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静の姫君と嘘つきの王  作者: うぃすた
王の遠征
45/67

束の間の安寧

今日はじめて、ブックマークとかの見方を知りました!(遅っ

なんだか一杯ついててビックリしました。

登録してくれた方、評価してくれた方、本当にありがとうございます。


嬉しさのあまり、夜更かししてせっせと書きました笑


大分予定より長引いてしまった本作ですが、これからもノンビリ亀更新ながらエンドマーク目指しますので、引き続きご覧いただければ幸いです。


寝台に横たわって、ジークは天井を見上げた。


何時(いつ)もは外す、眼帯は着けたままだ。

それが無駄な抵抗であることは、百も承知だ。

しかし、それに(すが)らずにいられないほど、彼は切羽詰まっていた。


(今日で三日か…)


酒でも入れば違うかと、枕元に用意した寝酒は一滴も減ってない。

むしろ、それで理性が薄れることのほうが、恐ろしく思えて。


ジークは思わず、笑みをこぼした。


恐ろしい、なんて。

この不死の力を得てから感じることが無くなっていたのに。


(皮肉だな…この力…黒狼の心臓のお陰で…俺は…)


一流の使用人によって整えられた寝台は、ふかふかで何かよい香りがした。

連日寝不足の体は、容易く眠りの世界に引き込まれていく。


恐ろしく甘美で、同じくらい哀しい夢の世界に。



「大人しくしててね…」

その言葉に、気を悪くしたように赤い瞳が細められる。

願ったのはそっちだろう、といいたげな眼差し。


(確かに…その通りなんだけどね…)


最初の晩は心配で、次の晩は一人寝の、寂しさに。

レインはこっそりと黒狼を寝台に招き入れていた。

王の大きすぎる寝台も、黒狼にかかれば小さいものだ。

すこしはみ出してしまう足が嫌なのか、最初は嫌がって入ってくれなかった黒狼も、三日めともなれば、すっかり馴染んだように、寝台に寝そべっている。


仰向けで。


その暖かな腹に乗ったまま、レインはこの一風かわったベッドを堪能していた。


するり、と頬を撫でるのは漆黒の毛並みは、上質の絨毯のようだし、大きく脈打つ心音に、レインの体が軽く揺さぶられるのもまた、心地よかった。


(うーん…ふわふわ…気持ちいい…)


思わずぎゅっと抱き締めれば、ふうっと大きな息がレインの髪を揺らす。


まるで人のようにため息をついて、それでも黒狼はレインの好きなようにさせてくれた。


レインは夢現のまま、その暖かい感触にすりよった。

ペロリ、と生暖かい舌で唇を嘗められる。

(くすぐ)ったさに、目を上げて、そのまま固まってしまう。


(また…この瞳だ…)


そわそわと落ち着かない気持ちにさせる、不可思議な青い瞳。


(何故…そんな目で…私を見るの?)


見つめ続ける勇気がなくて、レインは黒狼の胸元に顔を埋めた。

ここにはいない、誰かを思わせる眼差しは消えて、ただ暖かな温もりに包まれているうちに、瞼は重くなっていった。



胸元から聞こえる寝息に、ジークは身動(みじろ)ぎする。

身体を横に倒せば、滑り降りた柔らかな体が、シーツの上に着地した。


「…う…ん…」


その衝撃に少しだけ、眉が寄せられたが、彼女の菫の瞳は、瞼に隠されたままだった。


ジークはほっと一息ついて、寝台に上体を起こした。

微かな月明かりに輝く、漆黒の毛並み。


彼は今、黒狼の"中"にいた。


彼が黒狼の中に入るのは、初めてではない。

ジークの体が、酷く痛めつけられた時のように、修復に時間が掛かるとき。

彼の意識は黒狼に引っ張られる。


ジークはそれを、綱引きのようなものだと考えていた。


しかし、今回のように体が回復しても、無意識下になった途端、引き摺られるというのは初めてだ。


(何故か…なんて分かりきっているか…)


彼女から与えられる抱擁。


無理矢理に理由をつけて、一方的に引き寄せたわけじゃないそれが、これ程に甘美で、離れがたくあるとは。


ジークは、彼女の寝顔を見下ろして、その鼻をぴろりと舐める。

その感触に、彼女が薄く微笑む。


手放しの信頼に、ジークは苦笑するしかない。


(其ほどに、この黒狼に馴染んでいた、ということか…)


ジークは彼女には会っていない。

となれば、彼女にあった黒狼の主は一人しかいなかった。


(シン=ハ様しかいない…)


彼女に祝霊を与えたのも、彼にちがいないだろう。

ジークはその瞳を細めた。

そうであれば。

何故、彼は彼女に祝霊を与えたのか。


(…確認してみるしか無さそうだな…)


ただ今は。

ジークは再び頭をさげた。

彼女の唇をペロリと舐めて、その身体を包み込むように横たわった。


(もう少しで…全て終わる…)


それまでの、ほんの少しだけ。

彼女の温もりに包まれていたかった。



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