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葬送者が終わった日、そして始まった日。

初めまして。文章酷いかと思いますがよろしくお願いします。

葬送者が息絶えたのは、雪の降る寒い夜だった。


森の奥にある廃屋に、一人座り込んでいた。

冷え切った手には、まだ乾き切っていない血がついている。

葬送者。

殺害人数は数千人にのぼる、正体不明の殺し屋。

依頼主にすら、姿を見せたことがない。

性別も年代すら不明。

事件が発覚するたび、マスコミたちが一斉に葬送者の正体を探り、記事を書く。

ある新聞社はこう記事に書いた。

 葬送者は、元特殊部隊の軍人だろうと。

わざわざ犯罪の専門家に見てもらって、その視点を加えて信憑性を上げる。

また他の新聞社は、記事の筆者が陰謀論者なのか

政府が仕向けたクローンなのでは!?と騒ぎ立てた。

だが、どの新聞社も確定的な葬送者の正体を掴めず歯がゆい思いをしていた。

みんな、同じことを思っているだろう。

ああ、葬送者の正体を掴めたら大スクープになるというのに!!と。 


だが、その頃廃屋で座り込んでいる本人すらも自身が何者なのかわからなくなっていた。


孤児院で育って、殴られるからと逃げ出して。

生き残る為に何度も人を殺して。

初めて人を殺してから、何も感じなくなって…。

その後は…。

そこから脳が思考することを拒んだかのように、何も考えられなくなった。

そして、考えようとしたことも忘れてしまった。

その考えようとしたことを、思い出そうとした。

でも、いくら頭を捻っても答えは出てこない。

でも、何故か思考を止めようとは思わなかった。

降りしきる雪を見ながら、何時間も考えた。

何時間も、何時間も…

本当に、どれくらい経ったのだろう。

我に帰った時には、視界が霞んでいて。

酷く眠かった。瞼が落ちるのを止められない。

でも、不思議と心地よかった。

結局眠気に抗えず、瞳を閉じた。


…それが、葬送者の最後だった。


葬送者の息が止まったその頃。


その様子を見ていた、一人の神がいた。


その神は葬送者を本当に哀れに思った。

葬送者には、家族も、何もなかったから。

だから、神は葬送者を転生させることにした。

もう一回転生させて、次こそは幸せに生きられるようにこちら側で少し調整をする。

そうしたら、確実に幸せになれるだろうと。


ただ、その神様というのがどうにもおマヌケさんだった。

記憶を消すのを忘れていたのだ。

その重大なミスに気がついた時には、もう遅かった。

葬送者は、転生をしていた。

母は、未婚の病弱な女性。

母は葬送者に、シャーロット・シルバーヴェイルという名前をつけて、力尽きてしまった。

この日も、雪の降る寒い夜だった。

12月16日。この日、シャーロット・シルバーヴェイルはこの世に生を受けた。

母には、身寄りがいなかった。

だから、シャーロットは街外れにある小さな教会に預けられることとなった。

そこにいる年若いシスター、アナエル・ローランが

母が亡くなってしまったシャーロットの話を聞いて自ら申し出てきたのだ。

生後数ヶ月ごろ、シャーロットになった葬送者の意識がはっきり覚醒した。

葬送者は、混乱した。

混乱して、人生で初めて自分の意思で泣いた。

実際には、泣いてるように見えて混乱しすぎて発狂してるだけなのだが。

その事実を受け入れるまで、数週間かかった。

最終的には、名前もあるしご飯も与えてくれるからいい環境じゃん!!と無理やり自分を納得させる形であった。

親代わりとして育ててくれているシスターは、かなり抜けている性格だ。

よく、料理を焦がすし、裁縫も下手っぴ。

お祈りの時間をすっかり忘れて寝過ごしちゃったりもする、とてもちゃんとしてるとは言えない女性。

シャーロットは最初、

(コイツに本当に世話されて大丈夫なのか…?)

と思っていた。

でも、不器用な分優しさや愛情は人一倍あった。

赤ちゃんの頃から全く泣いたり笑ったりもしないシャーロットにも、分け隔てなく接して愛情を注いだ。

シャーロットは、前世からの能力も引き継いでるから基本なんでもできた。

シスターはシャーロットが何かやってくれる度、大げさなほど喜んで感謝の言葉を伝えた。

「ありがとうね、シャーロット。貴方は本当にいい子ねぇ。」

そう言ってよく頭を撫でた。

そんなシスターに、シャーロットも自然と心を開いていった。

そして、5歳の誕生日の時突然それは起こった。

その日は特に、いつもよりテンションが高いシスター。

シャーロットは、「朝から機嫌が良いのね、シスター。」と話しかけた。

そうしたらシスターは食い気味に返事をしてきた。

「当たり前でしょ、今日はシャーロットの5歳の誕生日よ!」と。

シャーロット、一瞬よくわからなくて反射的に首を傾げる。

「…え?」

シスターが、驚いたように呟いた。

シスターは、シャーロットに恐る恐る尋ねてた。

「シャーロット、貴方まさか。自分の誕生日を忘れてるんじゃないわよね…?」

その一言で、シャーロットはやっと気がついた。

「え、今日ってさ。」

「うん。」

「私の誕生日…だねぇ」

「そうだよぉぉお!!忘れないでよ!!!!」

シスター、大混乱。

「なんでこの子、誕生日忘れるの??自分に興味ないのかしら…」

とブツブツ独り言言ってるシスター。

シャーロットは一人納得していた。

(だから、シスターのテンションがいつも以上に高いのか。ああ、納得。)

お互い自分の世界に入り込みかけている時、オーブンから聞こえた何かの破裂音で二人は現実に引き戻された。

「あれ、なんか爆発した?シスター、何焼いていたの?」と聞いた。

シスターは、「え、もしかして…」とオーブンを開けた。

開けた瞬間、シスターの顔が曇った。

「あぁ〜。また生地が破裂したんだけど!!」

文句を言いながら、ミトンをつけてオーブンから何かわからない黒い物体を取り出すシスター。

「これ、なんですかシスター。」

「…ケーキの生地。」

少し頬を膨らませながら答えるシスター。

シャーロットは、シスター曰くケーキの生地である

黒い物体を見つめた。

どう頑張っても、ケーキには見えないけど。

(むしろ、ここまで黒焦げにするの才能なんじゃない…)

そう思うレベルのゲテモノを作り出したシスター。

でも、流石に頑張ってくれたのを無下にするのもかわいそうなのでできる限りどうにかすることにした。

「シスター、生クリームの材料ありますか?」

「え、買ってあるけど…」

「ならとりあえず生クリーム作りましょうよ。どうにかなるかもしれないですし」

「そうねぇ、なんとかなると信じましょう…」

そう言ってシスターは材料を取りに行った。

その間に、シャーロットはボウルやら泡立て器を用意した。

持ってきた材料を、全部ボールに入れてひたすら混ぜてくシャーロット。

シスターは未だ恨み深そうにその真っ暗焦げな生地と睨めっこしている。

シャーロットは、「睨めっこしてても何にもならないでしょう?さっき苺見かけたので、それ切ってくだいよ。」と促した。

シスターは、その言葉に従った。

苺を取りに行ったシスター。

その数分後ドタドタと走ってくる足音が聞こえて、何事だと思ったらシスターが苺の袋を大事そうに抱えて現れた。

そして袋にゴソゴソと手を突っ込んで苺を掴むと。シャーロットの目の前に突き出して、こう言った。

「見てみて、シャーロット!!ハート型のあったの〜」

さっきまでの不機嫌は何事か。今度はとてつもなくご機嫌じゃないか。

本当に、単純な人だ。本当に、明るくて…

「ふふっ。」

シャーロットが笑った。

シスターの動きが一瞬で止まった。

シャーロットは、何故シスターが固まったのか分からなかった。

どうしたの、と声をかけようとした瞬間…

シスターが抱きしめてきた。

訳がわからなかった。

「シスター。…どうしたの?」

そう聞いたシャーロットの声はどこか震えていた。

シスターは抱きしめる力を強めて、涙ぐんだ声でこう言った。

「シャーロット、今…笑った、よね。」

「え?…」

「笑って、くれたよね…」

「私、笑った…?」

「……」

「私、笑えた…」

「…やったね。」

「やっと、笑ってくれたぁ…」

シスターは涙を流して喜んだ。

「よかったぁ。シャーロット、よかったねぇ…」

シャーロットは、その時シスターの涙を初めてみた。

「シスター…」

「…ごめんね。本当はね、怖かった。シャーロット、全く笑わないし泣かないから…」

「でも、ずっと信じてた。いつかきっと笑ってくれるって…」

「シスター…?」

シャーロットの声は震えていた。

シャーロットは産まれて初めて、涙を流した。

シスターは、頭をゆっくり撫でてくれた。

何も言わなかった。けれど、その無言が何より優しかった。

シャーロット、いや、葬送者はようやく幸せになれたのだった。


ありがとうございました!!

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