8月最初の土曜日……
インターハイが終わりました。
次は?
高松は本日は公休である。城北学院に朝から来ていた。ハンドボールの練習は、男女共に午後であり、高松は午前中にトレーニングをし、少し時間が空いた為に校舎内を改めて見て回っていた。
「高松さん、何してるんですか?」
「鈴木先生……改めて校内を見てるんです。なかなか見る機会が無いですからね……」
「ふ~ん……私も付き合おうかな?」
「面白い事は無いですよ?」
「少し時間があるんです……聞きたい事もあるし……」
「……答えられる事にして下さいね」
「どうしようかな~……」
「まぁ、答えられない事は無視しますけどね」
「あ~、酷~い!……高松さん、なんか変わりましたね!」
「そうですか?……いつもこんな感じですよ?」
「違う……前はもっとお堅い感じでした……少し柔らかくなった感じがします!」
「そんなに体は柔らかくないんですけどね……」
「その返し方ですよ!……来たばかりの時は、もっと堅い返し方でしたけど……今は、何て言うか………ゆとりが有る様な、そんな感じです!」
「う~ん……変わった気はしないんですけど……嫌ですか?」
「全然!…むしろ、前よりいい感じです!」
2人は話ながら校内を歩いた。高松はあまり行く事の無い教室等を確認する様に見ていた。
午後になり、男子ハンドボール部の練習に参加する為、高松は着替えて体育館に行った。
「高さん!」
「どうしました?…梶山君?」
「俺……全然ダメだった……」
「どうしたんですか?」
「インターハイのビデオ見たんだ……神奈川商工戦の最後……ラスト1分の時、高さんが手を上げるのが映ってた………あの時、俺がもっと周りを見えていたら……」
「……梶山君、あの試合はナイスゲームでした……負けたのは残念ですが、誰のせいでもありません……前を向いて、胸を張って進んで下さい。私の弟子なんでしょう?」
「高さん………ありがとうございます。でも、俺はやっぱり納得出来ません。だから、ハンドボールを続けます。納得出来るまで続け様と思います!」
「……大変ですが、頑張って下さい……しっかりと歩いて下さい」
「はい、頑張ります!」
梶山は高松に頭を下げ、3階フロアに走って行った。高松は口元が少し綻んでいた。
練習は、新チームと少年男子の国体のメンバーが一緒に練習する。これは女子も一緒であり、この期間に県選抜の選手と練習出来る事は新チームにとって、この上ない事である。
男子は城北学院と国浦学院だけで組まれている。女子は城北学院·国浦学院と県3位の南高校から選ばれているらしい。
高松も入り、男子の練習が始まる。チームの監督はその県独自で決めており、この県はインターハイに出場したチームの監督が努める事になっている。コーチ等は監督に任せている。
高松はコーチの話を加藤先生よりされていたが、丁重に断っていた。高松には高松の考えがある様だ。
高松との練習は城北学院の面々にとっては当たり前の事だが、国浦学院の生徒達にとっては衝撃であった。
自分達が自信を持って放ったシュートをいとも簡単に止められてしまう。更には、自分達が休憩に入ると、その男はサーキットトレーニングを始める。どう見ても中年の男が自分達より厳しいメニューを黙々とやっている。自分達の目を疑いたくもなる筈である。
それにつられ、GKの梶山と前キャプテンの大橋も高松のトレーニングに付き合っている。国浦学院の生徒達は、改めて打倒城北学院は難しい物だと感じた。
この後の練習もかなり厳しい物ではあったが、8月最後の金·土·日と国体関東予選がある為、誰もが必死に練習をした。
練習後、高松は国浦学院の生徒達に話し掛ける。
「お疲れ様」
『お疲れ様です!』
「山中先生は元気ですか?」
「はい、元気です!」
「山中教頭の知り合いですか?」
「……山中先生は私の恩師です」
『!?』
「失礼ですけど、おいくつですか?」
「43歳ですよ」
「ちょっと待って下さい……」
5人は何やら計算したり相談したりしている。
「もしかして、国浦が全国制覇した時の方ですか?」
「……一応はそうですね……」
「という事は……その時のGKですか?」
「そうなりますね……」
「山中教頭から聞いた事があるんです……な?」
「そうです。春·夏·国体を制覇した時の話………サイドの押山·逆サイドのキャプテン栗原·右45度の野沢·左45度の猪狩·センターの新井·ポストの小川·GKの高松……全国を制したメンバーだって言ってました………確か、教頭先生の机には、その時の集合写真があった筈です!」
「そうなると……GKの高松さんですね?」
「確かに高松です」
「スゲェ……教頭先生が1番自慢してた人だ!」
「本物だよ~!」
「高校卒業後もハンドボールをやってたんですよね?……教頭先生は教えてくれないから、教えて下さい!」
「……大した選手では無かったですよ……たまたま全国制覇したGKだっただけです……山中先生もオーバーだなぁ………そのうち、山中先生の所に行きますので、よろしく伝えて下さい」
『はい!』
国浦学院の生徒達は帰って行った。高松はこの後、トレーニングルームにてトレーニングをするが、城北学院の部員達も高松とトレーニングをしている。来年は今年よりいい成績を……みんながそう考えている様だ。
高松はトレーニング終了後、男女ハンドボール部の部員達にお願いされ、自主練に付き合う事になった。それぞれが来年を見据え、今をしっかりと練習しようとしている。
高松は自分がGKに付いたりして、色々と教えていった。
駆け引きやシュートの仕方等を教え、GKにとって何が嫌か、何をやられたくないか等を伝えた。
自主練にも関わらず、熱気の籠った練習になっていた。
高松はこの後、アパートの近くのスポーツジムに行き、更にトレーニングを行って1日を終了した。
高松の体は、そうとう鍛えられていた。
まだまだ色々ありますね。




