側妃の役割
当初上げていた18話と順番が逆でしたので、修正しました。話が繋がらなくて戸惑った方、もしいたらごめんなさい。
梔子は優秀だった。
半刻後には、すっかり侍女らしく仕立てられたレインは、茉莉花とともに馬車にゆられていた。
「こんなに簡単に出られるんですね…」
思わず呟くレインに。茉莉花は微笑んだ。
「普通の後宮なら無理よね。逃亡したり、密通したりされたら大変だもの」
「茉莉花様は…考えないのですか?」
レインの言葉に、茉莉花は驚いたように瞳を開き、そして窓の外を見つめた。
「考えたとしたら…私の命はないわね」
そしてにこりと微笑む。
レインはその言葉に息を飲んだ。その様子に茉莉花は軽く手をふって否定する。
「勘違いしないでね?これは王が残虐だからってことじゃないのよ。それが為政者の態度だから言ってるの」
「為政者の態度…?」
「信賞必罰ということよ」
茉莉花はレインをその黒曜石の瞳に捉える。
「あの方はそれをよくご存知だわ。だからこそ私達は、王妃様によく仕えることで、こうして自由を戴いてる」
「王妃様によく仕える…王ではないのですね?」
茉莉花は意外そうに軽く目を見開く。
「そうよ。もしかして貴方は違うのかしら?」
「え?」
「陛下直々でお迎えに行ったらしいし、その首のそれ…陛下よね?」
そう言われてレインは思わず、首を押さえて真っ赤になった。茉莉花は声をたてて笑う。
「陛下も人の子ってことよね。王妃様が大事なのは分かるけど、禁欲は辛いでしょうから…やっぱり男ですものね」
そして笑いを納めて、レインを見つめる。
「陛下は私達を迎えたとき、こうお話されたの。子供は望まないと。その代わりに王妃様の盾になれとお願いされたわ」
「それで…よかったのですか?」
レインの問いかけに茉莉花は肩を竦めた。
「陛下は私達が陛下を好きにならないことを知っているの。陛下を愛さないからこそ、私達は側妃でいられるのよ」
その言葉の意味を問いただす前に、馬車がゆっくりと静止する。
茉莉花は小さく息をつくと、レインに改めて艶然と微笑んだ。
「さぁ、お勉強タイムよ。ますは小手調べからいきましょう」
その言葉にひきつった笑みを返しながら、レインは外に足を踏み出した。
馬車の外には、護衛姿のクリスが控えていた。侍女がそんなに沢山いてはおかしいだろうと、レインが着替えている間に、こちらも着替えさせられたようだ。
本来の姿のはずなのに、ちょっとい心地悪そうな弟にレインは思わず微笑む。
「笑い事ではありません、姉上!私の剣の腕をご存知でしょう!?」
小声で抗議するクリスに、レインもやり返す。
「大丈夫。貴方が侍女ってことは茉莉花さまも知ってるんだから、張りぼてでいいのよ。多分ね」
「そ、そこまで言われると複雑ですが…」
もめる二人には頓着せず、茉莉花は御者に何かを伝え、そのまま帰らせていた。
「茉莉花さま、馬車は…?」
「店からは散策しながら帰ると伝えたの。貴方たち、城下町は初めてでしょう?案内するわよ。でもその前に…」
そして一軒の家の前で足を止める。
「用事をすませちゃいましょ」




