すろっと部
廊下を二人で歩く。下校しに昇降口に向かう生徒達の視線が気になる。
「そのー。」
話しかけようと思い自己紹介で聞いた名前を思い出す。
「新宮さん?だっけか。あの、俺部活入る気ないんだけど、ってかその前に何の部活の部室に向かってんだ?」
「どーせ暇でしょ?見学だけよ見学。無理矢理連れて行くのは悪いと思ってるけど。」
一応悪いと思ってるんだ。
「それと、」
彼女が言葉を続ける。
「菜奈でいいわ。下の名前で呼んで。私もゲンキって呼ぶから。」
新宮 菜奈。それが彼女の名前だった。
「わかった。んで菜奈。どの部活に行く気なんだ?」
「ついたわ。ここよ。」
そう言って菜奈は立ち止まった。いつの間にか部室棟の一番奥まで来ていたみたいだった。こじんまりした部室の上に部活の名前が書いてあった。
「...すろっと...部...?」
そこには手書きで"すろっと部"と書いてあった。
「そう、スロット部よ。」
「スロットって、あの?」
「あのスロットよ。」
「こんな部活あんのかよ...。初めて聞いたわ。ってか帰る。」
「いーから。」
そう言って後ろを向けて引き返そうとしている俺の学ランの首元を引っ張った。
「ぐはっ」
「失礼しまーす!」
そう言って彼女と俺は部室の中へと入っていった。