高松はみんなが気になる?
高松、気になる存在の様です。
6月第2水曜日、高松は城北学院に出勤していた。
相変わらず誰よりも早く来てパソコンを開いている。
「おはようございます、高松さん!」
「おはようございます、鈴木先生……早いですね」
「ええ、今日は早く来ました!」
「何かあるんですか?」
「これからあるんです!」
「そうですか」
高松はパソコンに目線を移す。
「高松さん、今度の日曜日、映画に行きましょう!」
「!?……突然ですね」
「はい、突然です!」
「……用事はいいんですか?」
「用事はこれです!」
「!?……そうですか…映画ですか、どんな映画ですか?」
「話題の映画です!」
鈴木先生はチケットを高松に見せた。ハリウッドのアクション映画の様だ。
「日曜日はちょっと……」
「何かあるんですか?」
「アパートを見に行く予定なんです……」
高松が鈴木先生に返答すると、
「おはようございます、高松さん!」
「おはようございます、高木先生……朝から元気ですね」
「はい、元気が1番です。鈴木先生もおはようございます!」
「おはようございます、いつもはぎりぎりの高木先生!」
「そういう鈴木先生だって、そんなに早く無いでしょう?」
「私は用事があったんです!」
「だったら、用事を済ませたら?」
「もう済ませました!」
「どんな用事かしら?」
「日曜日に高松さんとアパートを見に行く約束したんです!」
「!?…どういう事ですか?」
「そういう事です!」
「高松さん、日曜日にアパートを見に行くんですか?」
「………話が拗れてますねぇ……確かにアパートは見に行きますよ……」
「ほら、見に行くんです!」
「高松さん、どういう事ですか?」
「私の間違えで無ければ、多分1人で行く予定なんですが……」
「高松さん、間違えてますよ!…私も行くって言ったじゃないですか!」
「話をまとめると、鈴木先生が無理矢理付いて行こうとしてるんですね!」
「無理矢理じゃないです!……高松さんは恥ずかしがってるだけです!」
「はぁ、高松さんが優しいからって……」
「でも、高木先生はどっちにしたって無理ですもんね……関東大会だし!」
「!?……確かに……やられたわ!」
「私は、高松さんとアパート見て、その後映画行って……その後………えへへ!」
「おはようございます!」
「山田先生、おはようございます」
「朝から楽しそうですね!」
「山田先生、私の代役をお願いします」
「高松さん?変な事考えてません?」
「何ですか?」
「鈴木先生は日曜日の映画のチケットを持っていますが、高木先生は関東大会、私はアパートを見に行かなくてはならない……」
「分かりました、僕が映画に行けばいいんですね!」
「山田先生、素晴らしいです!…高松さんも安心です!」
「任せて下さい!」
「違うでしょ〜!…高松さん、高木先生!」
「多分合ってますね」
「大正解です!……ね!山田先生!」
「はい、勿論です!」
「違うってば〜!」
朝から職員室は楽しそうである。
朝のホームルームが終わり、高松は授業に入っていく。
「はい、今日は期末テストの話をします」
『え〜!』
「静かに、大切な話だぞ!…高松さん、お願いします!」
「加藤先生、余裕ですね」
「え?」
「え〜、テストですが……何を見ても誰と話しても構いません。しっかりと問いに答えて下さい」
「マジ?」
「何見てもいいの?」
「おい、相談しようぜ!」
「いいね、助かるな〜!」
「ちょっと高松さん!」
「ああそうだ、先生方もテスト受けますからね……悪かったら、課題出しますよ」
「!?」
『それ最高〜!』
なんと、高松のテストはカンニングどころか、誰と話しても何を見てもいいらしい。
更には、先生方もテストを受けるという、前代未聞な事になった。
「そういう事ですので、加藤先生も頑張って下さい」
「……校長先生は何て?」
「許可は貰ってます……諦めて下さい、先生方は点数が悪かったら発表します」
「そんな………」
なかなか凄い事になった。
この後の授業でも同じ様な反応があり、生徒達は盛り上がり、先生方は授業を必死に聞いていた。
どうやら、高松には考えがある様だ。
4時間目までが終わり、高松はコンビニのおにぎりを食べながらパソコンを打っている。
いつもの様に橘と高木先生、鈴木先生が近くにおり、山田先生も加わっている。
「「「失礼しま~す!」」」
やって来たのは、男子ハンドボール部のキャプテンの大橋にGKの梶山、女子部キャプテンの磯貝である。
「ねぇ高松ちゃん、ハンドボールは何処でやってたの?」
「どこまでやってたの?」
「教えてよ、松ちゃん!」
「……何で知りたいんですか?」
「みんな知りたいよ、高さん凄いから!」
「高松ちゃん、何処でどんな成績だったの!」
「教えてよ!」
「私も知りたい!」
「私も知りたいです!」
「高松さんの経歴は知りたいですね!」
「気になりますよね!」
教室に入って来た3人の他に一年の担任の先生や橘も話に参加してきた。
「僕は別に知りたくないよ!」
『山田先生は黙ってて下さい!』
「うっ……すいません………」
「みなさん、山田先生に冷たいですよ……山田先生が聞きたくないという事ですので、この話はここまでですね」
『!?』
「それはないよ、松ちゃん!」
「教えてよ、康介さん!」
「教えて下さい!」
「山田先生が嫌がる事は出来ませんね」
「ちょっと、山田先生!撤回して下さい!」
「変な事、言わないで下さい!」
「……悪かったですよ、高松さん……教えてやって下さいよ……」
「山田先生は悪くないですよ……私の経歴を知っても、それぞれの人生が変わる訳ではないでしょう?……私の事は、余り気にしない方がいいですよ」
『教えて下さい!』
「………そうですねぇ……高校3年間はハンドボールをやっていました……ただ、みなさんが思う程、大した成績じゃないし大した選手でもなかったですよ……」
「嘘です……」
口を開いたのは高木先生である。
今まで無言だった高木先生が高松の言葉に反応した。
「嘘ですよ、高松さんは凄い選手でした!……高校日本代表だったし、高校では春·夏·国体連覇したじゃ」
「高木、静かに!」
高木先生の言葉に高松は言葉を被せた。
「知っているからって、本人に許可無く喋るのは感心しませんね……25年前にも言いましたよ………」
「高松さん私の事、気が付いてたんですか?」
「はい、分かってましたよ」
「何時から……」
「初めてこの学校に来た時です」
「なら、話してくれれば良かったのに……」
「別に、過去の話をする必要は無いですからねぇ……懐かしい話をする為にこの学校に来た訳では無いですからねぇ……」
「何?…高木先生は高松さんの知り合いなの?」
「全国制覇か……」
『やっぱり凄い!』
「ところで、松ちゃんと高木先生の関係は?」
「……高松さん……」
高木先生は高松を見る。
「高木先生は、私の後輩です……高木先生が言った事は事実ですが、大した事をしたとは思って無いです……周りが凄かったんです……それだけです」
「だそうです!」
「高木先生ずるい~!」
「そうですよ、教えて下さい!」
納得いかない橘と鈴木先生だったが、他の者は納得らしい。全国を制覇した選手なら、確かに凄い筈である。
最も、それだけでは説明が付かない事もあるのだが……
高松はパソコンを持って、5組に移動した。
高木先生は橘と鈴木先生から質問を受けるが、
「先輩から注意を受けましたから……」
と少し勝ち誇った表情で話し、2人は悔しそうな顔をしている。
「……みんな、僕の事を忘れてない?」
山田先生の呟きが虚しく響いた。
高松の過去……
何かあったんでしょうね……




