シェルネリー・キャストライドの転生リポート【没落メルトダウン番外編】
※ これは『没落メルトダウン』の5年後を想定したパラレル番外編になります。
バレンタインにかこつけて短編を書こうと思ったら、何故かこうなりました。
一応、バレンタイン企画……? 成否は謎です。
あくまでもパラレルであり、本編の未来そのものではありません。
本編のミレーゼ様達が必ずこのような未来を辿るという保証は出来かねます。
以上の点を踏まえて、番外編をどうぞ!
みなさん、こんにちは❤
私……じゃなかった、わたくしはシェルネリー。
キャストライド男爵家に生まれた三女で、実は前世の記憶持ち美少女よ!
え? 記憶持ち転生者とか聞きあきた?
そんなこと言わないでよ! いざ自分の身に起きてみるとびっくりしちゃうんだから。
でもわたくし……言い難いわね、独白くらいは『私』で良いでしょ。
私は前世にあまり良い記憶がなかった。だからオギャー!生まれ変わったー!!って気付いた時はすっごく嬉しかったの。
生まれは貴族、家族は美形で優しい!
もう今度の家族を見た瞬間、私は勝ち組人生を予感して赤ちゃんながらに「勝った……!」って拳を握っちゃったわ。
前世じゃママは出てっちゃうし、パパはアルt……ううん、なんでもない。前世なんて、もうどうでも良いわ。忘れて忘れて!
私は前世に良い記憶がなかったからこそ、決意したのよ。
今生じゃ絶対に幸せになってやる……!って。
だからネット小説にはまってた友達からの聞きかじりだったけど、将来はチート無双とかチート内政とか色々夢見ちゃったんだけど……
そんな夢は8歳で木端微塵!
私、チートなかった……。
精神年齢はそりゃ、高かったけど。
運動神経は並、頭はちょっと良いけど天才って程でもない。
顔はまあまあ良いはずなんだけど……貴族舐めてたわ。
貴族の美貌って、半端ないのね。
うちは美形一家だって思っていたけど、なんてことはなかったのよ。他の貴族家の人達も同格か、それ以上に顔が良かったんだから!!
この国の人間自体、顔面偏差値が高いとか。
権力者の常として代々美女美男の血を取りこんだ結果、位の高い家ほど美貌に恵まれるとか。
自分の顔が平凡に見えてくる現実を知ったのは、他の家の子と交流の機会をセッティングされた園遊会でだったわ。
あの日の夜は自分の増長ぶりが恥ずかしくって、枕をたっぷり濡らしたものよ……。
それ以外にも色々とカルチャーショックな事態は起きるし、意外にこの世界の文明水準高いって知る羽目になるし。
私にチートなんて便利な機能は備わってないって気付くまで、8年もかかっちゃったのよ。それまでの自分の「将来私はビッグになるのよ!」なんて楽天的に思ってた天狗ぶり……思い出すだけでくびり殺したくなるわ。
前世での知識を過信して、この世界のことを見くびっていたのよ。
考えてみれば前世の私も専門知識もなければ博学って訳でもなかったのに……それでなんで知識チート出来ると思ったのか。
素養がないからこそ、最初の下積みが肝心だったのに!
うっかり自分には高い才能が眠ってるなんて、中二病みたいな根拠のない思いこみに胡坐をかいて幼児期の努力を怠ったのよ……。
気付いてみれば、私は平々凡々な下位貴族の令嬢人生を歩もうとしていたわ。
そう、下位貴族。
貴族に生まれたってだけで恵まれた人生ゲット!なんて思ったけど。
貴族の家に生まれて実情を知れば知るほど、そんな楽観視できないことがわかってくる。
そりゃ、平民とかに比べればずっと恵まれてるわよ?
でも所詮、男爵家。貴族社会の中では下の方。
男爵の中には当主の才覚で上位貴族と同等に渡り合えるような栄えた家もあるけど……うちはまあ、凡庸な部類だった。
平民よりは恵まれているけど……実情はそこまで楽じゃない。
上からの圧力もあるし、同格の貴族との兼ね合いもある。
色々と貴族も大変ね、と他人事じゃいられない。
だって……家の格だとか他の家との関係とか、それって思いっきり私達の嫁入り事情に絡んでくるんだから……!
貴族の娘として生まれて、自分の地位を向上させるだけのチートがなくって。
自分自身の力で身を立てることができないとなると……恵まれた人生を勝ち取って幸せになる為にはどうすれば良いのか?
私は考えたわ。
でも結論なんて、1つしかなかった。
それこそ、貴族の家に生まれた娘の宿命。
家の為に育てられたからには、家の為になる結婚をしなくっちゃいけないのよ。
だって、それが貴族社会ってものなんだから。
チートで身を立てる、なんて思ったけれど。
生まれた家に縛られて、そもそも義務が発生していた。
絶対に、放棄しちゃいけない義務が。
家を飛び出すなんて考えちゃいけない事だったって気付いたのは、10歳の時。
そうよ、私には自由に羽ばたく権利がなかった。
子供の頃の大言壮語ぶりを姉さん達がくすくす笑っていたのは、姉さん達が身を弁えていたから。
それに気付くのが随分と遅れて、今から私……間に合うかしら?
それからより良い家に嫁いで幸せを掴み取るべく、猛特訓と勉強の日々が始まったわ。
特訓は勿論、貴族令嬢としての所作やら作法やらについて。
今まで高をくくって半分聞き流していた家庭教師の話にも、うんと身を入れてみっちり教育してもらったわ。
目標は、王立学校への入学――!
王立学校……それは私達の住むウェズライン王国に唯一存在する上級学校のことよ。
貴族の家でも家を継いだり、高い役職に就く未来が約束された子達が入学するよう義務付けられている学校なの。
大きな責任と義務、貴族としての心得を叩きこまれるだけあって、相当に厳しい審査基準で実力を求められる……らしい。
平民の子でも能力を認められた子しか入学できないのよ。
だけどその分、卒業したとなれば誰からも認められるエリートとして一目置かれる存在になれるのよ。
学校でかかる費用の一切は請求されないけれど、その代りに卒業後は国の為に働くことを要求されるらしいけど。
男子なら役人になるとか、軍属に進むとか。
女子なら官女になるとか、軍属看護師になるとか。
まあ色々あるわよね。
それが嫌なら免除されていた学費を納めないといけないって辺り、学校の厳しさを如実に語っている気がするわ。
実際に大きな家の子供は学費を払って王宮勤めを免除してもらうことは多いらしいし、女ならお嫁入り先に肩代わりしてもらうって場合もあるみたい。
それって結構、家への負担が大きくって肩身が狭いかもしれない。
それでも良い、って私は思った。
たとえ卒業後の進路を縛られるとしても。
それでも王立学校に進む為、私は令嬢教育と合わせて学問にも力を入れたわ。
だって貴族家の跡取り以外は、普通に入学試験を受けないといけないんだもの……!
家の名だけで入学が認められるのは、後を継ぐ可能性が認められる長男と次男だけ。
私は三女だから、きっちり試験を受けて学力を証明しないといけないのよ。
私の目標を知った兄さんは止めてきたけど、私は諦めるつもりなんてなかった。
姉さん達は両親の勧めるまま、素直に花嫁修業を兼ねた修道院学校に進んだわ。当然、女子高ね。
だけど王立学校は共学、そう共学なのよ!
私の目標は王立学校。
だけど王立学校を目指す目的は……好条件の旦那様ゲット!
この一言に尽きるわ。
だって、王立学校の生徒はいずれも将来のエリート確定の好物件なのよ?
狙わない手はないわよ!
女子高に通って家の決めた、そこそこ身分の釣り合う平凡な相手との結婚も良いとは思うわよ?
でも女に生まれたからには……より高い頂を目指してみたい!
共学で相手がエリートなら、一緒に学ぶって立ち位置から切り込むことこそ王道でしょ!
恋愛に疎い少年の頃から将来美青年になりそうなのに目を付けて、じわじわと攻め落としてみせるわ……!
……それに私、三女だから。
下手したら持参金が用意できなかったとかの悲しい理由で、修道院に入れられるかもしれないしー……?
それくらいならまだ出会いの場が残される、王宮での女官勤めの方がまだマシだと思うのよね。うん。
学校を卒業するまでに相手をゲットできなくっても、必然的に進むことになる王宮勤めで条件の良い相手を探すことはできる。
私は何としても、「持参金? そんなのなくても良いよ!」って優しく言ってくれる、素敵な旦那様を見つけなくちゃいけないのよ!
そんな未来を目指して、合言葉は『愛のある玉の輿』よ!
私はそんな高い志を持って、努力を重ねた。
幸い、チートなんてないと思っていたけれど前世の高校で受けた高度な教育も一助になった。
知識の下積みはあったのね……!
あんな勉強、将来どこで役に立つのかと思ったけれど……来世で役立つとはまさか思いもしなかったけど。
そうして、とうとう。
私は兄に呆れられながらも王立学校への入学資格を手に入れた!
両親に私の志を語ったら、むしろ頑張れと応援してもらえたことも大きいわ。
精神的に支えてくれたお父様とお母様には大感謝よ!
だから、うん、忘れないから。任せておいてくれて良いから。
ちゃんと家にとって良縁になる相手を捕まえるからー!
これで、未来は薔薇色。万事うまくいく。
そんな将来を夢想して、私は始まる学校生活に胸を弾ませた。
未来を楽観視しても、うまくいくことなんてほとんどないのに。
自分の天狗っ鼻を圧し折られた経験も枕の下に置き去りにして。
何はともあれ、私は王立学校に入学した。
――そして、半年後。
私は盛大に頭を抱えて、そんな旨い話はなかったと落胆している。
うん、確かに周りはエリート。
エリートばっかりよ?
だけどね……私と同じことを考える女は、他にもいたという話。
というか王立学校に来る女の子って、7割か8割はそんな感じだった。
前世で負け組だった私に、幼少時代から磨きに磨きあげられてアレコレと心得的なものを叩きこまれた肉食令嬢の群れを、どうやって押しのけろというのか。
そんな千切っては投げの無双的活躍が出来るくらいなら、とっくに家出して傭兵にでもなっていたわよ!
ここでも実家の男爵位という、貴族としては下位にあたる家格が物を言ったわ。世知辛い。
それでも目敏く女豹の様に、時にハイエナの様に他の女達の隙を突いて、学校内でも売れ筋の素敵男子とお近づきになろうと努力はしたわ。
でも、でもね?
他の女の妨害もそうだけど……基本的に妨害の隙を突いての接触だから、恒常的な関係は築けないし、そもそも一定のお相手とお喋りできる訳じゃないし。
やり過ぎたら男女両方から尻軽認定、青春に満ちた学園生活終了のお知らせってものよ。
私みたいな前に出たくても出られない女子は、学内カースト的に一歩劣る……二軍とか三軍男子とお近づきになるのが精々なのね。
でも、このままじゃ終われない。
このままで終われるはずがないのよ。
私は誓ったわ。
今は牙を研ぎ、足場を作る雌伏の時。
いずれ機会が訪れることを願って……いざ訪れるその時を逃さず、暗殺者のように迅速に! 絶対に妥協せず! 素晴らしい旦那様を捕k……ゲットして見せると!
――そして、更に半年後。
そこには盛大に頭を抱えて、追い詰められた私がいた。
失敗した!
すっごい失敗したー!
だってあんな、あんな大人しそうに見えたのにぃ……!
最近、私は人間関係で悩んでいる。
それというのも半年前、素敵な旦那様☆ゲット計画の一環として自分の環境の下地を整えようと決めたのが失敗だった。
……いや、計画そのものは良かったと思う。
だけど計画の焦点を見誤った。
自分が直接素敵な男の子と仲良くなれないなら、既に仲良しになってる女の子とお友達になろうと思ったのだ。
これがTHE☆ハイエナ計k……じゃない、素敵な旦那様☆ゲット計画の重要な胆となるはずだったんだけど。
私は仲良くなる相手を間違えた……。
「おい、見ろよ……あの子だろ?」
「ああ……小虎姫のお気に入りの?」
「大人しそうな顔して……類は友を呼ぶんだろうか」
道行く利発そうな男の子達が、私のことを噂している。
だけどイエーイ☆やったね!とは喜べない。
だって噂の種類が良いものじゃないから。
どっちかというと、命知らずの特攻野郎を見た!っていう感想に近い。
つまりは危機意識を管理できない無謀な勇者を見る目だ。
きっと私が私じゃなかったら、同じ目で見ていたはず。
木陰のベンチで遠い目をして我が身を振り返っていると、遠くから私に呼びかける声がする。
「シェルちゃ~ん、こんなところにいた」
「あ、良かった。探してたんだ」
声の方に顔を向けると、そこにはランク付けするとして顔A/勉強A/運動Aの永久保証付きに認定できる素晴らしき男の子達。
ああ、出来ればもっと別の用件で呼び止めてほしかった……!
なんで彼らが私を探しているのか。
その理由に見当が付くだけに、余計悲しくなる。
「フィニア・フィニー様、アレン様……」
「やだな、シェルちゃん。私に様付けなんて他人行儀だよ? 君みたいな可愛い子に、そんな距離を開けられたくはないな」
「フィニア・フィニー、出来ればそういうナンパみたいなことは僕のいない時にやってくれないかな。僕まで同列に見られる」
「アレン様、これは私の口癖とでも思って勘弁してほしいな」
「あの、お2人とも、どうされたんですか……?」
長い髪を揺らした、美少女にしか見えないフィニア・フィニー様。
だけど『彼』は男子籍で学校に登録されているので、男の子なんだと思う。たまに、すごく疑わしくなるけど……。
彼は平民……それも孤児という後ろ盾のない身から、個人の才覚で貴族の後見を受けて学校に入学した天才児。
なんでも凄まじい記憶力を持つとかで、学問の領域では他の追随を許さないとまで言われている。
もう1人はブランシェイド伯爵家の四男で、アレン様。
跡継ぎでもないのに王立学校に来ている時点で、優秀なのは確かよね。ちょっと頼りないけど、他の貴族のボンに比べたら随分と胆が据わっている方だと思うわ。将来性はある方じゃないかしら。
どちらの男の子も、個人的に私を探してくれてたんだったら嬉しいんだけど……でも2人とも、『彼女』の取り巻きなのよねぇ。
「シェルネリー、ミレーゼが呼んでる」
「シェルちゃんもお茶会においでって❤」
ほらね、やっぱり。
『彼女』からの呼び出しだ。
私の代の、王立学校には……女王様みたいな子がいる。
私なんて男爵家の三女だし、上流階級でも高位貴族に関する話には疎い方。だから実際に接して実態を知るまで、当たり障りのない噂は知っていても、『彼女』に関する詳しい話なんて全然知らなかった。
外見に騙されて、大人しそうな子だって思っていたくらい。
おっとりとした雰囲気の、垂れ目がちで優しい顔立ちの女の子。
同じ年とは思えない、ふんわりとしたお人形みたいな子。
侯爵家の子だって聞いていたから、てっきり蝶よ花よと育てられた深窓の、浮世離れするくらいにお淑やかなお嬢様かと思っていたんだけど。
そう、おっとりしすぎていて、肉食お嬢様達とは気が合わないんだろうって。
『彼女』は……ミレーゼ様は、女の子のお友達がほとんどいなかったから。
今ならわかる。
彼女はただ、敬遠されていただけだと。
そしてそうされるだけの理由があるのだと。
社交界で影ながら囁かれる彼女の渾名は『小虎姫』。
その名が、全ての理由を物語っている気がする。
それを知らずに、まあ私は……うん。
虎に近づく野鼠みたいに、危険に気付かず接近してしまった。
女の子の友達はほとんどいないけど、何故か学園内でも屈指の素敵★男子が学年問わず彼女の周囲には集まるから。
その状況で女子のやっかみや嫌がらせめいた噂を全然聞かなかったから、他の女子に敵認定されないくらいに大人しい相手なのだと見誤った。
それだけならまだしも、「女の子の友達がいないなら、私がその枠に入り込む隙もあるよね」なんて――!
私は、命知らずだったらしい。
『彼女』の実態を知らずして、のこのこと近付いてしまったのだから。
彼女は学校のどんなお嬢様も敵にしない。
敵になれないだけの相手だった。
どちらかというと味方にした方が得策。
だけど近づくのは危険すぎるから、本当に賢い手段は遠巻きにして近づきすぎないこと……そんな上流階級の中でも本当に上の位の人達にとっては暗黙の了解。
出来れば、もっと早く知りたかった……!
私は『彼女』に近づいて、返り討ちになるならまだしも。
何故か、何の因果か。
き、気に入られてしまったのよーっ!!
彼女は、私の思惑なんて一目で見抜いて。
それどころか、その度胸と高い野心を評価する……と。
上昇志向のある人は嫌いじゃないらしいです、なんてこった。
お陰でそれまで付き合いのあった、当たり障りない似たような境遇の御令嬢達が離れて行ったのは言うまでもない。
今では私も立派に遠巻きにされている。
男も女も関係なく、関わり合いになりたくないとばかりに近付いてこない。
彼女の取り巻き男子には優しくしてもらえるが……その目の奥に『同情』が見えるのは、気のせいだろうか。
「ミレーゼ様、シェルネリー参りました」
この言葉を言う度、内心でもう一度『参りました』と繰り返す。
そんな私に気付いているのか、いないのか……。
ミレーゼ様はおっとりとした垂れ目を和ませて微笑む。
「いらっしゃいませ、シェルネリー様。女子はわたくしだけで丁度寂しく思っていたところですのよ。どうぞ、わたくしの隣にいらして?」
「は、はあ……それでは失礼させていただきます」
ミレーゼ様は本物の、正真正銘『お嬢様』だ。
私のような付け焼刃とは違う。
だけどなんでだろう。
おっとりと微笑むその目の奥に、苛烈な虎が住んでいる……気がする。
「ミレーゼ嬢? 寂しいとは聞き捨てならないな」
「そうそう、僕達が不甲斐無いって思われちゃうじゃないか」
「女性にそう思わせたのだから、事実として甲斐性なしだろう。精進しろということか」
ミレーゼ様と一緒に茶卓を囲んでいるのは……なんとも豪華な面子!
ああ、おまけとしてじゃなくって主賓として此処にいたかった!
ミレーゼ様のお側は心臓が縮む思いがするけど……その取り巻きの面子は、本当に豪華すぎる。
ミレーゼ様の周囲で1番身分が高いのは、第5王子のアルフレッド様。
彼は王位競争を離脱して、将来的に公爵家を興すことが確定している。
王子様は学校に通う必要なんてないのに王立学校に来ているのは、実はミレーゼ様と密接な関係にあるからじゃないかと囁かれているらしい。
実際に取り巻きに加わって実情を見聞きした結果、その噂はただの噂に過ぎないと私は判断している。
でも一緒にいる姿をよく目撃するので、もしかしたら……どっちかは、相手を憎からず思っている可能性がある……ような気もしないではない。確証はないけど。
それから次に身分が高いのは、公爵家の嫡子であるオスカー様。
ちょっと俺様風味のところがあるけれど、あくまで『風味』なのは常にくっついている茶々入れ3人衆……三つ子の側近がオスカー様をいじられキャラに陥れているせいだと思う。
中々に見ていて和む、愛すべき4人組だわ。
ミレーゼ様との関係は幼馴染だっていうけど、貴族の幼馴染にしては親密な……なんだか一体感みたいな、何かを感じるのよね。
他にもフィニア・フィニー様と同じく才能を認められて学校に入ったミモザ様とか、校長先生の実験助手として学校に出入りしている精悍なピートさんとか。
とにかく、ミレーゼ様の周囲は良縁の宝庫なのよ。
……彼らの関心の中心が、ミレーゼ様だってことを除けば。
だけどミレーゼ様は凄いブラコンで、聞いた話によるとまだ身を固めるつもりはないらしい。
ミレーゼ様のお兄様は国家の一大事を何度も救った竜殺しの英雄だって聞くし、まあブラコンになるのも仕方ないとは思うけど。
それでなんで、「今は結婚できない」になるのかが良くわからない。
え? 兄じゃない?
弟? ミレーゼ様、弟様もいらっしゃるんですかー。
まあ、まだ私と同じ13歳で嫁ぐにはちょっと早いんだけど。
でもこうしてこの場を見るだけでも、凄くよりどりみどり。
ちょっとその人脈と縁を分けてほしいくらいなんだけど……
実際におこぼれに預かっていても、彼らと私の立ち位置は同じ『ミレーゼ様のお取り巻き』。
この状況で、どう恋愛に発展させろと……。
同じ『取り巻き』でも、私と彼らって何か違うのよね。
ミレーゼ様とのつき合いの長さが違うから、当然かもしれないけど。
恋愛に発展させるには……
何か連帯感でも煽るようなイベントないかしら。
「シェルネリー様、ぼんやりなさって……どうなさったの?」
「はっ……申し訳ありません、ミレーゼ様」
「ふふ。もうすぐ春ですものね? 麗らかな陽気に当てられて?」
「い、いえいえ! 実はですね、ミレーゼ様! わた、わたくし、何か皆の連帯感を高められるような事はないかと考えていたんですの」
「あら……楽しそうなことを思いつかれますのね、シェルネリー様。何か良案は思いついたのかしら」
「あー……そ、そうですね?」
何か恋愛運の高まるイベント!
恋愛運の高まるイベント恋愛運の高まるイベント恋愛運の高まるイベント恋愛運の高まる……
思う浮かんだのは、バレンタイン……と、クリスマスだった。
「その、皆でお菓子を作ってみる……とか、どうでしょうか?」
「まあ、お菓子作り……ですの?」
「え、ええ。それで作ったお菓子を同じ包装紙でラッピングして、皆で回すんです。誰の作ったお菓子が自分のところに来るかなーって…………駄目でしょうか」
よく考えてみるまでもないことだけど。
考えてみれば貴族の子息令嬢がお菓子作りとか……ないわぁ。
私は前世の杵柄で、ちょっとお菓子作りなら自信あったんだけど。
貴族の子がねー……お菓子作りとか、無理でしょ。
自分で言ってみて、自分で駄目出しして。
馬鹿な発言したと、自分で赤っ恥をかいた気になって。
だから私はすぐには気付けなかった。
ミレーゼ様が、興味を持ったらしいことに。
「シェルネリー様、大変面白そうな趣向だと思いますわ」
「え、そうですか!?」
「ええ、早速細かいところのルールを詰めましょう?」
「しかも採用なんですか!」
「うふふ? 皆の作るお菓子……どのような珍p……個性的な品が見られそうですわよね?」
「あー……っと、ミレーゼ様? 楽しそうなところアレだけど、私やミモザは自炊できるよ?」
「ですが生きる糧としての料理はしていても、嗜好品の類に入るお菓子類はあまり作ったことがないのではなくて?」
「うぐ……っ」
「手作り、という点がとても素晴らしいと思いますわ。真心の籠め方が身をもって判断出来ますもの」
「ちなみに、ミレーゼ嬢も参加するのか……?」
「いいえ? わたくしはお恥ずかしながら不器用で……」
「ミレーゼ、君の手作りお菓子とか……クレイがすっごく喜ぶと思うよ」
「っ!!」
私の咄嗟の思いつきだったんだけど。
何故かミレーゼ様と取り巻きの皆でお菓子を作るという謎の展開に……
ミレーゼ様は高みの見物を決め込むつもりだったみたいだけど、アレン様が『クレイ』という名前を出したら反応が変わった。
どうやらそれは、ミレーゼ様の最愛の弟君の名前らしい。
お菓子作りの経験があるといったら、私を指南役にお菓子作り教室の開催が決まった……しまった、貴族生活で舌の肥えた彼らを満足させられるようなレシピに心当たりがない。
だけど、なるようにしかならないよね。
もしかしたら本当に、これでちょっとは親密度が上がるかもしれないし……!
私は意気込んで、彼らに指導した。
みんな、お菓子作りは初心者ばかり。
だから私の大したことないお菓子レシピでもどうになかった。
仲良くなるきっかけは、こうして作れた訳だし。
お菓子作りを通して……事態が良い方に転がりますように!
「それではお菓子作り教室第一回と題しまして……僭越ながらわたくしが、皆様に『クッキー』の作り方を指導させていただきます!」
王立学校は全寮制。
平民の子も入る寮の中には、自由に使用を認められている厨房がある。
他に使いたい子がいたらごめんと言うしかないんだけど。
現在、場に集っている面子からして貸切状態になるのは仕方ないと思う。
私はクッキーの作り方を簡単に実演して見せながら、注意点を説明した。
このくらい簡単なお菓子なら、初心者向けと言っても良いでしょ!
全体を通して説明が終わったら、いよいよみんなには実践してもらうわ!
「……って、ミレーゼ様? お作りにならないんですか……?」
実践してもらう、予定だったんだけど。
何故か作業開始を指示した途端、ミレーゼ様が椅子に座って本を読み出した。
もしもし、ミレーゼ様?
本を読んでもクッキーはできませんよ?
「シェルネリー様、わたくし思ったのですけれど……淑女が指に怪我を負うような真似は控えた方がよろしいのではないかしら」
「ミレーゼ様、余程のぶきっちょさんでもないとクッキーで指は怪我しません」
「客観的な視点から皆様の作品を品評する『審査係』が必要なのではなくて?」
「もっともらしいことを仰ってますけど、ミレーゼ様も作るってお話でしたよね? 弟様に差し上げるんじゃなかったんですか?」
「……確かに、弟は喜ぶことでしょう。ですが、『クッキー』と聞いては……」
あれ? レシピが問題?
はっきりいってクッキーみたいな庶民的で平凡なお菓子、大貴族のミレーゼ様にとっては逆に物珍しい類だと思うんだけど……
ミレーゼ様の顔は、なんだかうっすら青く見える。
向かうところ敵はなさそうなミレーゼ様が、クッキーになんで怯むの?
「その……以前、兄が……」
「お兄様がどうされたんですか?」
「……兄が、以前わたくしや弟に『クッキー』を持ってきたことがあるのです。兄の、手作りクッキーを……」
「ミレーゼ様のお兄様っていうと……」
ミレーゼ様のお兄様は、何だかとっても凄い人らしい。
とってもとっても有名で、世代を問わず人気だって聞く。
確か中二臭い二つ名もあるのよね。確か……
「『神滅侯爵』……アロイヒ・エルレイク様の手作りですか!?」
無言でこくこくと頷くミレーゼ様の目は、なんだか潤んでいる気がする。
これは余程のトラウマが……?
「その、失礼ですが……美味しくなかった、とか」
「いいえ、美味でしたわ。悔しくなるくらいに美味でした」
「え? じゃあ、どうして……」
「兄が作って寄越したものですのよ!? 食べ比べて、わたくしの物よりも兄の物の方が美味であったりしたら……弟に、兄の『クッキー』に劣ると思われたら!」
わたくしは……!と、嘆く声が高く響く。
顔を覆ってしまったミレーゼ様は、なんだかいつもよりか弱く見えた。
でもお兄様、どんだけ美味なクッキーを作ったんだろう。
はっきり言って、素人作りのクッキーなら五十歩百歩だと思うんだけど。
「え、えっと……それじゃあミレーゼ様は違うレシピに挑戦してみますか? お兄様の作られたものとは、違うお菓子です」
提案をしてみると、一縷の希望を見出したかのような顔で見上げられた。
今なら拝められてると勘違いできる。
でもそんな勘違いの余裕も無く、私は脳内で前世記憶によるレシピノートを必死にめくっていた。
クッキーと難易度的に差が小さい、素人向けのレシピは……!
「そ、そうだ! パウンドケーキとかどうですか?」
え? ダメ? それもお兄様が前に作って旨かった?
じゃマフィンとかマドレーヌとか……これもダメか。
シフォンケーキ……は初心者には荷が重いかな、ブラウニーとか。
あ、クリームブリュレ! いっそアップルパイは?
それともエッグタルトとか、タルト系いってみます?
それもダメって……じゃあ最後の手段で鼈甲飴かカルメ焼きでどうだ!
「駄目ですわ! 全部、全部お兄様が作られたことのあるものばかりです……!」
「ぜ、ぜんぶ、全滅……?」
ミレーゼ様のお兄様、どうなってんのすげぇ!?
え、侯爵様だよね? かなりの大貴族だよね!?
なのになんでそんなお菓子のレパートリー広いの???
しかもかなりの庶民派とみた……!
だけど、どうしよう。
粉やチョコ系はあるのにゼラチン系の材料が手元にない今、素人に作れそうなレパートリーは尽きた。神滅侯爵の経験の前に敗れてしまった。
今は他に提示できそうなレシピがない。
「え、えっと……ミレーゼ様、クッキーは簡単ですから……」
ミレーゼ様は心が折れたのか、無言でふるふると首を振る。
儚く可憐な様子は、今まで見たことのない反応だわ。
「シェルネリー、ちょっと……」
「アレン様?」
「その……ミレーゼにとって兄君はええと、超えたいのに超えられない壁っていうか…………ちょっと高すぎるハードルっていうか」
「え、ミレーゼ様にそんな方が……?」
言い難そうに口ごもる、アレン様。
でもその言葉で察しました。
つまり、今はそっとしておけと……
「ミレーゼ様……いつか、いつか私がミレーゼ様のお兄様でもお作りになったことのないようなレシピをご用意しますから。今回は、見学いたしましょう」
「シェルネリー様、よろしいの……?」
「ミレーゼ様は味見係をお願いします! それで、皆様に忌憚の無い意見で評価して差し上げてください!」
「ええ、御免なさいね。シェルネリー様……」
そんな訳で、お菓子作りは男の子だけがやることになった。
どんどんバレンタインが遠のいて行くわね……。
でも指導係としては、こんなのも良いかもしれない。
私は張り切って、お菓子作りを教えることにした。
「シェルちゃん!」
「わっ……フィニア・フィニー様?」
「ふふ、私が一番乗りだね。教えてもらった通りに作ったから、試食してもらえる?」
「え、もう出来たんですか! わぁ……って、あれ?」
完成報告の一番乗りは、フィニア・フィニー様。
彼が持ってきた完成品は……あれ?
そこにあったのは、私が試作したクッキーと寸分違わぬ物だった。
「えっと、これ……」
「シェルちゃんが教えてくれた通りに作ったんだよー」
「え、ええ? でも……そのまますぎますよ! 私のクッキーじゃないですよね?」
「ふふっ! 疑うなら食べてみてよ、出来立ての味がするから」
確かに、手に取ったクッキーはできたてあつあつ。
私が作ってからはちょっと時間が経ってるから、私のクッキーはもうこんなにあったかくはない。
でも……食べたクッキーは、『私の味』がした。
一応、作る人の独自性を出してもらおうと思ってトッピングは色々用意した。
そんな中で私が試作したクッキーと同じ、チョコチップクッキー。
初めて使うオーブンで火加減にちょっと失敗して、こんがり。
少し焼けすぎたところまで一緒。
寸分違わず、『私のクッキーの味』。
「ふふ? 記憶力には自信があるんだ、失敗はしていないでしょ?」
微笑むフィニア・フィニー様の言葉に、何故か背筋がぞわっとした。
コメントを避けて、フィニア・フィニー様をミレーゼ様の元へ送り出す。
そうしてお菓子作りに躓いている人はいないかなーと。
指導に専念するふりで見回してみると……
「うわっ!」
騒がしいとこ、発見!
フィニア・フィニー様からすばやく離れるためにも、向かった先には……
「オスカー様?」
オーブンを覗いて顔を引き攣らせるオスカー様と、茶々入れ三つ子がいた。
これは何かやらかしたな、と。
4人の間から手元を覗いて見ると……
「……これは酷い」
「あ~あ、オスカー様やっちゃったぁ!」
「どうするんですか、これー」
「オスカー様ってば不器用さんだったんですねぇ」
ここぞとばかりに囃し立てる、茶々入れ三つ子。
だけど彼らの作品も同じオーブンで焼いていたらしく、酷いのは一緒だ。
私は呆れた顔で、彼らに作品を見せるように言った。
指導役としては、これは言わないとダメよね!
「オスカー様、火力が強すぎです!」
「済まない……」
そこにあるのは、真っ黒な炭の塊……っぽいクッキー。
焦げたのを見て慌てて取り出したんだろうなぁ……
1つを手に取り、ぱきっと2つに割ってみせる。
「見て下さい、強い火力で一気に焼いたから外側は焦げ焦げです」
「ああ、真っ黒だ……」
「しかも時間が短かったので中は生焼け」
「……」
「オスカー様、どうするんですかー?」
「オスカー様、どう責任取るんですかー」
「あーあー、僕らのまで真っ黒ですよう」
「う、煩い! お前ら、僕の目を盗んで薪を足していただろう! 火力強い方が短時間で焼けるとか相談していたの、知っているんだからな!?」
どうやらオスカー様の失敗は、三つ子の泥を被った形らしい。
とっても残念だ。
俺様に見せかけていじられキャラのオスカー様は、きっちりしている。
ちょっと神経質気味なところがあるお陰か、生地自体は上手に出来ていた。
火力さえ失敗しなかったら、美味しく出来てたでしょうに。
「オスカー様をからかってますけど、3人の作品はもっと酷いですよ」
「「「えっ!?」」」
びっくりした顔で振り返る、三つ子。
な、なんで真顔でこっち見るの?
「なんで!?」
「なんでなんで!?」
「だって僕たち、オスカー様とおんなじに作ったんだよ!」
「「「それなのになんで、オスカー様より酷いの!」」」
「い、一緒に喋るの止めて下さいよ……怖い」
「あ、ごめん」
「えっと、僕たちの何がダメだったのさ」
私は三つ子のクッキーもぱきんと割って、それぞれに断面を見せる。
「ええと、そうですね。まずテディウス様」
「!」
「せっかちさんの性格が出てます。粉を篩う工程飛ばしましたね? それから混ぜる時も丁寧さが足りません」
「ええ!?」
「見て下さい、ダマになってます。これは粉がちゃんと混ざってない証拠です」
「えー……だま? これ、ここ粉だけの塊なの?」
「次に、テーセウス様」
「はい!」
「テーセウス様は面倒がって生地を均一の厚さにしませんでした。だからほら、クッキーの厚みがガタガタです。今は全部黒焦げだからわかりませんけど、このまま焼いても焼き加減にばらつきが出ていたはずです」
「ええー……だって均一なんて目分量じゃできないよ」
「それからセオドア様?」
「う、はい……」
「セオドア様は、他人にちょっかいをかけて遊びすぎです。自分の作業に集中しないから、時間が足りなくなるんですよ」
「な……まさか、ばれた!?」
「ギリギリまで遊んでいるから、生地をちゃんと寝かせて馴染ませる時間がなくなるんです! あと欲張ってトッピングを色々入れすぎです。だからほら、生地に亀裂が入って勝手に割れちゃってるじゃないですか!」
「た、確かに僕のが一番酷いけどー……」
「もう! 3人とも、失敗作の見本として展示したいくらいですよ!」
うん、三つ子のは本当に酷い!
とりあえず失敗作の見本としては典型的かもしれない。
ちょっと他の人たちに見せて注意点を説明しようかしら。
「……まさか僕らを見分けるとは」
「見分けた上に、どれが誰の作品か言い当てるとは」
「しかも性格分析までされてたよ?」
「「「侮りがたし、シェルネリー嬢……!」」」
は? そんなもの、見てたら気付くわよ。
今回もそれぞれが作業するところ見て、絶対に何かすると思ってたのよね。
何か失敗する予感がしたから、後で注意できるように観察してただけよ。
この後も、他の人たちも。
それぞれがそれぞれに、酷かったりヤバかったり。
何とも注意し難い失敗から、簡単なドジまで。
初めてお菓子を作る男の子は、盛大な失敗のオンパレードを見せてくれた。
みんなの作ったお菓子は、酷いものだった。
生焼け、丸焦げはまだ可愛い方。
不気味なアレンジは誰の仕業かな?
ミモザ様はクッキーそのものは生焼けのまま放り出して、アイシングとマジパンを使ったお菓子の飾りにばっかり熱中しだすし。っていうか、なんで初めて作ったマジパンで某電気街で売られているフィギュア並みの繊細造形5頭身のお人形とか作れるの? 逆に器用すぎて引いた。
第5王子様とピートさんは2人して、別のものを作り上げたわ。
クッキーを作れって言ったのに「フライパンの方が早いと思って……!」という謎の主張でホットケーキを完成させるし。それはそれで1つの成功かもしれないけど、『クッキー』としては失敗も良いところよ!
アレン様の失敗は砂糖と塩を入れ間違えるなんて定番のドジすぎて、なんだか逆に和んじゃったわ。素直にへこむ姿にも、なんだか胸がきゅんとした。
そんなことで和むくらい、他が酷かったとも言えるけど。
私はそんな彼らに悪戦苦闘しながら、中々どうして上達しない皆のお菓子を、何とか食べられるレベルまで修正させていく。
確かにそれで、ちょっと仲良くなれたんだけど。
その関係性が『恋愛』というより……『師弟』に分類されるような気がするのは、私の気のせいだろうか。
学校でも粒ぞろいの男の子達に、一目置かれる。
その言葉に嘘はない……ん、だけど。
私が望んでいた方向性に修正するのは、中々どうして骨が折れそうだ。
何なのかしらね、この状況。
本当に、なんなのかしら。
もしも私が前世で重度の乙女ゲーマーとかだったりしたら、絶対に勘違いしていた状況だと思う。
もしかしたらミレーゼ様を、その場合は『悪役令嬢!』だなんて思いこんで凄まじい失態を披露していたかも知れない。
保身に走る私は、そんなことはしないけど。
万が一にも勘違いからミレーゼ様にたてつこうものなら……そんな恐ろしい『もしも』、考えたくもない!
私はきっと、闇に葬り去られる……そんな気がする。
バレンタインで没落メルトダウン、と考えたとき……頭に浮かんだのはパラレル学園もの、だったのですが。
書いてみたら何故かこうなりました。
小林的にも謎仕様です。