JD-小話「ある晴れの日の事」
お日様はだいすき。ぽかぽかして、温かいの。
お花もだいすき。いい匂いがするし、綺麗なの。
暗くなるまでお外で遊んでるのも楽しいの。
ご主人様と一緒にいるのはすごく楽しいの。
それに、お部屋でぼんやり明るいお日様を見てるのも楽しい。だけど、今日はもっと楽しいの。
だって……一人じゃないから。
「ジルちゃん、痛かったりしませんか?」
「だいじょうぶ。時々くすぐったいけど、きもちいいよ」
頭のてっぺんにラピスの声が届くと、なんだか不思議な気持ちなの。椅子に座って、髪の毛をクシで整えてくれているの。いつも何もしてないっていったら、ジルちゃんも女の子なんですからしっかりしませんとって怒られたの。ちゃんとやったら綺麗になって、ご主人様が喜ぶんだって。
今日はご主人様は一人でおでかけなの。なんだったかな、自分を試してみたいって言ってた。変なの。
「ねえ、ラピス」
「どうしました、ジルちゃん」
「ご主人様、喜んでくれるかな」
ご主人様、ジルが役に立たないから困ってお留守番させてるのかな? だけどラピスも一緒……だからちょっとだけ心配になって聞いてみたら、くすくすって笑われた。なんだろう、面白いことあったのかな?
振り返ろうとしたら、ラピスはジルの顔を後ろから挟むようにしてほっぺたをくっつけてきたの。むにってして、すべすべして、温かいの。
「絶対大丈夫ですわ。世界一可愛いジルちゃんの出来上がりですもの」
「それは、困る……よ」
世界一は駄目なの。私がそう言ったら、ラピスはあれ?って顔で覗き込んできたの。だからジルも、ラピスをじっと見つめて言うの。心の言葉、大事な言葉。
「ラピスも、可愛いの。ジルが世界一なら、ラピスだって世界一なの……駄目?」
「……うふふ。駄目じゃありませんわ。そうですわね、私もジルちゃんも……ええ、2人とも可愛いですわ」
よかった、ラピスと一緒がいいの。おんなじ、ご主人様と一緒なの。どこに行くにも、一緒。前は朝と夜だけしか会えなかったけど、今はお昼も夜も一緒なの。だから今は少し寂しい。
もうすぐ出来上がりだっていうから、また髪の毛を触ってもらうの。
サラサラ……気持ちよさそう。ジルも、ラピスの髪の毛を綺麗に出来るといいな。
「そうだ、ご主人様が帰ってきたら聞いてみる……どっちが可愛いって」
「あらあら、ジルちゃん。答えがわかってることを聞いてしまうのは面白くないですわよ」
笑うラピスの顔を見て、ジルもそうだって思ったの。ご主人様は2人ともきっと大好きだから……。
もっともっと、仲間が増えるといいな。




