己が目指す道
今回長めになっておりますが、単に余計な説明文があるだけで、話自体はあまり進んでません。その辺は無視して貰っても問題ないのですが、この世界の魔術は便利そうで不便なものとなっていますので、読んで頂ければより世界観を楽しめると思います。多分。
では、どうぞ続きをお楽しみ下さい。
瞼を刺激する光で、朝が訪れた事を自覚する。昨夜はほとんど眠れなかったせいか体は気怠く、しかし意識は鮮明としていた。
ベッドから身を起こして時計を見ると、やはりいつもより早い時間。が、もう一度眠る気など、これっぽっちもない。
相変わらず私の状況など関わりなく、世界はしっかりとその針を回してくれる。
できればもう少し私に優しい世界であってほしいと願うのは、思春期特有の我が儘か、それとも稀有な経験をしてしまった不幸な人間の切なる願いか。
徐に左手を右肩に当てると、寝間着の隙間から感じるゴワゴワした布の感触。
その原因と、ここまでに至る経緯を思い浮かべるだけで、胸の中でとても不快な何かが渦巻いてきた。
「ムカつく……!」
呟いた言葉は紛れもなく今の私の胸中であり、眠れぬ原因でもあった。
思い出したくもないが、思い出さずにはいられない。
あの、昨夜の出来事を。
青年に胸倉を捕まれ、身長差から足をプラプラさせていた私は、やがて沸々と怒りが込み上げてきた。
何故私がこんな目にあわなくてはならないのか。
何故私が怒られなくてはならないのか。
何故私が殺されかけなくてはならないのか。
事情の説明も無しに怒りをぶつけてこられても、こちらとしても理不尽への反感しか生まれてこない。青年は先の一言から何も言ってこないし、私は怒りで返答してやる気も失せている。
しばらくの沈黙と睨み合い。そうして先に折れたのは、青年の方だった。
「こんな時間まで何をしていた」
本当に渋々、嫌なんだが折れてやると言わんばかりの態度だった。
「図書館で頼まれた資料整理をしてたのよ」
なんか文句あんのか? という思いを言外に込める。それはもう、ありったけに。
そんな態度を読み取ったのだろう、こめかみを震わせる。
「キャッ!?」
突然、青年が掴んでいた手を離した。足が浮く程の高さからほうり出され、私はまた尻餅を付く。
「いたた……」
今といいさっきといい、こいつは人を何だと思ってるんだ。
痛むお尻をさすりながら青年を睨む。あまり表情は変わっていないが、ほんの僅か、笑っているような気がした。
こいつ……、絶対性格悪いな!
この時感じた思いが間違いではなかった事に気づくのは、もうしばらく後の話。
「もう下校時間はとっくに過ぎている。ぐずぐずしてないで早く帰りなさい」
私を見下ろす冷たい眼差しと共に、まるで教師のような物言い。
怒り心頭の私は、早速その言葉に噛み付いた。
「言われなくとも帰るつもりだったわよ! いきなり訳のわからない事を言われて殺されそうになって、そしたら突然目の前で殺し合いを始め出した貴方が言う!?」
事情の説明ぐらいあって良さそうなものだが、青年は早く帰れという。なんと勝手な。
聞きたい事は山ほどあるが、こいつと一緒にいる方が精神衛生上、悪影響を及ぼしそうだ。
「ええ帰るわよ。二度と会うこともないでしょうよ、さようなら!」
もはやここには一分一秒いたくない。
そして立ち上がって歩きだそうとした私を、痛みが襲った。
「っつ……!」
男に踏み付けられた肩が、今になって痛みだしてきた。強い鈍痛に思わずうずくまる。
「怪我をしたのか?」
相変わらず感情のない冷めた声。
あんたの世話になんてなってたまるか、と敵愾心を顕わに黙秘していると、青年が私の左腕を取った。
「来なさい」
ただそれだけを告げ、強引に引っ張っていく。それで肩がさらに痛もうがお構いなしに。
「や、ちょっ、痛いって!」
そんな私の抗議など聞こえないかのように、無言で足を進めていく。掴む手の強い力に、私は為す術もなく連れていかれた。
向かう先は知っていた。そこは医療科の校舎だった。
メレトンは科によって校舎が別れる。
軍属科、研究科、技術科、医療科、普通科の五つの校舎があり、各棟の中身は科専用に細かく調整され、別の科とは共有されない。ただし、申請すればその限りではないが。
そういった理由から、ここが医療科だとは知っているが、足を踏み入れるのは今が始めてだったりする。 青年は施錠された鍵を開け、遠慮もなくどんどん進んでいくが、こちらとしては気が気でない。
この建物に入るのは始めてで、何より許可を得ていない。
医療科や技術科など、専門的な技能を必要とする科には、不用意に第三者を立ち入らせないように決められている。研究物や製作品を損なわれては敵わないという事だろう。
研究科は理論構築を主眼としている為、そういった許可申請は必要ないが、新理論が発表される事で多大な利益を得る可能性もあり、実際の研究を行っている区画においては警備体制は前者の二科よりも遥かに厳戒だ。
だから私にとっては第三者の警戒は他人事ではなく、何か問題が起きた場合どうなるかも一応の知識はある。
よくて長期謹慎。悪くて退学。
謹慎など食らっては自活に大きく影響するし、勿論学費もタダじゃない。退学に至っては、人生最大の汚点となるだろう。何より、送り出してくれた家族に申し訳が立たない。
ビクビクする私を引っ張りながら、青年は勝手知ったるとばかりに廊下を進んだ。
やがてたどり着いたドアの施錠を解き中に入る。薬品の匂いが一層強く感じるここは、どうやら医務室のようだ。
青年は室内に設置されている紋様ランプに明かりを灯し、キャビネットの中を物色し始めた。
ちなみに紋様ランプとは、その名の通り紋様魔術を用いて明かりを灯すランプの事である。実はこれが出始めたのはここ数年の話で、まだ一般的とは言い難い代物だったりする。
元々、紋様魔術とは人が使う事を前提とした魔術であって、自律的に動作する物ではない。刻まれた魔術は魔術の土台の役割を果たすだけで、起爆剤となる魔力は流し込まなければ発動しないのだ。さらにいえば、魔力の供給を止めた時点で魔術が止まってしまう、完全に手動の物だった。
そして紋様魔術が刻めるのは、一つの媒体につき一種。魔術文の法則性の関係で一動作という意味でもあり、例えば明かりの魔術の場合、
一、魔力を集める、
二、その魔力を光の属性に変換する、
三、魔術を行使し明かりと成す、
という三つの動作が必要となる。そうなると媒体が三種必要となるのだが、人が介在しているのならば一と二は必要ない為、最後の三、つまり発動の部分を書き込むだけでいい。
だがやはりそれだけでは利便性に乏しい。強大な魔術を全く同一の力で幾度も行使する必要があるならともかく、光を灯すだけならば何もわざわざ魔術を使わなくとも、火を起こせばいいだけの話だ。
しかしある日、そんな不完全な紋様魔術に、大変革を起こす理論が発表された。
媒体間の魔力譲渡の技術。
今まで魔力を集める紋様を刻んでも、それは媒体に魔力が集まるだけで、別の媒体が利用する事は出来なかった。つまり、前述した魔術は、例え三つの媒体を用意しようとも完成型には成り得なかったという事だ。
だが、この新技術の恩恵により、紋様魔術はその可能性を大きく広げる事となった。
その為、研究科でも紋様魔術は今現在、最も注視されその発展を期待されている。今は媒体に複数の魔術を刻み込む研究が各地で行われている事だろう。
さすが医療科というべきか、設備には気を使っているようで、ランプの光量もそこいらの物とは違っていた。
真昼のような明るさの下、物色する青年の物音以外静かな場所で、私はぼんやりと立っていた。恐らく興奮状態から冷め、沸きだした痛みと熱に浮かされていたのだろう。
本来なら座っていたかったが、迂闊に手を触れないほうが良いとの強い思いが、私の行動を阻害していた。
やがて青年が目的の物を見つけだしたのか、小さな箱と幾つかの薬瓶を持って、キャリー付きの机の上に置く。
そして、呆然としていた私にこう言った。
「服を脱げ」
しばしの沈黙。訪れた静寂。固まる空気。
「なっ」
熱で鈍った思考が、その意味を遅れてようやく読み取った。
「なななっ!?」
正常な判断は出来ていなかったのかもしれない。ただ服を脱ぐという一面だけを、強烈に意識する。
「何言ってるの!?」
その予想を超えた展開に、私は思わず自分の体を掻き抱いた。
そして今の状況を改めて認識し、いかに己の身が危ないのかを理解した。
誰もいない夜の校内。目の前には明らかに自分よりも強い男。室内に二人きり。弱っている自分。
羅列された情報を思い浮かべていく度に、絶体絶命の文字が色を帯びていく。
警戒心をあらわに、青年を睨みながら一歩後退ると、青年は私を見ながら盛大に溜息を零した。
「下らない勘違いをするな。本来であれば貴様の裸など見たくもない。そもそもこの場所を考えて、合理的に判断しろ。貴様はそれでも研究科の生徒か」
少し前までは寡黙な雰囲気だった青年は、流れるような口調でそんな事を宣った。
「んなっ」
人を小馬鹿にした物言いに、更なる血液が頭に上る。
そもそも私は手当てしてくれと頼んだ覚えは微塵もないし、ここにだって無理矢理連れて来られただけだ。加えて肩が痛いにも関わらず、遠慮もなしにぐいぐい引っ張るし。勘違いしたのも熱でぼんやりしていただけで、人に正確に物事を伝えたいならば主語を抜かすんじゃねえこのやろう。
出来るならばそう全力を込めて怒鳴りつけてやりたいところだったが、思ったよりも体力を消耗しているのか、気怠い体がそれを拒否した。
「右腕は上がるのか?」
疲労した様子は向こうからも読み取れるのか、再び小さく溜息を零して尋ねてきた。
今気がついたが、右腕が持ち上がらない。
肩にはその存在を強めるように、鈍痛が居座っている。
「折れてはいないだろうが、恐らくひびが入った筈だ。このまま放置すれば、暫く熱と痛みで寝込む事になる。構わないというなら今すぐ帰れ。私も手間が省けて助かる」
その物言いは気に入らない。何処までも、果てしなく、出来ることなら張り手の一つでも見舞ってやりたい程に。
だが、寝込むのは困る。残念ながら私には寝込んでいる余裕などない。
だから私は、仕方なしに、渋々、断腸の思いで机の側にある椅子に座った。そして、着ている制服に手をかける。
右腕が動かないがなんとかボタンを外し、シャツを脱ぎ、下着だけとなった上半身を外気に晒した。
異性に肌を晒すなど、生まれて初めての体験だ。無論、医者を除いてだが、こいつは医者じゃないし。
動く左腕でせめて、と下着を隠す。
「ふ……」
と、軽く笑い声。
「ちょっと待って。何故笑った。何がおかしかった。笑う要素が何処にあった!?」
「気のせいだろう」
「だったらなにその意味のわからない笑顔は! 全く持って意味がわからない! 何故見下したような笑顔なのよ!」
「だから気のせいだと言っている」
なんだ、おかしいのは私か? だがこの無表情男の口許が微かに持ち上がった気がしたのは何故だ。
「まあいいわ。さっさと治療して」
「それが人にものを頼む……、いやいい。さっさと終わらせる」
溜息を零して言葉を飲み込み、肩の治療を始める。
手際はよかった。薬品が染み込んだ布を当て、包帯を巻き、固定する為の紋様魔術を刻んだ布を更に巻く。
残念な事に、この世界では魔術を用いた医療はあまり進んでいない。人の手による医術の方が、魔術より遥かに効果的だったからだ。これは魔術の特性の上仕方のない事だったりする。
魔術は基本的に物体に対し直接影響を及ぼす事が期待出来ない。これは効果がない、という意味ではなく、望む効果を得られにくい、という意味だ。
瞑想魔術は前述した通り自身の想像を具現化するもので、治療や治癒とは異なりその根本は創造。切り取られた腕を瞑想魔術で代替する事はできなくないが、医術とはやはり異なる。
そして以前、紋様魔術を医療で応用出来ないかとの実験が行われた事があった。負傷した人体に紋様を施し、本来の形に戻そうとする手法が用いられた。
だが実験は失敗。被験者は負傷した一部を紋様ごと切り取らねばならない事態となった。
元々人の体というものは常に変化し続けている。それは肉体のみならず精神もまた然り。
では本来の形とは、一体どれなのだろうか。絶えず変化する存在は、一瞬の後には違う存在となる。
そうして一定の形に押し止めようとする(戻そうとする)術によって肉体に齟齬が発生、被験者は体の一部が壊死してしまった。
紋様魔術は一つの媒体に一つの魔術のみ。これは人体においても勿論変わる事はない。
人の体を癒すには、怪我の修復、損壊した肉の補充、そして変化する肉体への順応を行わなくてはならないのだ。
紋様魔術で人体の修復を行うには、最低でも複数の魔術を複合させる事が出来なければ、魔術が目指す完成型には至らない。
故に魔術による医療は、課題が山積みとなってそびえ立っている。
しかし、魔術で傷は癒せない、という常識も存在していない。
その影響は詠唱魔術による。
恐らくこれが最も医療に有効な手段となるのではないかと言われている。
詠唱魔術は、言ってしまえば祈りと同義。世界に願い、そして世界が許容する限りその奇跡が起きる。
ならば傷を癒せと願うなら、世界が許容する内なら叶うのではないか、という理屈の元の考えだ。実際に、その手法を用いて治癒術を行使した前例もあった。
だが、そう簡単に望むべき境地へ辿り着く訳はない。
まず万人に扱えず、その時々によって効果に差があり、更に施される人間によってまた効果に差が生じる。そんな不安定なものに命を預けられる訳がない。
不安定の理由は、世界が何処までそれを許すのか、明確な基準が判明しないからだ。
詠唱魔術は場に漂う魔力を用いるが、それはあくまで言霊に力を与え、世界に伝わる声と成すだけ。その後の影響は、世界が決める。
如何なる法則があり、どのような因果関係が存在するのか。事が事であるだけに、そう簡単に人の命を天秤に賭ける訳にもいかない。
今後数千、数万を生かす為に、それまでの数え切れぬ命を捨てるのであるならば、本末転倒以外の何物でもない。
だからこそ常に研究は続けられ、より高みを目指す。人々の探究が尽きるのは、まだまだ先の話だろう。
とはいえ、医療において魔術が全くの無能という事は、当然ない。
紋様魔術は、流石にあらゆる可能性を秘めた技。医療においても様々な研究が進められている。
程度はあるが、打撲や切り傷ならば短時間で治療できる技術は確立されていた。
単純に言うならば肉体の活性化。包帯などに紋様を刻む事で肉体を刺激して新陳代謝を促し、治癒時間を大幅に短縮させる事に成功している。
紋様を刻むだけで、残る魔力は本人からの供給で構わないのだから、手軽にも関わらず効果は高い。研究が進めば、更に高い効果を持った医療品がいずれは登場するのかもしれない。
だがそれはいずれの話であり、今ではない。
「い、いたたた! ちょ、ちょっと、もう少し優しく出来ないの!?」
だから彼の慣れとは関係ない、乱暴な治療にも我慢しなければならなかった。
「騒がしい。少しぐらい耐えられないのか貴様は」
私の背後に回った青年の苛立たし気な声色は、同様に私の敵対心をモリモリ膨れ上がらせてくれる。
冷静に考えれば彼は命の恩人となっていた筈なのだが、この態度と口調にそんな事は明後日の方角へ完全に消え去ってしまっていた。
痛み止めの錠剤を水で飲み込み、固定された事で幾分痛みも和らいだ。
ようやく頭も冷え、若干の余裕が生まれた私は、服を着ながら薬を戻す青年の背中に問い掛けた。
「ねえ、さっきの事なんだけど」
「死にたくなければ忘れておけ」
私の言葉を遮るように青年の声が重なった。私を見ず、背中から感じる気配は拒絶。
「夜はここには近づくな。それだけで、今までと変わらない日常に戻る事が出来る」
「はいそうですね、なんて答える訳無いでしょう。私は殺されかけたのよ!」
あんな理不尽な出来事に遭遇して、黙ってなんかいられない。
「ではどうする。満足に抵抗も出来ず無様に殺されかけた貴様が、あの男と戦うのか」
それは恐らく無理だろう。私は戦闘魔術師ではない。戦い方なんて知らないし、そもそも戦いに向いてるとも思わない。
「それにノコノコ出て来られても目障りな上に邪魔だ。気が散る。わかったら大人しく引き下がれ」
「く……」
確かに私は満足に戦うことすらできなかった。今回は幸運だったに過ぎない。けれど、何も知らずにいるのは納得できなかった。
聞きたい事は色々とある。あの男は誰なのかとか、あんたは一体何者なのかとか、どうして私が狙われたのかとか。ただ聞いたところでこの青年は答えてはくれないだろう。彼の言動は、このまま私を日常へと帰そうとしている。だが、それは私の身の安全を考慮してのものではなさそうだ。現に、彼の視線からは未だ、敵意の気配が消えていない。
言いあぐねて口を噤む、そんな私に冷水を浴びせるかの如く、青年は決定的な一言を放った。
「貴様が死んで悲しむ者の事を考えろ」
流石にこれにはぐうの音も出なかった。
もし私が何者も比類なき力を持つならばいい。だが今の私はともすれば、あっさりと命を断たれる程度の実力しかないのだ。己の命を己の力で守れぬ者は、危機に立ちはだかる資格すらないのだと、内に含まれた意味が私の心を抉る。
言葉によって導き出された、様々な人々の顔。その人達の涙を思い浮かべるだけで、微かに胸が痛んだ。
「理解したのなら帰れ。もう貴様がここにいる意味はない」
彼の言うことは間違いないだろう。もはや彼からは何も聞けず、居座ったところで新たな情報は手に入らない。
痛み止めがまだ効いていない痛む体を動かし、私はふらつきながら立ち上がってドアへと向かう。
「くれぐれも余計な考えは起こすな。貴様が何を思おうとも、役立たずは必要ない」
それは意気消沈した私に止めを刺すつもりだったのだろう。
「忠告は有り難く受け取っておくわ」
それだけを言い残し、私は静かにその場から立ち去った。
固定されている紋様布をそのままに、ゆっくりと肩を動かす。薬剤が効いたのか、負荷をかけるとやはり痛むが、耐えられない程ではなかった。
昨日何があったからとて、世界は変わらない。今日も明日も、学ばねばならない事が私を待ち受けている。
そう、本来であれば余計な雑事に関わっていられる余裕なんてない。
ベッドから下りて姿見の前に座り、鏡の向こうにいる私の目を見つめる。顔に浮かぶのは笑み。だが瞳に宿す意志の強さは、私自身をも驚かせる。
「でも、私はやられっぱなしでいるつもりはないのよ」
知らないことがあった。だが、それを知るには力が必要だった。そして私は探求者。知らない、で済ませるつもりもない。
命の危機が何だ。足手まといがどうした。実に簡単な話だ。力がないなら、手に入れればいい。
残念な事に、私は負けず嫌いなのだ。