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宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~  作者: ユーリアル


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JD-106.「ごろごろり」


 かさりと、音がした。相手の音を聞き逃さないつもりで緊張していた俺は思わずそちらを向きそうになる体を抑え込み、気配をまずは探った。

 その気配は……小さい。対象のモンスターではないということだ……。


(相手の大きさは俺より少し大きいぐらい……気配も相応と聞いている……けど)


 何分、初遭遇しようという相手を、こちらが先手を取れるように確実に見つけようというのがハードルの高い話なのだ。

 見つけるのはともかく、見つからないように先手を、というのが一番の問題だと思う。


 身をかがめ、無理のない姿勢で時間を待つ。離れた場所ではジルちゃんたちも同様に、女性冒険者と組んで待ち構えているはずだ。

 と、地面についていた手に僅かな振動を感じた。ニーナに教わった、足音を感じるようなソナーのような物だ。

 何かが転がる音が地面を伝わり俺にその方向を伝える。


 俺は手を放し、近くに待機している同業者である男の冒険者数名にハンドサインを送る。事前に示し合わせたその合図は、この先に獲物がいること、自分たちの前を通り過ぎるルートであることを示している。

 つまりは、俺達が仕留めることができるかもしれない、ということ。


 緊張にか荒くなりそうな息をひそめ、その気配が近づくのを待っていると、ついに耳でも相手の立てる音が聞こえてきた。

 大きな球体を転がる音だと聞いている。そのモンスターの姿や生態を聞いたときには顔が引きつりかけた物だが、この場所では非常に重要な相手だというのだから不思議である。


(来た……数分ぐらいか……)


 茂みに潜む俺の視界に、獣道を進む影が見える。まず見えてきたのは球体。それに隠れて見えないが、その向こう側には大きな動く物がいるはずだ。

 その音の主は特定の地層の土砂を主に食べ、硬い鉱石を砕き、自らの腹を通して排出した残りを固めて球体として決まった場所に捨てに行く習性を持つ。

 消化しきれないその鉱石を砕いて固めた物はそのまま加工できるような純度の物となっているらしい。


 そう、相手はフンコロガシの異世界版だった。大きさも巨大で、その時点で驚きなのだが食生活もおかしい。さらにこいつは先手を打ちたい理由がある。意外と臆病で、もたもたしていると毒ガスのような物を出してくるのだ。

 最悪なことに、それはフンである球体の鉱石部分を汚染し、除去には非常に手間がかかる。

 なので極力、速攻で仕留めることが推奨されるのだ。


(合図……3……2……1!)


 声も無く俺の手からは貴石術による刃が、冒険者からは矢が放たれる。それは空気を切り裂き鋭い音を立ててフンコロガシもどきの首元や甲殻の隙間に突き刺さる。

 不気味な悲鳴を上げるフンコロガシもどきがこちらに背を向けた。

 事前に聞いていた通りのガス噴射の兆候に内心嫌な物がせりあがってくるが、なんとか押しとどめて聖剣を振るい魔刃を放った。


「よし……」


 それは相手に声のような音を上げることも許さず、実際には細かった首部分を切り離し、沈黙させることに成功した。

 嫌な臭いは漂ってこない……成功だ。思わずため息のように息が漏れ、安心して深呼吸を行う。


「お見事。なかなかやるじゃねえか」


「うむ……実力を計れとおやっさんに言われたのも納得だな」


 息絶えたフンコロガシもどきと、無事だった球体の周りに集まった冒険者達から口々に賞賛の言葉が飛び出し、妙にくすぐったくなる。

 ごまかすように周囲に目をやると、別の茂みからジルちゃんたちが飛び出してきた。


「やったね、ご主人様!」


「うわー、こんなに大きいんだ。重そう……」


 男達は突然現れた少女たちに戸惑うのを感じるが、それも後続の女性冒険者達の姿を見ることで収まっていく。

 俺たちを合わせて15人ほどの冒険者の集まりがこの狩りの人員だ。


 結構な大人数だけど、この球体1つでも十分稼ぎになるのだという。その分、数日かけても1回も出会えなかったり、汚染された状態となってしまうことで稼ぎが減ることが多いそうだ。

 そう考えると、たった1つでも綺麗に手に入るのは上出来ということらしい。


「ふむふむ……確かに感じるのですよ、これ。自然の鉱脈としてこれがあるなんて驚きなのです」


 普段は物静かに佇んでいるラピスや、照れ隠しからか斜めに意見をいうルビーも興味深そうに球体をぺちぺちと叩いている。

 ニーナだけは、この球体の正体をしっかりと感じ取っているらしい。

 黒味も混じっているが、全体的に銀色の光沢のある岩の球体にしか見えないこれの正体は恐らくはチタン。

 軽くて丈夫、酸にも強いとなるとたぶん当たりだと思う。


(宝石類が一か所で出てくる鉱山があるぐらいだ……考えても仕方ないか)


 ニーナの言うように、この鉱脈があるというのがなかなか信じられないことだけど目の前に存在するのだから仕方がない。

 聞いた話によると、このフンコロガシもどきの体内には高温のガスが生成される部分があり、そこで食べたチタンの元である土砂が影響を受けてこの状態で出てくるのだという。

 何度か食べる地層を掘り、人間の手で同じものを作ろうとしたそうだけと上手くいってないらしい。


 俺も聞きかじりだけど、チタンは現代でも最近ようやく手段が確立された金属だ。無理もないと思う。むしろこうして大人一人でも抱えられない量が確保できるというのがおかしいのだ。


「よーし、持って帰るぞ!」


「「「おおー!!」」」


 まるで玉ころがしに使いそうな球体を大人が何人もで抱えていくというシュールな光景であるが、これも大切な依頼の1つだ。

 これを使って武具が出来上がり、それがみんなの命を救うのだからしっかりこなさないとね。


「あらあら、そんなにくっついちゃって。大事なのね」


「うん。ご主人様大事な人なの」


 俺はというと、仕留めた功労者なのだから気楽に戻ればいいと言われ、手ぶらである。手伝おうとしたのだがトドメ以外の人間が運ぶのがルールだと言われては仕方がない。

 その代わりにと追加のモンスターが来ないかと警戒しながらであるが、その間ジルちゃんはなぜか俺の腕にぶら下がるようにくっついている。その状態でも警戒はしているので問題があるという訳じゃないのだけど、同行している女性冒険者にとっては格好のネタだ。

 何かにつけて話しかけ、赤面しそうなセリフをジルちゃんから聞き出している。


 いつの間にかルビーやラピスは少し離れた反対側で聞いてないような風で歩いているし、フローラは好き勝手に周囲を見ては遅れ、追いついてを繰り返している。ニーナは俺より真面目な感じで先頭で周囲の警戒をしているので仲間がいない。


「貴方達……女の子5人じゃ色々大変ね。みんなで頑張らないといけないのね」


「そうなの。 1人じゃ大変だからみんなでがんばるの」


 ジルちゃんは気が付いているだろうか? 女性陣が語る内容が色々な意味を感じる内容になっていることに。

 まあ、俺も大人数の前で5人ともお嫁さん宣言をしているので今さらであるが……。

 ジルちゃん自身は気が付かず、無邪気に答えているけど、深読みすると色々とやばい。

 街にたどり着くまで俺の羞恥心は持つだろうか?


 幸いにもというべきか、不幸にもというべきか。その後モンスターの襲撃は無く、無事に怪我も無くハーベストの門が見えてくる距離までやってきた。

 心なしか、球体を抱える面々にもほっとした気配が漂った気がした。

 俺も、まだ数日しか過ごしていない街なのに帰ってきたという感じを覚えた。


 後はこの球体をギルドに収め、お金で受け取るか、物品として鉱石部分を受け取るかを決めることになる。

 分配する際、非常に硬いので専門の担当者がゆっくり時間をかけて分ける必要があるところ、うっかり聖剣で切ってしまったことでまた騒動となるのだけどそれは別の話だ。

ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。

増えると執筆意欲に倍プッシュ、です。


リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。



誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします

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ご覧いただきありがとうございます。
ぽちっとされると「ああ、楽しんでもらえたんだな」とわかり小躍りします。

○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/
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