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宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~  作者: ユーリアル


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JD-126.「いつかの日常」



 恐る恐る、いつ番犬……これもう犬ってレベルじゃないけれど……な奴の横をみんなして歩く。

 最初に遭遇した時のような警戒した感じではなく、誰だっけ、でも前に関係者いるしと言いたげな顔だ。

 こちらの匂いを嗅ぐような仕草が本当に犬っぽい。大きさはワゴンタイプぐらいはあるから怖いところではある。


『ダイジョウブデス タブン』


「とりあえず入ろうや。そうすりゃいいだろう」


 不安ばかりしかないけどドルマさんの言う通りではあるので、正面に向き直って案内に従って門をくぐると……まるで空調が効いているかのように少し空気が変わった。

 外よりもすっきりしてるというか、ホコリが無い感じと言えばわかるかな?


『コチラヘ』


「随分しっかりと残ってるんだな。すごい……」


「ご主人様、あれもそれもみーんなマナが流れてるよ。すっごいよ」


 興奮した様子のジルちゃんを抱き寄せつつ、みんなと一緒に周囲を見ながら歩く。受ける感じとしては家、ではなく研究所。

 建物も箱って感じでしっかりしてるし、間違いないかなと思う。そう考えるとさっきの空気が違う感じは環境を一定に保つためかな? どちらにしても随分と長い間動いてることになる……。


『ガイヘキ ナイヘキ トモニ マモノユライノ ウウ ショウショウオマチヲ』


 ここまで案内してきてくれたゴーレムは何かに悩むように呻いたかと思うと、急に立ち止まって振り返り、俺達の方を見る。

 何が起きるのかと警戒した俺の前に立つと、その短い腕を俺に向けて何やら光り始めた。


「トール様、平気です?」


「う、うん……」


 なんとなく何をやっているかは察しがついた。こちらを何かスキャンしているんだと思う。柔らかい感じの流れが頭から足先までやってくるからね。

 出来れば一言かけてほしかったけどお約束的にはそういうものじゃなかろうか。


 黙って動きを見守っている俺達の前で、ゴーレムの顔のあたりに色々と光が灯ったかと思うと急にそれが収まり、笑顔な顔文字が浮かぶ。どうやら終わったらしい、何かは知らないけれど。


『お待たせしました。しばらく喋っていなかったので調整が出来ていなかったようです』


「あらあら、急に流ちょうに……マスター、分解しません?」


「駄目よ。まずは耐久試験からよ」


 ここぞとばかりに、2人は散々追いかけることになった苦労からかそんなことを口にし、ゴーレムがそれに怯えるように飛び跳ねる。

 芸が細かいな、そういう設計なのか? 昔の人も未来に生きてたんだな……。


「二人とも―、とーるが困ってるよ? ゴーレムさんゴーレムさん、ここはなんなのー?」


『少し長くなりますのでこちらの来客用の部屋でお待ちください』


 さっきまではどこのSFだと思うぐらいにポンコツな感じだったのに急に優秀な空気を醸し出して……なんだろうなこれ。

 見た目は同じこけしに手が生えたような感じなんだけど……。


 ひとまずは言われるままに扉を開けると、そこには確かに質素な感じで普段使いではなさそうな部屋があった。

 少し古ぼけた感じはあるけど、それでもこの部屋が過ごした長い時間を考えると……ね。


「おい兄ちゃん。これだけでも一財産じゃねえか?」


「かもしれませんね。でもきっと驚くのはこれからですよ」


 きっと王宮みたいな場所ぐらいにしかここまで正確に切り出された石材とかは無いに違いない。地球での機械のそれのような、決まった規格のゴーレムが作業して作りだした工業製品だよね、もう。

 俺の感じから言えば、某幕府が出来るかどうかぐらいの時代に作られたような物だ、とんでもない。


 みんなもどことなく、緊張した感じがある。歴史を感じてるのかな……あれ? でもみんなは宝石とかの精霊だから年齢自体はこの都より……となると?


「ねえ、ラピス。みんなが静かなのはもしかして?」


「はい、マスター。この建物……貴石術の行使による攻撃が難しいです。生活に使う程度であればいいですけど、それ以上は力が出せないですわ」


「なんかね、だめだよーって叱られる感じなの」


 やはり、何かしらそういった技術が使われてるらしい。そうなるとますますこの都が無人だった理由がわからないが、さっきのゴーレムが教えてくれるんだろうか?

 と、丁寧に扉をノックする音。それに返事をすると先ほどのゴーレムが……ん?


『お待たせいたしました。申し訳ありません。補給が一切なかったもので人間にお出しできるものが……いかがしました?』


「いや……変な格好だなって思ってよ」


 そう、何も着ていなかったゴーレムが今はなんというか、変な感じのタキシードもどきを着ている。ゴーレムが自分で考えて作ったとは思いにくい。人の衣服というのは時と場合も変わらず、大体同じような進化を遂げるんだろうか?


『ああ、申し遅れました。執事ゴーレムのセバスです』


(執事? 執事って言った? しかもセバス?)


 混乱し始める俺の頭……別の部分では妙に納得をしている俺がいた。この世界は所々、おかしかった。

 あるはずの無い物や考えが当然のようにあり、文化だけは衰退しているのだ。

 どこかおかしいとは思っていたんだよな……。


「ひつじさん?」


「違うよ、ジル。執事って書いてげいにん、って読む方だよきっと」


「ああ、謎のコネでどこからか物資を調達して渾身のボケをかますような、です?」


(それ以上はいけない!)


 たぶん俺達にしかわからないネタを口にし始めるニーナたちを止めようとするも、時すでに遅し。ドルマさんは何のことだ?って顔をしているけどセバスのほうは器用にプルプル震えている。

 弁解しようとしたところでセバスが切れる方が早かったようだ。


『ムキー! 私は執事ですうー! 製作者がノリでどっちの思考も設定したからいつも衝突してるけど執事なんですううー!』


 決して暴れるには向かないであろう体を必死に動かし、自分のせいではないと抗弁し始めるセバス。うん……よくわかったよ。君が面白いということは。ドルマさんも笑い出すぐらいだしね……。


 しばらくして、落ち着いたらしいセバスは今さら遅い気もするけど取り繕うように挨拶をし始める。

 俺達も一応同じように自己紹介をし直して改めて向き直った。

 あ、ソファーみたいなものはさすがに駄目になってたので立ちっぱなしというこれまた締まらない結果だけどね。







 セバスから語られたのはこの街の過去。かつて、ヨーダ将軍に聞いたようにこのあたりは世界の中心ともいえるほどの技術を誇っていた都だったらしい。

 最先端の貴石術とそれを使う術具、それらを駆使した防衛機構の都。それはとある少数の人員によって開発されたらしい。

 都の上層部は、他国に技術流出が起きた時の影響を考えて情報は小出しにした。逆にそれがこの都の希少性を増し、栄華ともいえる日々を過ごし、平和な日々が都にはあったそうだ。


 平和過ぎて終焉はあっという間だったらしい。


『ある日、この都の結界に揺らぎが生じました。維持しているマナの流れに異常があったのです。原因はすぐに判明しました。都のそばにマナの動きを阻害する魔物が大量に押し寄せてきたのです』


 セバスの話に誰もが顔を硬くする。きっと俺が出会った虹色のような奴らの事なんだろう。

 ジルちゃんたちもその時のことを思い出しているようだった。あれは辛そうだったもんね……。


『ゴーレムはまともに動かず、仕方なく人間の戦士が外に出……見事に罠にはまりました』


 なんと、人間側が迎撃に出た後に上空からドラゴンが5頭近く降りてきたというのだ。

 しかも赤、青、緑など各属性の色を模したであろう体を誇示しながら。

 多くの戦士が迎撃に出ており、都のゴーレムは動かない。そんな状況で戦士たちは挟み撃ちにあい、甚大な被害……というかほぼ全滅したらしい。

 都から出ていなければなんとかなったかもしれないが、既に外にいたので守りが薄かったようだ。


『その後はこのあたりの中心区画を欺瞞結界で隠し、離脱するのが精一杯でした』


「欺瞞? そういや前の調査じゃこの辺は区画自体、あるって報告が無かったよな、兄ちゃん」


「確かにそうですね……なるほど」


 この都が滅んでしまった理由はわかった。でもそうなると不思議なこともある。ドラゴンたちがどこへ行ったのか、と言ったようなことだ。

 思い出したくないことではあると思うけど、聞いておきたい。


「どうしてドラゴンはここを襲い、壊しきらずに去って行ったんだろうか」


『恐らくは、狙いは人間だったのでしょう。私のようなゴーレムでは未来は作れない。都を去った者も、どれだけが生き残ったことか……』


 セバスの話から色々なことがわかったが、同時に怖いこともわかった。それは……相手が破壊を目的としていなかったという部分だ。

 人間以外には考える頭が無い、なんていうつもりもないけれど……。


「人間がどれだけ厄介か、わかってるやつがドラゴンを使った……そう思えるわね」


「そうなんですわ。ドラゴン単独でこんなことを考えられるとは思えませんの」


 そう、厄介で怖い部分はそこなのだ。この都が滅んだ襲撃の犯人は別のところにいる。もう今生きているかは知らないけれど、少なくとも意志を継いでいる相手がいるのは間違いないだろう。


「ずっと眠っていましたがつい先日、いつかのようにマナに揺らぎがあったのか皆、目覚めました。外のゴーレムたちは制御不能でしたが……」


力なく落ち込んだ様子のセバス。追いかけられていたのはそういうことらしい。


「兄ちゃん、ひとまず戻ったほうがよくねえか?」


「そうしましょう。セバス、また来るよ」


『はい。次回はぜひおもてなしさせてください』


 器用に体全体でお辞儀するセバス。俺は彼のそんな節々の仕草や、この都にあったものを思い出しながら……前にこの世界に来たであろう人間のことを考えていた。


(俺は……生き残るよ)


 新たな決意が役に立つのは意外と近いかもしれない、そんな予感を覚える俺だった。

ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。

増えると執筆意欲に倍プッシュ、です。


リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。



誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします

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ご覧いただきありがとうございます。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/
完結済み:兄馬鹿勇者は妹魔王と静かに暮らしたい~シスコンは治す薬がありません~:http://ncode.syosetu.com/n8526dn/
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