高松の急な休み……
何かと忙しい高松、よく頑張るなぁ……
橘と出掛けた翌日の日曜日、高松は城北学院に来ていた。本日から、ハンドボール部男女共にインターハイに向けた合宿である。
この合宿が終わり、2日後にインターハイに出発である。
高松は男子に混じって練習していた。
昼休憩の時に高松の会社携帯が鳴る。
「はい、高松です」
「高藤です」
「どうしましたか?」
「高松さんにお願いがありまして……」
「何でしょうか?」
「金曜日から新潟に出張をお願いしたいんですが……」
「何かありましたか?」
「9月に実地指導が入りますので、書類等のチェックを頼みたいんです……」
「……でも、北関東支社の方が……」
「本社から誰か派遣します。分からなければ高松さんに連絡する様になりますけど……」
「本社から誰か新潟に行けないんですか?」
「高松さんより書類関係で詳しい人は居ません……ですので、お願い出来ませんか?」
「まぁ、高藤さんの依頼なら……仕方ないですね」
「ありがとうございます……忘れてた、2日間支援頂き、残り5日間は観光でもして下さい!」
「はい?……どういう事ですか?」
「高松さん、公休取れてないでしょう?……ダメですよ、今回は凄い業績を上げたんですから、たまには休んで下さい!」
「しかし……」
「もう宿も取りました。前乗りして、ゆっくり過ごして下さい。後でホテルの詳しい資料を送ります!」
「ちょっと、高藤さん……」
「今年のインターハイは新潟でしょう?……しっかり頼みますよ、高松コーチ!」
「高藤さん…………ありがとうございます、お言葉に甘えます!」
「はい、お願いします……高松さんには、特別休暇が7日出ます。業績を上げたご褒美みたいな物です。前乗りする日も休んで、しっかりリフレッシュして下さいね!」
「……何から何まですいません……本当にありがとうございます」
「では、よろしくお願いします!」
会社携帯は切れた。
高藤からの思いもよらない計らいで、高松は休暇を貰える事になった。高松の功績が、会社に認められた様だ。
高松はその後も練習し、夜の練習まで参加した。
練習が終わると20時であったが、高松は部員の自主練に付き合う。
「高松ちゃん、今やる事は何?」
「松ちゃん、男子ばっかりずるいよ!」
「高さん、こっちも付き合ってよ!」
「高っち、今度はこっち!」
「……みなさん、私は1人しかいませんので……あっちもこっちも出来ませんよ……」
高松は大忙しである。
自主練が終わると、高松はみんなを集める。
「いいですか……ここまで来たら、苦手を克服より得意な部分を目一杯伸ばしましょう……得意な事に磨きを掛ける、いいですか?」
『はい!』
「では、今日はもう休みましょう……疲れを取る事と、しっかり食べる事も大切な事ですよ」
『はい、ありがとうございました!』
本日の練習は終了の様である。
しかし、高松はこの後、いつものスポーツジムで更にトレーニングをした。高松はかなりタフである。
翌日より、高松は仕事を定時辺りで終わりにし、帰りに城北学院に顔を出し夜の練習に参加する。勿論、その後の自主練にも付き合う。
帰りにスポーツジムでトレーニングをし、朝は早くに走り込みを行っている。何やら凄い事になっている。
そんな城北学院の合宿も終わり、普段の練習を2日間行い、城北学院は新幹線でインターハイの場所、新潟県に向かった。
高松は本日は特別休暇であり、夕方には新潟県に向かう予定である。
高松は実家に向かっていた。
実家に着いた高松は、荷物を車に乗せたままである。どうやら、社用車で新潟県に向かうつもりらしい。
高松は余り電車が好きではない。自由に動けない事もあるが、人混みが苦手である。その為、今回は高藤に許可を取り、社用車を使わせて貰った。
「ただいま」
「おかえり、康介ちゃん!」
「……愛美、来てたのか?」
そこには高松の次男の兄の娘、高松愛美が居た。
「修兄ちゃんは?」
「私1人だよ!」
「どうしたんだ?」
「私ね、来年城北学院に行こうと思うの!……だからね、康介ちゃんに送って行って欲しくて……学校見学!」
「実家から遠いだろう?」
「下宿しようと思って!」
「……ここからじゃ遠いぞ……」
「マスターにお願いする予定!」
「マスターか……確かにいいかもな……」
「何言ってんだい!」
後ろから高松の母親がやって来た。
「康介の所なら近いだろ?……それに、城北学院の特別講師じゃないか!」
「うわぁ……それは言っちゃダメなやつだよ……」
「何々、康介ちゃんは城北学院で講師やってるの?……近いんなら、康介ちゃんの所に住む!」
「……言うと思ったよ……色々あるからダメ……面倒な事になるからね……」
「え~、何で~?」
「何でもダメ!」
「ぶ~、分かったから城北学院を案内してよ~!」
「康介、案内してやんな!」
「母さんは愛美に甘いんだから……夕方から新潟県に出張だから、それまでには帰って来るぞ」
「新潟県?……インターハイやる所だね!」
「……連れて行かないぞ……俺は仕事だ」
「え~、城北学院のハンドボール部が出場するのに~!」
「修兄ちゃんに頼めばいいだろう?……俺は仕事なの!」
「……分かったよ……」
「所で、城北学院でもハンドボールやるのか?」
「勿論!……私もインターハイに出場するんだ!」
「そうか……まぁ、頑張れよ……」
「康介ちゃんには、凄さは分からないかもね……インターハイ出場って凄いんだよ!」
「そうか、それはお前が知ってればいい事だ……」
「相変わらずだなぁ!」
「とりあえず用意しろ、城北学院に行くぞ」
「分かった、ちょっと待ってて!」
愛美はすぐに用意し、高松の車に乗った。
愛美は高松の経歴を知らない。だから、高松がハンドボールをやっていた事もインターハイに出場している事も知らない。
高松は兄弟達に教えない様に言ってある。
一重は少しだけ記憶があり、その為に知っているが、愛美には伝えていない。これには理由がある。
高松がハンドボールから離れた時、愛美はそれが分からない位幼かった。その為に高松への接し方が全く変わらなかった。
高松にはそれが嬉しかった。
だからこそ、高松は愛美には自分の経歴を伝えていなかった。伝えず、ただの叔父さんとして接していた。だから、愛美に取って高松は、近くに居る理解ある大人というイメージでしかない。
また、一重との接点が少ない事も幸運であった。愛美がハンドボールを始めた理由は、一重の試合を見たからであったが、接点が少ない為に高松の話を一重から聞く事は無かった。愛美にとって、高松とハンドボールは全く関係が無い物という理解だった。
しかしこの後、愛美は高松の経歴を知っていく事になる。
もう少し先の話である。
高松の良き理解者、高藤取締役!
素晴らしい人ですね。
高松の周りも、動きが出て来ました。




