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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ショートストーリーズ

ショートストーリー おにんぎょうさん

作者: 遠部右喬

 あたし、お人形さん。


 ねえ、ご主人様はお人形さんのことを、どれくらい知ってるかしら?

 大昔のお人形はね、誰かの身代わりに作られたんですって。その頃は、人型っぽく削った木切れとか、土を丸めたのとか、藁なんかで作った粗末な物ばっかりだったの。それで、作ってくれた人の身代わりに厄を引き受けて壊される。それがお役目だったんですって。怖いわね。

 けどその内、もっともっと人に似せたものが作られるようになったの。きっと、人に似ていれば似ているほど、厄を移しやすいって考えたんでしょうね。顔も丁寧に描かれて、ちゃんとした手足や身体も作られるようになって、お化粧したり、綺麗な着物を着せたり……何なら、そこらの人間よりよっぽど綺麗だったりね、うふふ。

 そうなると当然、壊すのが惜しいって思う人も出て来るでしょ? お人形は壊される存在から、愛でられる存在に変わって行ったの。ほら、お雛様なんて分かり易い例よね。

 綺麗なお人形は、女の子達の格好の遊び相手になったわ。外国のお人形さんも素敵よね。金髪のくるくる巻き毛やフリルが沢山のドレス。ちょっと羨ましいなって思う。女の子はみんな、綺麗なものが好きだもの……あら、ごめんなさい。今時、女だ男だって拘るのは、良くなかったわね。そうね、誰だって綺麗なものは好きよね。あたしだって、綺麗なものは大好きだもの。

 けど、あたしは違う。大事にされて愛でられる為のお人形じゃない。

 ほら見て。髪型も、この服も、ご主人とお揃い。身体の大きさまでそっくり。顔だってよく似てるもの。当然よね。あたしはご主人の為に拵えられたんでしょう? 前にそう教えてくれたこと、ちゃんと憶えてるわ。ご主人を守る為の存在、それがあたし。

 ね、ご主人様。久しぶりに抱っこして欲しいな。

 ……ありがとう。でもどうしてそんなに震えてるの? どこ見て……

 ああ、あれ? 気にしないで、ただのお父さんとお母さんだったものだから。

 だって、あたしはご主人の厄を払う為の存在だもの。今までちゃんと、ご主人の代わりに殴られたり蹴られたりしてきたでしょ。凄く痛かったけど、しょうがないわよね。

 けど、昨夜聞いちゃったの。あれ……お父さんとお母さんが、「一年経った」「保険金」って嬉しそうに話してるのを。ご主人が危ないんだって、すぐ分かった。お人形だって、そんなに馬鹿じゃないんだから。だから、厄を払わなきゃって思って。

 ね、ちゃんとお役目を果たしたの。褒めてくれるでしょ?

 でもね、本当はあたしも分かってるの。

 あたし、お人形じゃないんだって。

 あいつ等も言ってたもの。「二人分」って。

 どうしたの? 何でそんな顔をするの? ほら、ちゃんと抱っこして。じっとしててくれないと、うまく紐が掛けられないじゃない。何をそんなに謝ってるの?

 あら、漏らしちゃったの? 折角の可愛いお洋服が台無しよ。しょうがないわね。

 まあいいわ。今度はあたしの代わりに、ご主人がお人形になってね。いいでしょ?

 ね、ご主人様……ううん。

 お姉ちゃん。

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