束の間の安寧
今日はじめて、ブックマークとかの見方を知りました!(遅っ
なんだか一杯ついててビックリしました。
登録してくれた方、評価してくれた方、本当にありがとうございます。
嬉しさのあまり、夜更かししてせっせと書きました笑
大分予定より長引いてしまった本作ですが、これからもノンビリ亀更新ながらエンドマーク目指しますので、引き続きご覧いただければ幸いです。
寝台に横たわって、ジークは天井を見上げた。
何時もは外す、眼帯は着けたままだ。
それが無駄な抵抗であることは、百も承知だ。
しかし、それに縋らずにいられないほど、彼は切羽詰まっていた。
(今日で三日か…)
酒でも入れば違うかと、枕元に用意した寝酒は一滴も減ってない。
むしろ、それで理性が薄れることのほうが、恐ろしく思えて。
ジークは思わず、笑みをこぼした。
恐ろしい、なんて。
この不死の力を得てから感じることが無くなっていたのに。
(皮肉だな…この力…黒狼の心臓のお陰で…俺は…)
一流の使用人によって整えられた寝台は、ふかふかで何かよい香りがした。
連日寝不足の体は、容易く眠りの世界に引き込まれていく。
恐ろしく甘美で、同じくらい哀しい夢の世界に。
「大人しくしててね…」
その言葉に、気を悪くしたように赤い瞳が細められる。
願ったのはそっちだろう、といいたげな眼差し。
(確かに…その通りなんだけどね…)
最初の晩は心配で、次の晩は一人寝の、寂しさに。
レインはこっそりと黒狼を寝台に招き入れていた。
王の大きすぎる寝台も、黒狼にかかれば小さいものだ。
すこしはみ出してしまう足が嫌なのか、最初は嫌がって入ってくれなかった黒狼も、三日めともなれば、すっかり馴染んだように、寝台に寝そべっている。
仰向けで。
その暖かな腹に乗ったまま、レインはこの一風かわったベッドを堪能していた。
するり、と頬を撫でるのは漆黒の毛並みは、上質の絨毯のようだし、大きく脈打つ心音に、レインの体が軽く揺さぶられるのもまた、心地よかった。
(うーん…ふわふわ…気持ちいい…)
思わずぎゅっと抱き締めれば、ふうっと大きな息がレインの髪を揺らす。
まるで人のようにため息をついて、それでも黒狼はレインの好きなようにさせてくれた。
レインは夢現のまま、その暖かい感触にすりよった。
ペロリ、と生暖かい舌で唇を嘗められる。
擽ったさに、目を上げて、そのまま固まってしまう。
(また…この瞳だ…)
そわそわと落ち着かない気持ちにさせる、不可思議な青い瞳。
(何故…そんな目で…私を見るの?)
見つめ続ける勇気がなくて、レインは黒狼の胸元に顔を埋めた。
ここにはいない、誰かを思わせる眼差しは消えて、ただ暖かな温もりに包まれているうちに、瞼は重くなっていった。
胸元から聞こえる寝息に、ジークは身動ぎする。
身体を横に倒せば、滑り降りた柔らかな体が、シーツの上に着地した。
「…う…ん…」
その衝撃に少しだけ、眉が寄せられたが、彼女の菫の瞳は、瞼に隠されたままだった。
ジークはほっと一息ついて、寝台に上体を起こした。
微かな月明かりに輝く、漆黒の毛並み。
彼は今、黒狼の"中"にいた。
彼が黒狼の中に入るのは、初めてではない。
ジークの体が、酷く痛めつけられた時のように、修復に時間が掛かるとき。
彼の意識は黒狼に引っ張られる。
ジークはそれを、綱引きのようなものだと考えていた。
しかし、今回のように体が回復しても、無意識下になった途端、引き摺られるというのは初めてだ。
(何故か…なんて分かりきっているか…)
彼女から与えられる抱擁。
無理矢理に理由をつけて、一方的に引き寄せたわけじゃないそれが、これ程に甘美で、離れがたくあるとは。
ジークは、彼女の寝顔を見下ろして、その鼻をぴろりと舐める。
その感触に、彼女が薄く微笑む。
手放しの信頼に、ジークは苦笑するしかない。
(其ほどに、この黒狼に馴染んでいた、ということか…)
ジークは彼女には会っていない。
となれば、彼女にあった黒狼の主は一人しかいなかった。
(シン=ハ様しかいない…)
彼女に祝霊を与えたのも、彼にちがいないだろう。
ジークはその瞳を細めた。
そうであれば。
何故、彼は彼女に祝霊を与えたのか。
(…確認してみるしか無さそうだな…)
ただ今は。
ジークは再び頭をさげた。
彼女の唇をペロリと舐めて、その身体を包み込むように横たわった。
(もう少しで…全て終わる…)
それまでの、ほんの少しだけ。
彼女の温もりに包まれていたかった。




