インターハイ本番……
高松はインターハイ会場に向かいました。
高松コーチの出番ですかね?
高松は起きるとすぐに着替え、フロントに鍵を渡し外出する。近くのファミレスに寄り、簡単な朝食を摂り城北学院の1回戦の会場に向かった。
高松はコインパーキングに車を止め、試合会場に入って行く。
「……高松だろ、おい!」
強めに肩を叩かれた。後ろを振り返る。
「……後藤か?」
神奈川商工の高松の時のキャプテン、後藤孝が立っていた。
「何してんだよ?」
「見て分かんねぇのか?……見学に来たんだよ……」
「今年は国浦出てねぇだろう?」
「今、たまにだけど……城北学院の練習見てんだよ」
「そうなのか?……どうりで今年は強い訳だ!」
「選手が頑張ってるんだよ……それよりお前、どうして居るんだ?」
「俺は今、神奈商の監督だよ……猪狩は栄浦だろ?」
「みたいだな……」
「栄浦、GKがスゲェんだ……知ってるか?」
「知ってるも何も……甥っ子だよ……」
「そうなのか?……どうりで……」
「……俺は何も教えて無い……あいつが1人で頑張ったんだ……」
「どっちにしても、あいつはスゲェよ……後はお前がどうするかだな!」
「……プレッシャー掛け過ぎだよ……まぁ、色々やってみるよ……」
「本当か?……何だか楽しみになって来たな……お前は俺達の代の誇りなんだからな!」
「はいはい、せめて笑われない様にしますよ……」
後藤は高松に軽く右手を上げ、去って行った。ライバル高のキャプテンだった後藤にとって、高松と対戦し、切磋琢磨した事は大切な様である。
9時を過ぎると各チームが集まって来る。この体育館では、城北学院男女の試合の他に2試合ある。
城北学院ハンドボール部は高松を見付けると、全力で走って来た。
「松ちゃん、他のチーム全員が巧く見えるよ~!」
「高さん、どうしたらいいかな~?」
「高っち、心臓が出てきそう……」
「高松ちゃん、自信ないよ……」
男子も女子も、弱音を吐いている。
「はぁ…………情けない…………」
『!?』
「……何処でどんなチームと試合をしても、やる事は変わらないでしょう?……今更やれる事が増える訳でも無いし………ここ迄来て、何をじたばたしてるんですか……」
『……………………』
「あなた達の目標は何ですか?……大橋君?」
「……インターハイで結果を残す事です!」
「磯貝さん?」
「1つでも多く勝つ事です!」
「……口だけですねぇ……本当に………やる事は変わらないんです。緊張する暇があったら、自分のやる事を確認して、しっかりアップして下さい」
『……はい……』
「……怒られないと分かりませんか?……私はそんな返事は教えて無いですよ……」
高松の顔がかなり厳しくなる。それを見た部員達の顔色が変わる。
「自分のやる事の確認としっかりアップ、分かりましたか?」
『はい!』
「よろしい。では、始めて下さい」
『はい!』
男女共にアップを開始する。
「ありがとうございます、高松さん……何とか試合になりそうです……」
「これで、いつも通りに出来ます!」
「……2人の仕事ですよ……そのうちに怒りますよ」
「「すいません……」」
試合が進み、第3試合で城北学院女子の登場である。次の試合が男子である。
女子の試合は、始めこそ堅さが見られたが、GK港がノーマークシュートをセーブすると城北学院は波に乗り、自分達のリズムで試合を進めていく。前半を11-8で折り返すと、後半は攻撃陣が爆発し、終わってみれば、25-14と圧倒していた。
続いて男子の試合である。
男子は始めから自分達のリズムで試合を進め、キャプテン大橋の気合いのプレー等もあり、前半12-7、後半13-7、トータルスコア25-14でこちらも1回戦を突破した。
城北学院ハンドボール部男女と加藤先生、高木先生が高松の所に来る。その後ろに鈴木先生もおり、カメラを構えていた。
「鈴木先生、私の写真は勘弁して下さいね」
「いいじゃないですか~!」
「あんまり写真は好きではないんです……」
「……分かりました、使いません!」
「ありがとうございます」
改めて、高松は部員と先生方に視線を向けた。
「まずは1回戦突破、おめでとうございます………しかし、明日も試合があります。しっかりと休んで、明日に備えて下さい…………情けない事を言ったら、明日は許しませんからね」
『はい、ありがとうございます!』
全員が宿舎に帰って行った。
「高松さん、この後暇ですか?」
「……何かあるんですか?」
「ご一緒に夕飯でもどうですか?」
「鈴木先生……宿舎で夕飯が出るんじゃないですか?」
「出ますけど……折角なので、何処か美味しい所で食べたいです!」
「……それは一理あるな……分かりました、後で宿舎に行きますね」
「はい、お願いします!」
鈴木先生も宿舎に戻った。
高松は神奈川商工の所に行く。
「後藤、ちょっといいか?」
「おう、大丈夫だ……お前等、少し待ってろよ!」
『はい!』
高松と後藤はチームから離れた所で話をする。
「高松……城北学院、なかなかいいチームだな!」
「神奈川商工……相変わらず強いな」
「それ程でもねぇよ……今年は栄浦にやられてる……」
「栄浦か……俺の時も、どっちも強かったな……」
「何言ってんだ……優勝したのは、お前達国浦じゃねぇか!」
「そうかもしれないが、際どい試合だっただろ?」
「バ~カ……圧倒的にやられたよ……」
「……それは置いといてだな……」
「置いとくのかよ!」
「今年は、かなり競った試合になりそうだな……」
「確かにな……うちと栄浦、城北に東京の明浄、更には、香川県なんかも優勝候補だ!」
「……毎年、こんな楽しい思いをしてたのか……この幸せ者め」
高松は後藤の頭を強めに叩いた。
「痛ぇな、何が言いたいんだよ!」
「俺はお前が羨ましいんだ……お前は俺を誉めたけど、俺はお前や猪狩が誇りだし、心底羨ましいよ……」
「高松…………辞めろよ、照れるだろ?」
「はっはっは、照れるなよ……試合、楽しませて貰うぜ!」
「おう、またな!」
高松と後藤は別れた。
今年のインターハイのハンドボールは、男子も女子もかなり力が拮抗している。なかなか楽しい試合になりそうだと高松は思った。
高松は明日の試合の事を考えながら、ホテルに戻った。
昔のライバルに会いました。
高松の事、そんな風に思ってたんですね。
現在の高松と昔の高松、熱量の違いを感じますね……




