえた場合と比べればオーク達のリーダーの強化具合が全く違う。
それは本人が一番わかっているはずで、ゴブリンを取り込まないといけないほどオークの数が足りないということだ。
見えた感じだと大体全部で50ぐらい。つっこんで切りまくるというのも最終的にはありだろうけど……。
「私たちは貴石術で援護ですわね。近接はいざという時に、と」
ちらりとラピスを見ると、彼女はにこりと笑って俺の考えを読んだかのように告げてくれた。
そう、恐らくだけどどちらか、あるいは両方を貴石解放したらすぐに終わる。でもそれだとジルちゃんたちの異常性がばれてしまう。
互いを詮索しあうのはNGだろうけど、注目を思った形とは違う物で集めるのは好ましくない。
出来るなら、俺がかなりやれる、という形で注目を集める方が都合がいいのだ。
「ちょうど街道沿いが敵を集めやすい。あいつら、空いてる場所にどんどん来るからな。
わざと1か所、門を緩く見せよう。後は勝手に近づいてくる」
「わかった。ということは最初に攻撃すべき相手は……」
村の大人たちにも手伝ってもらい、俺と先輩冒険者数名は門に、他の面々は門の上から弓矢貴石術で撃つべく、盾となる木の板の陰に隠れて待ち構える。
そして聞こえてくる足音、叫び声。
「くっく、よっぽどあいつらを倒した見てえだな? かなり血が頭に登ってるぜ」
門の隙間から見えるオーク、そしてその奥の巨体はこの距離でもわかるほど怒っている。
親玉は手には金属製の武器を持っているような?
そいつは怒ったまま周囲に武器を何度も振り降ろし、憂さ晴らしをするかのようだ。
その激しさは前にいるゴブリンたちがかわいそうになるほど。
「このまま稼ぎが無くても心配ないぐらいには、ね。だから気楽に戦えるよ」
空いている方の手でお金の仕草をして笑って見せる。それを見ていた冒険者たちは抑えきれないように笑っている。
「そいつはいい。この後も期待してるぜ。 よし、行くぞ!」
「おうっ!」
合図からの動きはかなり上手く行ったと思う。
上に待機しているメンバーがわざと大きな声を上げて弓で攻撃、そちらに意識が向いた先に門をくぐり、前に。
「遅いっ!」
こちらに気が付き、慌てて弓の向きを変えようとするゴブリンに一声叫んで近づき、一閃。
そういう習性なのかはわからないけど、近くに固まっているゴブリンへ向け、手にした聖剣を握ったまま一回転。
軽い手ごたえが残るが、その結果は驚くべきものだ。よく研いだ包丁でトマトを切るかのように繰り広げられる惨劇。
「やるじゃねえか! いったん下がれ!」
「了解!」
横合いからかけられた声に従って後退すれば、そこを埋めるよう降ってくる矢と貴石術。
そう、オーク達はゴブリンを盾に進んできていた。弓を使う個体も一緒に、ね。
そこに俺たちはまずつっこんで撃破、門の上を安全にしてしまったわけだ。
後は同士討ちにならないよう気を付けながら前の相手に向かうだけ。
そんな中、見えてくる巨体。
(あれが……でかいな)
地球での格闘技チャンピオンをそのまま2倍か3倍にしたような肉体。
本当であれば見るだけでも震えてしまうだろうことは間違いない。
だけど、今の俺は違う。大きく息を吐き、そして吸う……覚悟を決めるために。
「おっちゃん、貰うよ!」
「行ってこい!」
事前に先輩冒険者とは報酬の話し合いは終わっている。周囲のオーク達のドロップというか石英とかは頭割り。
ボスに関しては倒した奴の物、だけどやれそうならさっさとやっていい、とのこと。
なんでこっちに譲るようなことを言うのか聞いてみると、おっちゃんたちは実はこの村の出身なのだという。
だから、手伝ってくれるような奴にはこのぐらいは譲るからまたよかったら来てほしい、そんなちょっと不器用な気遣い。
勿論、俺が弱いようならそんなことはしない。彼らから見て、俺は任せられるだけの水準にはいるらしい。
最近の若者は非常識だな、等と笑われたけど。
足元に貴石術による肉体強化を発動させて俺は地面を蹴った。土煙を上げて迫る俺に残ったゴブリンやオークが追いすがろうとするが、援護に届く矢や氷の槍などに邪魔されて届かない。
そして俺は親玉の前にあっさりとたどり着く。
俺の腕よりも金属の棒を構えるオークキング。その顔に浮かぶ笑みは自信に他ならないだろう。
押しつぶすように迫る棒を……敢えて剣の腹で受け止めた。
「これなら……行ける!」
刃で受けるときっとそのままスパッと切れてしまうなと思った俺は真正面からオークキングの攻撃を受け止めることにしたのだ。
衝撃は来たものの、聖剣が折れる様子はなく、俺自身にも大した被害は無い。
相手の顔に驚愕が広がった気がしたのは気のせいではないはずだ。
「おはよう、そしてさようならだ!」
1歩引き、そして足元に力を籠め、全身の力でもって聖剣を槍のように突き出す。
ずぶりと、喉の下から後頭部にかけて聖剣が突き刺さる。手の中に残る命の叫び。
ゴブリンよりも人っぽい姿が命を失う光景に未だ慣れたとは言い難いけど、立ち止まるわけにもいかない。
大きな音を立てて相手の持っていた棒が地面に落ち、巨体が倒れ込む。
オーク達の視線が集まり、そして叫び声が響き渡る。よくわからないけど、恐らくは恐怖への叫び。
親玉があっさりと死んでしまったのだ、無理もない。
そのままオーク達はゴブリンと一緒に散り散りに逃げていく。
そのほとんどは追撃の前に倒れるけど、一部は逃げ出すことに成功したようだった。
まあ、同じような群れになるのには相当な時間がかかるとは思うけどね。
「牙と石英大サイズとこの変な棒か」
腰には服のつもりか布らしきものがまかれていたけど明らかにやばい匂いがしそうなものだったのでパス。
「とんでもねえな。あいつの攻撃を避けなかった時は終わったと思ったんだが……」
「ちょっと力には自信があるのさ」
飽きれた様子の相手に、石英大を見せながら笑い、短く答える。
それで相手もプロ、それ以上聞いてこようとはしなかった。時間にして1時間も立っていない攻防。
それでも村が1つ、救われたということに俺は嬉しくなり、門の上で抱き合って喜んでいるジルちゃんとラピスに向けて手を振る。
こちらに手を振り返す2人を見て、少しは格好いいところが見せれたかな?などと考えた。
その2日後、再び俺達は薬師のおじいちゃんと一緒にトスタの街に向かうのであった。
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