高松、準々決勝を見学する……
城北学院は負けてしまいましたが、栄浦と神奈川商工の試合……
高松も気になる様です。
翌日、高松は栄浦と神奈川商工が対戦する会場に足を運んだ。本日の第2試合、優勝候補同士の激突となり、勝った方がベスト4である。そして、高松の予想ではこれに勝った方が優勝である。
高松が会場を歩いていると、
「「高松!」」
高松が振り返ると、猪狩と後藤が居た。
「2人は仲がいいのか?」
「いや、普通だな!」
「たまたま会ったんだよ!」
「今日、対戦だろ?」
「まあな……リベンジさせて貰うよ……」
「いや、今回も勝たせて貰う……」
2人は握手をする。
「で、俺に何か用なのか?」
「お前はどっちの応援なんだ?」
「どっちが勝つと思ってんだ?」
「俺は高みの見物だ……ただ単に楽しみなんだ……」
「本音で答えろよ……どっちが優勢だと思ってんだ?」
「どう考えてんだ?」
「……分からねぇよ、殆ど互角だろ?……関東大会のビデオ見たけど、インターハイに備えて手の内隠してただろ?……どっちにしたって、やらなきゃ分からねぇよ!」
「そうか……」
「高松から見てもそうか……」
「猪狩、借りは返すぜ!」
「後藤、返り討ちだ!」
「高松、楽しんでいけよ!」
「またな、高松!」
猪狩と後藤は高松から離れていった。
「高松さん、おはようございます!」
「相変わらず早いですね!」
「今日もお願いします!」
「はい、こちらこそお願いします……部員達はどうしました?」
「今日は自由行動です。こっちを2時頃出発の予定です」
「そうですか……では、ゆっくり試合見学をしましょうか?」
高松達は席に着いた。
「康介さ~ん!」
高松は声の方を向くと、橘が走って来る。
「どうしました?橘さん?」
「えへへ、バイトで貯めたお金で来ちゃった!」
「お母さんには……」
「許可は貰いました!……康介さんが一緒ならいいって!」
「……私の信頼は凄い事になってますねぇ……あれ?…そのネックレスは……」
「気付いた?……康介さんに貰った物だよ!」
「「!?」」
「高松さん、橘さんに上げたんですか?」
「私も欲しいんですけどぉ!」
「ダ~メ……康介さんは私だけにくれたの!」
「……そのうち時間があったら見に行きましょうか……」
「はい!」
「よろしくお願いします!」
「ちょっと、康介さ~ん!」
試合前から大分賑やかである。
女子の試合が始まり、栄浦も神奈川商工もアップが激しくなる。
ハーフタイムには両校共に鋭いシュートを打ち、試合準備万端の様である。
「高松さん、どちらか勝ちますかね?」
「難しいですね……何処が勝負の分かれ目になるか……ですね……」
「高松さんの予想は?」
「……出来ないですね……私的には、勝った方が優勝だと思っています」
「事実上の決勝戦ですか……凄い試合になりそうですね!」
「……昨日·今日が山場だと思ってました……残念ですが、来年以降もある……しっかり見ておきましょう」
「康介さん、ずっとコーチやるの?」
「ずっとは無理ですね……まぁ、少しの間ですね……」
話をしているうちに女子の試合が終わり、栄浦と神奈川商工がコートに入って来た。
栄浦と神奈川商工の試合……
先制したのは栄浦、神奈商のロングシートをGK一重がしっかり止め、ワンマン速攻から得点を上げる。
栄浦はこのプレーから流れを掴み、開始から3連続得点を上げる。
これに対し神奈商は、監督の後藤から[ゆっくり1点]との指示が出され、一度自分達のプレーをストップした。これが功を奏した様で、4点目は神奈商が決める。
ここからは互角の戦いが繰り広げられる。
一重がしっかりシュートストップすれば、神奈商のGKもファインセーブをする。栄浦がいいプレーをすれば、神奈商もやり返す。
見応えがある試合である。
前半は互いに譲らず、10-10であった。
「高松さん、こうなると栄浦が有利ですね!」
「一重君の居る栄浦……ここに関東No1GKが居るのは大きいですね!」
「鈴木先生に橘さんはどうですか?」
「私は……微妙だと思います。前半を同点で終わったのは、どちらにとって良かったかですね!」
「私は……よく分かんない…………でも、すんなりとはいかない気がする!」
「どうやら、何かありそうですね……後半、鍵になるプレーがあります。見逃さない様にお願いします」
後半が始まる。
後半も両校は互角の展開を繰り広げる。神奈商のGKも、今までで1番のプレーを見せている。
試合は同点のまま、後半15分を迎えた。
ここで1つのプレーが試合を大きく動かす。高松が言っていた、鍵になるプレーである。
神奈商は、速いボール回しからエースがいつもの試合通りのシュートを放つ。神奈商のエースのシュートであるので、かなり強烈ではあるが、このシュートを一重は止める事が出来ず、ゴールを許した。
この後の展開は、神奈川商工が常に先に点を取り、栄浦が追い付く形になる。
後半29分、栄浦はエースがシュートを放つがポストに当たる。そのボールを神奈川商工のフィールドプレーヤーが取り、すぐに速攻となり、この得点で勝負は付いた。
栄浦も1点返すが、トータルスコア21-20で神奈川商工の勝利となった。
「後半15分……あのプレーが鍵でしたね」
「確かに、あのプレーの後、神奈川商工は何処かチームに余裕が出来ましたね!」
「何でですか?」
「ここが高校生なんです……一重にいつも通りのシュートが通じた……気持ちが楽になった筈です。余計な力が抜けましたからね……あそこを止めるかどうか、勝負の分かれ目でしたね……」
「高松さんなら、あの後どうしました?」
「私ですか……そうですねぇ…………もう一度、エースにシュートを打たせます……そして、何がなんでも止めます……なるべく平気な顔をしてね……さっきのは、自分のミスだとアピールしますね……」
「そうする事の利点は?」
「相手へのプレッシャーですね……改めて力が入る……後半半分過ぎた所で、かなりの精神的ダメージですね」
「成る程……ピンチを逆手に取るんですね!」
「……上手くいかなければ、もっと調子づかせますけどね……」
「高松さん、何で一重君が居るのに、栄浦の有利だと思わなかったんですか?」
「そこが難しい所です。No1と言われている者が居るチームは、確かに脅威ですが、そのNo1に自分達のプレーが通用するというのは、とても大きな自信になります……これが何より恐い……高校生なんて、ちょっとしたきっかけで化けますからね……難しいんですよ……」
「……そう考えると、難しいですね……」
「逆を言えば、勝利のチャンスはあったんです……これからの課題ですね」
「「はい!」」
「さて、帰りますか……鈴木先生、橘さん……先に車に行ってて下さい」
「「分かりました!」」
高松は車の鍵を鈴木先生に渡した。加藤先生と高木先生は、鈴木先生達と外に歩いて行く。高松は猪狩の元に行く。
「猪狩、ちょっといいか?」
「おう!」
高松は猪狩を連れ、後藤の所に行った。
「後藤、少し時間くれ」
「おう!」
高松·猪狩·後藤が顔を揃える。
「やったな、後藤」
「おう、リベンジ成功だ!」
「やられたよ……くそ!」
「猪狩、何であの時、もう一回一重に勝負させなかったんだ?」
「一重はいっぱいいっぱいだったよ……あそこは、全力で逆転を狙うしかなかった……」
「いや、あの時もう一度勝負してたら……やばかったのはうちかもしれないな……」
「……どっちにしたって、結果は出たんだ……せめて、優勝したチームに負けた事にしたいな……どうだ、猪狩」
「城北も神奈川商工に負けたんだっけな……そうだな、優勝しろよ、後藤!」
「当たり前だ!……城北·栄浦と破って、優勝しなかったらおかしいだろ?……絶対優勝してみせるさ!」
「「頼むぞ!」」
「おう、任せとけ!」
3人はハイタッチをして別れた。
本日の試合は、希に見る好ゲームだった。
「猪狩、一重に砂糖みたいに甘甘だなって伝えておいてくれ!」
「おう、分かった!」
高松は猪狩に頼み事をし、橘と鈴木先生が待つ車に向かった。
色々な事があった新潟県出張であった。
なかなか見応えのある準々決勝でした。




