夏休み初日!
夏休み初日、珍しく高松も休み。
期末テストも無事に終わり、終業式も終わった。
橘はなんと、学年で8位という成績を取り、本人も含めてびっくりな事になっていた。
「康介さん、凄くない?」
「……凄いと答えたら正解ですか?…それとも、凄く無いですか?」
「ここはね、俺が教えただけある!…が正解です!」
「では……どうやら正解は言えませんね……橘さんの頑張りです」
「……ありがとうございます……照れるじゃないですか~!」
「たまにはいいでしょう……たま~にですよ」
「はい、ありがとうございます!」
高松だけは想定内の事らしい。
何だかんだあった1学期も終わり、夏休み初日は土曜日である。
高松は本日は公休であり、城北学院は男女共に明日から合宿の為、本日はお休みである。
高松は久しぶりに何も無い休日を過ごす予定である。
朝7時、高松の会社携帯が鳴る。
「はい、高松です」
「康介さん、お出掛けしようよ!」
「……足りています……」
「意味分からないよ~、私は出掛けたいの~!」
「お友達とどうぞ……」
「康介さんと行きたいの~!」
「……何処に行きたいんですか?」
「え~、康介さんが行きたい所なら何処でも~……勿論ホテルでも!」
「はぁ……何処で覚えたんですか?……変な事言うと、着信拒否にしますよ」
「わぁ~、ごめんなさい……でも、何処かに行きた~い!」
「……分かりました……9時に駅前で待ち合わせしましょう」
「本当に!……やった~、何処行くの?」
「それは……行ってからのお楽しみですね」
「は~い、分かりました!……じゃあ、9時に待ち合わせね!」
「はい、それでは…」
高松は電話を切った。どうやら、本日も予定が入った様である。
9時に橘と会い、2人で東京に向かった。
「何処に行くの?」
「着けば分かりますよ」
2人は渋谷で乗り換え、とある駅に着いた。本社からそんなに遠く無い駅、高松はそのまま歩いていく。橘は高松の後を付いていく。
高松は、とある体育大学に入っていく。
「康介さん、大丈夫なの?」
「連絡はしてありますからね……問題はありません」
「ここは大学でしょう?」
「はい、私が卒業した大学です」
「え?…そうなの?」
「そうですよ」
話ながら、高松は本校舎から少し離れた所にある建物に入って行く。
「沢松、悪いな……」
高松は研究室と書いてあるドアを開けながら声を掛けた。
「高松さん、待ってましたよ!……そちらの娘は?」
「康介さんの彼女をしてます、橘アリスです!」
「!!!……高松さん、いつからそんな若い娘を……」
「沢松、あんまり本気にするなよ……俺は43歳だぞ……考えれば分かるだろう?」
「……確かにそうですね……あんまり大人をからかっちゃダメだよ!」
「う~、からかって無いもん!」
「とりあえず、悪いけど頼むよ」
「そうですね……用意して、こっちにお願いします!」
「康介さん、何やるの?」
「今の自分を調べるんです。今、必要な事です」
高松は奥の部屋に入って行った。
「何やるんですか?」
「反応速度や筋力を調べて、今の肉体年齢を調べるんです」
「ふ~ん……どんな意味があるんですか?」
「どんな意味を持つかは、本人次第ですね!」
「そう……沢松さんは、康介さんとどんな関係ですか?」
「後輩ですよ、高松さんの後輩……色々良くして貰ったんです」
「そうなんだ~……」
高松が着替えて出て来る。
「さて、やるとするか?」
「はい、ではこちらへ!」
高松は沢松に案内され、色々な機械がある部屋に連れて行かれる。橘は高松達の後を付いていく。
高松は機械を使って色々測定していく。
光った所を押していき1分で何回押したかや足に負荷を掛け電気を流す事で筋力の測定等をした。
全ての測定が終わった高松は、橘と先に研究室に戻る。少しすると沢松が入って来た。
「高松さん、面白い結果が出ましたよ!」
「面白いのか?」
「かなり面白いです……これ見て下さい!」
沢松は高松に1枚の紙を見せる。橘もそれを覗き込む。
「これ、高松さんの大学の頃の記録なんです」
「……そういえば、やった記憶あるなぁ……これが何なの?」
「これが今日の記録……」
「あんまり変わりないですね……」
「そうなんだよ、いい所に気が付いた……橘さんだっけ?……特に反射神経の所は、今のがいいんだよね!」
「成る程……大学時代から進歩が無い訳だ……」
「違う、違うよ高松さん!…40超えて大学の頃より結果がいいのは凄いんですって!……あの頃より動ける可能性があるんですよ!」
「!?……凄い、康介さん!」
「……あくまで数字の上だけどね……まぁ、少しはいい感じかな……さて、橘さんおいとましますよ……沢松、ありがとな!」
高松は橘と研究室を出て行った。
少し歩くと、沢松は後ろから走って来た。
「高松さん、ハンドボールに復帰するんですか?」
「さて、どうだろうねぇ」
「まだ間に合いますよ、結果も出たじゃないですか!」
「……色々思案中だよ……」
「高松さんは、ハンドボールをやらないとダメですよ!……岸田の分までやってくれないと!」
「岸田か……悪い事したよな……あいつ、幸せだったのかな?」
「岸田は幸せでしたよ、高松さんが居たから!……その高松さんがこれじゃ、話にならないですよ!」
「……そうか?……俺は大した事のない男だと思わないか?」
「それは無いです!……高松さんは、誰もが呆れるくらいに凄い人です!」
「……買い被り過ぎだな……沢松、しっかり現実を見つめろよ」
「俺は見てますよ、見てないのは高松さんだ!……岸田が認めた男じゃないですか!……俺達の最高に自慢出来る、最高の先輩ですよ!」
「…………ありがとうな……」
「で、どうするんですか?……このまま終わりですか?……高松康介はここで終わる様な男じゃないでしょう?」
「……みんなして、期待がでかすぎなんだよ……まぁ、挑戦はするつもりだ」
「…本当ですか?」
「本当だよ、嘘言った事あるか?」
「結構ありましたよ!」
「馬鹿かお前は……意味のねぇ嘘はついた事はねぇよ」
「……だったら、本当にやるんですね!」
「ああ、やるよ……とは言っても、俺も歳だ……あんまり期待すんなよな……笑い者にでもなったら、みんなで笑ってくれ……」
「俺は笑わないですよ、高松康介の挑戦をしっかり見届けます!」
「お前は本当に馬鹿だな……分かりました、笑います……が正解だ……じゃあな……」
「頑張れ、高松!」
「はいはい……」
高松は沢松に軽く手を上げ、建物から出て行く。橘は高松の後を追いかける。
「康介さん、沢松さんていい人だね!」
「そうですね、いい奴です……人が良すぎる事が欠点ですね……」
「でも……私も康介さんの挑戦は、どんな結果になっても笑わないな!」
「……笑ってくれないと、本人はきついんですよ……」
「だって、全力で挑戦するのは馬鹿に出来ないでしょ……康介さんが教えてくれたんだよ!」
「……痛い所を突きますねぇ……とりあえずは、全力で挑戦します……今はそれだけですね……」
「……何となく康介さんらしい……今はそれが正解だね!」
「……そうしておきましょう」
2人は少し笑いながら歩いていく。
本日はまだ終わらない。
何かある高松……
今日はまだ終わらない。




