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(ディア5):あの未亡人

「相手の意識を奪うのって、どうやればいいんでしょうかね?」

 冒頭から問題発言をする13歳女子に、アヤナとディアは少し目を背けてしまった。

 モニカは慌てて弁明する。

「ちっ、違うんです! これ本編に関することなんですって!」

「そうなのかしら」

「そうですって。ただ『人間の意識を奪う』って、どれほど大変か、あるいは大変じゃないかが知りたくて。コレは殺さずに、ですよ?」

 ディアは肯く。彼女のポニーテールは謎のテクノロジーにより、彼女の気分と連動している。そんなディアはアヤナを見た。

「えっとさ。物理的なのは私が教えられるけど、魔法関係とかではアヤナが詳しいでしょ? 威力とか経験はともかく、座学では」

「そうね」


 するとディアとモニカが、拳を高く突き上げた。

「「教えて、アヤナ先生!」」


「あ、はい」

 既に押されているアヤナだった。




挿絵(By みてみん)




「じゃあまず。魔法関連での色々があるけど……実はアレ『眠れ』って言う魔法は少ないの。つまり『何かやったら眠っちゃった』的なのが多いわね。暗示かけたりもあるけど、やっぱ緊張状態の人間には効きにくくて」

「へぇ」


 アヤナは言う。

「一番安全なのは『自律神経を落とす』こと。相手は普通に眠る。これは普通の睡眠。だからそれで死ぬことはないし、むしろ快眠だけど。でも他の人間が目の前にいる状況じゃ、そんな簡単に寝るはずはない。だから戦いでコレは使えないわね。後ろから隠れながらとかで、ゆっくり自律神経を落として。そうすると居眠り→睡眠になる」

「なるほど」

「コレは暗示とか催眠とかもこういうのに区分されるけど、やっぱり緊張している相手には眠らせるほどにはいかない。むしろ睡眠導入とか、兵士の緊張のしすぎの緩和とか、そっちに使われるかな」

 モニカはぱちぱち手を叩いている。

「おー!」


 アヤナは続ける。

「次。空気や食べ物・飲み物などに、安全な化学物質を混ぜて眠らせる。でもこれもゆっくり効く睡眠薬のような感じで、興奮している相手とかには効きにくいし……そもそも睡眠薬を飲みすぎると死ぬんで、量が多いとやっぱり危険。下手すると死ぬ」

「えぇ……」

#現代日本の睡眠薬(精神安定薬)は、単独では死ににくいタイプがほとんどですが……だからと言って絶対に死なない、ってわけでは。


「次。酸素を奪う。コレはレオナール城でウェインがやったわね。目に見えないし屋内専用で、そして味方や自分を巻き込んでしまう危険性があるけど……これは確実に失神させることができる」

「おぉ!」

「ただすぐに酸素を供給させてやらないと、やっぱ死ぬ」

「……」


「次。危険な化学物質を混ぜて眠らせる。これは一番ラクではある。速攻で眠らせるというか気絶させられるけど、死んだり後遺症が残ったりもする。ヘンな匂いがする場合がほとんどなのと、やはり屋外では空気中に『散って』しまい、やりづらい。自分が風上にいて相手が風下なら、相当頑張ればなんとかなるかも」

「でもこれ、安全な……はずはない、ですよね?」

「死ぬ」


 アヤナはポンと手を打った。

「そうだ。あと一酸化炭素もあるわね。無味無臭で色もついてないんで、気づかず……」

「……」

「死ぬ」


 そこでモニカは恐る恐る手を上げた。


「じゃあ魔法を使わない場合はどうです? 例えば、よくソレものの動画にクロロホルムとかあるじゃないですか」

「んー。アレ麻酔としてもたいしたことがなくて、わりと毒よ。皮膚とかに付着するとやられるみたいだし。最悪死ぬ」


 モニカは(何故か)肩を落としている。

「なんか、死んでばかりですね……打撃で眠らせることってできないんですか?」


 ディアがちょこちょこ手を上げた。

「わりと有名なのはあるよ」

「おお! そうなんですか? 打撃って私は専門外ですが」

 ディアは肯いた。

「脳震盪。ボクサーのパンチとか。いやパンチでなく頭部に直撃させれば何でもいいんだけど。厳密には少し違うかもだけど、イメージとしては脳を揺さぶって、意識を失わせる。痛いってよりはふわーんとした感じで気絶するんだって」

「安全なんです?」

「下手すると死ぬ」


 モニカは割とオロオロしている。

「花京院がジャンボジェットの中で『当て身』とか言って、敵のスタンド使いの首の後ろをトンってやったみたく、軽いノリでいけませんかね」

「いやアレ結局気絶させてないし……そもそも首の後ろへの衝撃なら、かなり強くやらなきゃダメね」

「……安全性は?」

「下手すると死ぬ」


 モニカは頭を抱えている。

「じゃあ絞め技! ウェインさんもやってましたが、チョークとか? あとは、柔術系の絞め技はどうなんです?」

 ディアは次々答えていく。

「んー……まあ柔術系は、一応は活殺自在を謳っているし、脳への衝撃とかよりは比較的安全なほうではあるけど……」

「……ど!?」

「最悪死ぬ」

「じゃあスタンガンは!?」

「性能によるけど、最悪死ぬ」

「睡眠薬をお酒であおったら!?」

「普通に死ぬ」


 モニカは悔しそうだ。

「ウチってファンタジーじゃないですか!? HPが1でも残れば生きてる……そういうのないんですか!?」

 ディアも付き合うようにしょんぼりしている。

「そうねぇ。んー。でもウチは割と簡単に死ぬからねぇ……。ほとんど(?)生き返らないし(多分)」


 アヤナはポンと手を叩いた。

「モニカ。人間って生きてくのに『水』が必要よね」

「はい。ほぼすべての生物が水を必要としているはず」

「その『水』だけど。実は……」

「……」

「飲みすぎると死ぬ」

「ええええええ!? マジです?」

「マジよ」

「……」

「『水中毒』」

「そんなん、お酒の一気飲みのような軽いノリで……!」

「水も。用法・容量を守って正しく飲むこと」

「マジすか……」


「あとモニカ。人間には『酸素』も必要よね?」

「ですね」

「実は酸素も……摂りすぎると死ぬ」

「げぇっ!?」



 そしてアヤナは続けた。

「肉体だけではないわ。精神状態によっても、ある意味で死ぬ」

 ディアが肯いた。

「キルケゴールね。『死に至る病』」

 モニカが後退りしている。

「でぃ、ディアさん。それって難しい系の本では?」

「うん。難しかったよ。二回読まないとわからなかったし」

「ぅ、うっす……」

「あとあれウチの国で訳されてなくてさー。ユニバーサル規格の言語で読んだから、なおさら難しかった」


 流石にアヤナも後ずさっている。

「マジデスカ?」

「ん? 何をカタコトになってるのよアヤナん?」

「ディアってひょっとして……頭良い系?」

「いや、良くはないよ」

「本とか手紙、好きなの?」

「あ、それは大好き。私ってポイントが世間からズレてるみたいけど」

「何か書いたりは?」

「うん。好きだよ。昔、割とラブレター書いてたし」


「「おおおぉおぉ……!」」


 モニカがちょこちょこする。

「ディアさんディアさん。どんなラブレター書いてたんです?」

 ディアは嬉しそうに肯く。

「いっとー情熱を掛けて書いたのがさー。『主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました』ってやつ」

「「え」」

「ん?」


 アヤナとモニカはぶっ飛んだ。

「アレ書いたのディアだったの!?」

「ラブレターじゃなくスパムじゃないですか!」


 ディアはポカンと口を開けている。

「え。あれ割と渾身の一作だったんだけど」

「オオアリクイなんて、アリアハンに生息してるだけじゃないの!?(偏見)」

「ってかあのスパムの差出人『久光さやか』って名前……」

「うん。私のペンネームだよ」

「(ディアってどっかで執筆活動してるのかしら)」


 ディアのポニーテールがぴょこぴょこした。

「でもまあ、人間は逃げないと、オオアリクイにやられても死ぬってことよ」


 その言葉、そのものではなく。

 アヤナとモニカは『ディア、こええ』とか思っていた。


 アヤナが腫れ物を触るようにキウ。

「……じゃあさ。逆にディアが難しい、って思った本は?」

 ディアは軽く肯く。

「エリック・カール『はらぺこあおむし』」

 モニカが呟く。

「それ最強の絵本じゃないスか」

「いやアレは読み解けない。あまりに難解。フェルマーの最終定理ばりに、人類が子孫代々引き継いでいく作品。数百年は解けない」

「そうなんスか……」


 アヤナは聞く。

「じゃあディアが面白いって思った本は?」

「フッサール『現象学の理念』。アプローチが面白い。富野由悠季『機動戦士ガンダムF91』。もっと強く「スウェッセム因子」を押しとけよこの野郎。綾辻行人『十角館の殺人』。なんか昔どこかで読んだ気もするけど、日本産だし安心かな。聖書と新約聖書と資本論。人間が色々やるきっかけだから」


「……ディアってなんだか、凄いわね。色々と」

「そう? 面白いから読んでるだけでさ。そうそう。ユニバーサル言語で読むのとエアタズム語で読むのとで面白さが変わる時もあるよ」

「そうなんだ」

「エアタズム語での綾辻行人・訳『十角館の殺人』は面白かった! でもアレ昔に、ユニバーサル言語で読んだのとタイトル違うのよね。昔の海外のやつが初版なの? 違うっけ? なんだったかなぁ……」

「あーーー!!! あああああああ!!!!」


 ディアは肯いた。

「でもほら、こんな感じで色々と緩くやらないと、人間はやっぱり死ぬ(主に社会的に)わけよ。ほら、オマージュならいいけど、私達って基本はパクり……」

 アヤナは毅然と言い放つ。

「パロディ、です! あるいはインスパイアとか!」



 一方モニカは。

 『そもそも死ぬ・死なない』とかじゃなく『意識を失わせる方法』を聞いてたんですけどね……とか思ってたけど、お姉さんたちがキャッキャ・ウフフしてるのを見て、何も言えなかった。



#ちなみに、キャッキャ・ウフフだと見えているのはモニカの主観です。





画像のテストも兼ねてます

「iN2X」というところのAI生成ソフト・アプリにて作成した画像です

「iN2X利用規約(第5条第2項)」を読んだけど、他で使うなとは書いてない(第三者に被害を与えるとかはNG)ので、他で使えるの?って質問したら「書いてある通りです、明確な回答せずにごめん」みたいな軽いノリで来たので、「商業使用しない」「第三者を傷つけない」「削除要請などがアレばすぐやる」と言って、貼ってみました。

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