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お前を異世界に配置する①


  気づいたら、中世ファンタジーっぽい世界の村の入り口に立っていた。

 目の前にある村はいかにも始まりの村のようだった。


「よし、入ってみるか……いやまてよ!」


 どうせ自分からすれば、ここが最初の拠点になるのだから思い切って訪ねて行き、情報を得てからどこに行って何をすればいいのか決めれば良いはずなのに。


 

 俺は転生してきたばかりで14の中二だ、それは覚えている。

 何者かといえば、どっかの地球の日本人。それも覚えている。


 昭和の時代に生まれた中坊は、近所の公園でいつものように紙芝居のおじさんの出題するなぞなぞを楽しんでいたはずだった。


 村の傍に降ろされる前に一人の神様に会っていた。

 その詳しい内容を思い出せるか、もう一度、簡単に頭の中を整理しておこう。


 公園で紙芝居のなぞなぞに集中していると、耳に謎の声が届いた。

 下半身は薄っすらとしていて身長はよく分からないが、若い顔だった。

 すぐ転生について語られると自分が死んだことを悟らされる。


 目の前の神様とともにあっと言う間に雲の上まで来ていた。

 ふしぎと体に不安はなかった。


 なぜ俺は死んでしまったのか。

 何が起きてこんな若い身空であの世へ行くのだろうか。


 続いてギフトというものを貰った。


 でも横文字は大の苦手だから脳みそが理解を拒んで恐怖でベソをかいた。

 いきなり身体がゾクゾクしたかと思うと、気持ちがぶっ飛んでいく気がしたのだ。まるで別人に成るかのように。


 すると神様はそれは超能力で、お前の思いつく限りのことができるヒーローの力だと説明し直してくれた。

 その折の死に対する恐怖はなかった。すべて神様が打ち払ってくれていたのだ。


『お前を異世界に配置する』

「突然なんなの?」

『要するに……ゲームの駒だ』


 ゲームというと野球盤とか、人生のボードゲームとかだろうか。

 もしかしたら、あの小むずかしい将棋の駒かもしれない。


 『これ、何という仏頂面をしておるのだ』


 苦虫を嚙み潰したような顔を見られてしまい怒られた。


 「ご、ごめんなさい。でも──」



 俺、駒なんて嫌だよ。誰か知らないやつにダイスを振られて、もしそいつが無能だったらと思うとお先まっ暗じゃないか。


『そう心配しなくて良い。外国っぽいところだが超能力を使い、思う通りに生きてくれれば良いだけだ』


「超能力は大好きです、スプーンを曲げて念写もできるの? あとテレポーテーションも……」


『ああ、できるとも。念じるだけで手軽にな!』


 それ、本当かよ。

 神様が「もう行きなさい」という雰囲気をかもしだしたけど、


「あの、なんのゲームかだけでも聞かせてくださいよ!」


 そのとき神様の方も仏頂面を見せた。

 なぜだ、何か不都合でもあるのか。


 必死に食い下がってみた。ゲームならルールがあるはずだ。

 ただ、どういうルールなのかを知りたかったから。


『やっぱり気になるか?』


「ルールが気になるんですよ、そこは普通のことじゃないですか」


 それを聞かずに行く人間がこの世にいますか。

 どういう神経をしているんだ。

 しっかりと説明責任を果たして欲しいものだ。


『私は()()の神様なのだが……』


「か、神様も中学二年なの!? おじさんの紙芝居を見にきたのですか?

 (子供か。座敷わらしかな。雲の上に神様の学校でもあるのかな)

 せっかくだから水飴せんべいでも食べて行けばどうですか?

 それともカタヌキにしますか? 二十円ぐらいなら出してあげますよ」


 ああ、神様に出会えるのならなぞなぞの答えを聞けばよかったかな。

 ふしぎと家族や学校のことなどが心残りではなくなっていくのだ。


 紙芝居の謎は解けた試しがなかったからな。

 小学生相手の商売だというのにな。


 『ゲームが好きでたまらんのだ。だから作る側になってヒット作を出したいのだ』


 ゲームが好き……。

 遊びたい年頃だ、お互い。

 気持ちは分かるけど。


「じゃあ、さっき言った「異世界」がゲーム盤で、俺はそこに放り込まれるのですか?」


『そうなるの。だが箱庭のような小さな世界の連なりだから、果てしなく広がるわけではないので難しく捉えなくても良い』


 ……だ、そうだ。

 神様の世界にも、おもちゃ屋や、出版社や、アニメ会社があるのですかね。


『とある世界で神ゲームというものが流行していて、神界の繁栄のために神たちが皆、出稼ぎに行ってしまったのだ』


「で……出稼ぎって。ちょ、ちょっと──」


 貧乏神の世界からやって来たのかな、この方は。


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