高松、本社での仕事……
高松の仕事は、色々あります。
9月の最終金曜日、高松は朝から本社に居た。本日より3日間、中途社員研修があり、初日担当は高松であった。
高松は研修の用意をし、空いているスペースでホットコーヒーのブラックを飲んでいた。
「おはようございます、高松さん!」
「おはようございます、松本さん」
「今日はありがとうございます。高松さんの研修、私も楽しみです!」
「……誰がやっても変わらないと思いますよ……とりあえず、決められた事はやりますがね……」
「それより高松さん、昇進おめでとうございます!」
「ありがとうございます……めでたいのかめでたく無いのか分かりませんがね……」
「何言ってんですか?…高松さんは昇進するべき人です!……だから、とてもめでたい事なんです!」
「……コンプラには上がりましたけどね……」
「あれは間違いだったんでしょ!……私は初めから分かってました!」
「……どうやら、高藤さんに直訴した方の1人の様ですね……余計な手間を取らせまして、誠にすいません……」
高松は頭を下げた。
「辞めて下さいよ!…高松さんがする筈無いって思ってましたから!……だから、無実が晴れるまでの事なら、手間でもなんでもありません!」
「……何だか、とても評価が高いですが………がっかりされない様に頑張ります……」
「高松さんは今のままで大丈夫ですよ!……今のままで期待以上にやってます!……それに、私だけじゃなく、高松さんの事で高藤さんに話をした人は、本社だけでたくさん居たんですよ!」
「……そうですか……どうやら、みんな何か勘違いしてそうですね……」
「高松さん、そんな事無いですよ!……高松さんは、理想の上司であり、一緒に仕事したい人なんですよ!」
「……いまいちぴんと来ませんが、とりあえずはありがとうございます……」
「高松さん……確かに高松さんらしいんですけど、もう少し偉ぶって下さいよ!…高松さんはしっかり結果を残してるんですから!」
「……私の柄じゃないですね……まぁ、無理せずにやっていきますよ……」
「本当に高松さんは読めないですよねぇ…………これじゃ、いつになったら私の気持ちが分かるのやら…………」
「これじゃの後、何か言いました?……聞き取れなかったんですけど……」
「……いいえ、大した事じゃありません。高松さん、今度ご飯でも行きましょう?」
「……大丈夫ですか?……私と行って変な噂……」
「大丈夫です!…そんなの気にしません!…………噂が出た方がありがたいくらいです……」
「??…何か言いました?」
「別に言ってませんよ~だ!」
「???……何で少し怒ってるんですか?」
「教えな~い!」
朝から楽しそうな会話である。松本は高松の事がお気に入りの様である。
中途社員研修が始まる。高松は本日の講師として、会社の成り立ちから社訓、これからの心構え等を話していく。なかなか眠くなる様な話であるが、社長以下本社の上役、特に高藤が高松を講師役にした魂胆がもろに現れる。
実際、今までの中途社員研修となると、大半の者が眠っており眠らない者も眠気との戦いとなる事が殆どであった。
しかし、高松の時は違っていた。
「最初に言いますが、色々と聞いていきますから、必ず答えて下さい。間違っていたとしても構いません。必ず自分の考えを言って下さい。お願いしますね」
高松は最初にそう言い、研修をスタートさせる。
「さて、会社の成り立ちを説明しましたが、どう思いますか?……では、後ろの伊藤さん」
「私ですか?……え~と……成り立ちを聞いて、何の役に立つんですか?」
「いきなりいい答えですね……私も疑問に思っていました。しかし、成り立ちを知ると、何となくですが会社の強みが見えて来ます。勿論、弱点なんかも見えて来ます。自分がどうなりたいかを考えた時、何処を学ぶか、何処に力を入れていくか分かって来ると思いますよ」
「私もいいですか?」
「はい、斉藤さん」
「介護の会社に強味や弱味なんてあるんですか?……やる事が変わるとは思えませんけど?」
「そうでしょうか?……同じ入浴の介助をしたとしても、困っている所は違いますし、やって欲しい事は違いますよね……だったら、入浴1つ取っても同じ事はなかなか無いんじゃないですかね?」
こんな感じで、高松は誰かを置いて話を進めない。更には、色々な人を発表させる事で誰もが参加している事を自覚させ、質問に対する答えは、必ず誰しもが考える様な答えをした。
結果、高松の研修は誰も眠るどころか、午後になると昼を食べてみんなが元気になり、更に活気のある研修になって行った。
これには、中途社員研修を担当している松本も驚いており、いつもなら眠っている社員を起こすのが仕事だが、今回は中途社員と一緒に高松の研修にのめり込んでいる。
初日の研修はあっという間に終わり、高松が最後の挨拶をする。
「本日はありがとうございました。私も楽しく出来ました。みなさんと今日を一緒に過ごせて、私も有意義でした。もしかしたら、私と一緒に仕事をする方が出て来るかもしれません。その時は、遠慮せずに声を掛けて下さい。1つだけ、特に男性に忠告です……松本さんが美人だからって、余り言い寄らない様にして下さい。私の知る限り、松本さんはこの会社のアイドルですからね」
「た、高松さん、何言ってるんですか?」
「??…私は事実を言ってるだけですよ?」
「ちょっと、辞めて下さいよ~!」
『あっはっはっはっは!』
最後まで、みんなを飽きさせない高松であった。
高松、ここでも活躍です。




