谷島、城北学院を訪問……
何やら起こりそうな気配……
9月の第3水曜日、高松の姿はいつもの様に城北学院にあった。相変わらず誰よりも早くに来ており、本業の仕事をパソコンでしていた。
「おはようございます!」
「おはようございます、高木先生」
「高松さんは、何時頃に来てるんですか?」
「7時半くらいですかね……本業の確認事項もありますからね……」
「……高松さん、聞きたい事があるんですけど……」
「何ですか?」
「……高松さんが高校3年の12月……私、高松さんに手紙を送ったんです……下駄箱に入れて……」
「はい、知ってますよ」
「……どうして来てくれなかったんですか?」
「……タイミングが悪過ぎです……私は全日本の合宿が有り、手紙を読んだのは、1週間後でした……すでに約束の時間はとうに過ぎていました……更に言えば、私が合宿から帰って来たタイミングでインフルエンザになったでしょう?……タイミングが悪いったらあらしない……」
「!?……確かにインフルエンザになりました……合宿は頭からすっかり抜けてました……」
「その後、何回か話す機会を探しましたが……高木先生、萩原と付き合ってましたよね?……それが全てです……」
「!!!……高松さん、ちゃんと考えてくれてたんですか?」
「当たり前です。私はあなたの先輩ですよ……ちゃんと考えないと失礼でしょう?」
「……ありがとうございます、引っ掛かってた物が取れました!」
「もしかして……これを聞く為にこんなに早く……」
「はい!」
「……ご苦労様です……」
「おっはようごさいま~す!……あれ?…何で高木先生がもう居るんですか?」
「高松さんに大切な話があったんです!」
「高松さん、どんな話ですか?」
「……高木先生的には、誰にも聞かれたくない話の様ですので、秘密にしておきます」
「ありがとうございます、高松さん!」
「ちょっと~、高木先生、高松さんが先輩だったからって甘え過ぎじゃないですか~?」
「別にいいでしょう?」
「よくな~い!…私が高松さんに甘えるの!」
「このぶりっこは……」
「何よ~、年増改め行かず後家教師!」
「!!!……言い過ぎよ、八方美人教師!」
いつもの様に2人の言い合いが始まった。高松はこそっとパソコンを持って、加藤先生の机に避難し仕事を続けた。
2人が言い争っているうちに他の先生方も出勤し、それぞれが自分の席に着く。高松も自分の席に戻った。校長先生から話がある。
「おはようございます。本日、市役所の方が見えます。高松さんの授業の見学と校内の案内、我が校の取り組みについて話をします。高松さん、本日の3時間目は3組4組の合同授業として行って頂き、4時間目は市役所の方の対応を……確か4時間目は…………授業の変更があって………………鈴木先生、高松さんと一緒に対応をお願いします」
「はい、分かりました!」
「校長先生は対応されないんですか?」
「私は授業の前に話を聞かれます。後は現場の方にお願いします」
「任せて下さい、校長先生!…ね、高松さん!」
「……私は不安です……」
どうやら高松と鈴木先生は、重要な任務を頼まれたらしい。
授業は進み、2時間目の途中に市役所の職員が来られ、校長先生が対応する。高松は2時間目が終わると、講堂に移動した。3時間目が合同授業の為、講堂での授業となる。高松が講堂に入ろうとする。
「高松さん!」
「あれ?…谷島さん……どうしたんですか?」
「それはこっちのセリフですよ?」
「私ですか?……今年の4月から、特別講師をしていまして、毎週水曜日にこちらに来ています」
「特別講師は高松さんだったんですね!……福祉の取り組みが始まった高校という事で、今日は視察に来たんです!」
「成る程……では、今日の市役所からのお客様は谷島さんだったんですね」
「はい!…今日はよろしくお願いします!」
「お手柔らかにお願いします」
高松と谷島は軽く頭を下げ、講堂に入って行った。
3時間目が始まる。3組·4組の生徒と担任の先生、更には校長先生と教頭先生も集まり授業が開始される。高松はハンズフリーのインカムを付けている。
「みなさん、おはようございます。今日は講堂での授業ですが、いつもと変わらずやっていきましょう。では、私が号令を掛けます……起立、礼、着席」
高松の授業が始まった。
高松の授業は変わらない。基本は生徒達や先生方に意見を聞き、その上で授業を進めていく。分からなければ何度でも説明し、例を上げながら話をしていく。
谷島を含め普段参加しない校長先生と教頭先生は、高松の授業について学ぶ事が多かった。
授業終了のチャイムが鳴る。
「では、本日はここまでです」
『え~!』
「いやいや、いつもそうでしょう?……みなさん、次の授業もしっかりお願いします」
『は~い……』
「はい、では……起立、礼、着席……ありがとうございました」
高松は講堂を出て行く。高松が出て行くと谷島は高松を追う様に講堂を出て行った。
谷島は高松に声を掛け、2人で話ながら職員室まで歩いている。
「高松さん、そちらは誰ですか?」
「鈴木先生、こちらは市役所の谷島さんです」
「地域包括支援の谷島です。よろしくお願い致します」
「こちらは今日、私と一緒に対応します、鈴木先生です」
「鈴木と申します。よろしくお願い致します」
2人は頭を下げる。
「谷島さんは、高松さんとどういう関係ですか?」
「高松さんには、市の委員会をお願いしたり色々便宜を図って貰ってます!」
「いやいや、こちらこそ、いつもお世話になっております……」
「でも、それは高松さんが介護の職に就いてる時ですよね?……今は高松さんは、講師として来てますから、講師の高松さんとして対応して下さい!」
「いやいや、とてもお厳しい……まぁ、私もそのつもりですので、安心して下さい……それとは別に、高松さん、本当に食事に行きましょうね!」
「そうですね……時間を作ります」
「私も参加します!」
「……介護の職員としてになりますから……」
「高松さん、大人気ですね!」
谷島は笑顔であるが、鈴木先生の目が怖い。この後、何も起きない事を祈る高松であった。
まだまだ何かが起こりそうな……
高松、意外に関係無い所で大変なのかも……




