定食屋のマスター絶好調!
高松は大変そうです。
何があるやら……
高松はいつもの定食屋に向かった。
車には、橘と鈴木先生が乗っている。助手席は高松の荷物がある為、2人は後部座席に座っている。高木先生は車で付いて来ている。
駐車場に着くと、4人はお店に入って行った。
「いらっしゃいませ〜!」
「お久しぶりです」
「おお〜康ちゃん!……よく来たね!」
「今日も連れが居まして……」
「この間の可愛いお嬢さん?」
「マスター、可愛いなんて……」
高木先生は照れている。
「あれ?…他にも可愛い子が居るじゃない?」
「初めまして、鈴木と申します」
「私は橘です!」
「康ちゃん、モテモテだね!…どの娘が本命?」
「……マスター、絶好調ですね……」
「そう?…今日はいい事があったからね!」
「いい事?」
「孫が結婚決まったんだよ!…これで康ちゃんが決まれば、言う事ないんだけどね!」
「それはおめでとうございます。私は今の所、予定は無いです」
「でもさ、こちらのお嬢さん達をいつまでも待たせる訳にはいかないでしょ?」
「それは、私に好意がある事が前提です」
「私は用意出来てますよ!」
「私だって!」
「私は2人と違って若いから、まだまだ待てますよ!」
「あら、私だって20代です!」
「別に歳は関係無い筈です。決めるのは高松さんです!」
「マスター……からかうのは辞めて下さい…」
「はっはっは、ごめんごめん……でも、俺は本気だよ!」
「はいはい……とりあえず、お茶をお願いします」
「はいよ!」
4人はメニューを見ている。
「悪のりはNGですよ」
「悪のりのつもりは無いです!」
「いいじゃないですか?」
「それより、何がおススメなの?」
「ふっふっふ……特別定食ですよね、高松さん!」
「そんなのがあるんですか?……私もそれで!」
「私は康介さんと同じで!」
「分かりました、それでは……」
高松は手を上げて店員を呼ぶ。
「特別定食を2つと、ふわトン定食2つでお願いします」
「はい、かしこまりました!」
店員は下がっていく。
「高松さん、ふわトン定食って?」
「たまに食べたくなる定食です」
「どんな定食なんですか?」
「まぁ、そのうち来ますよ」
マスター自らが定食を運んで来る。4つなので、2回往復している。
「康ちゃん、オマケでトンテキと唐揚げ付けといたよ!…こっちはトンカツをふわトンに変えといた!」
「マスター、同じ定食になってますよ……」
「びっくりだよね、出来たら同じ物なんだもの!」
「「「あっはっはっはっは!」」」
「マスター、笑われてますよ……」
「いいじゃない、楽しそうで!……ね、そうだよね!」
「「「はい、楽しいです!」」」
「じゃあ、しっかり食べてってね!」
マスターは厨房に戻っていった。
「楽しいマスターですね!」
「まぁ、楽しいのは確かですね……」
「康介さん、食べましょう!」
「そうですね、頂きましょう」
『頂きます』
全員で定食を食べ始めた。
かなり好評であり、3人は食べるのに夢中で話を忘れている。高松はそんな3人を見ながら、ゆっくり自分のペースで食べている。
3人が食べ終わる。
「美味しかった!」
「ふわトン、凄く美味しい!」
「トンテキも美味しかった!」
「満足頂けて、幸いでございます」
「もっと早くに教えて貰えば良かった!」
「本当〜、休みの日に来れたのに〜!」
「私は康介さんとちょくちょく来たいな〜!」
奥からマスターが出て来る。
「どう?口に合った?」
「合いました!」
「美味しかったです!」
「最高でした!」
「それは良かった、康ちゃんは小さい頃からここに来ててね……」
「ちょっとマスター!」
「いいじゃないか、康ちゃんは昔からいい奴だって話なんだから……ねぇ?」
「「「聞きたいです!」」」
「……変な事言ったら、無理にでも止めますからね……」
「はいはい…親父さんと、そういう所は似てるんだから………康ちゃんはさ、昔から大切な事はなかなか言わないんだ……だから、康ちゃんから話を聞き出すのは大変なんだ……」
「そんなに大変なんですか?」
「大変だよ、俺の息子がさ……康ちゃんの自転車を壊しちゃったんだ……息子も怒られると思ったんだろうね、康ちゃんに内緒にして欲しいってお願いしてさ……」
「それでどうなったんですか?」
「結局康ちゃんは自分で壊したって言ったんだ……後で息子にその話を聞いて、親父さんに謝ってお金を渡そうとしたんだけど、康ちゃんが自分で責任取ったからって、お金は取らずにさ……お年玉で自転車買ったんだよな?」
「何言ってんですか?……マスターからのお年玉の額が凄く多くて困りましたよ」
「俺は嬉しかったの……あの時から康ちゃんのファンなんだ、俺は!」
「康介さんらしいですね!」
「なんだか想像出来ます!」
「今と同じで優しかったんですね!」
「何か間違えてますよ、大した事じゃないでしょう……」
「康ちゃんがさ、高校でハンドボールやって……どんどん実力付けて、どんどん凄くなって……本当に嬉しかったな〜……国体の後は親父さんと朝まで飲んでて、康ちゃんのお母さんとうちの奥さんに、こっ酷く怒られたっけな〜……」
「2人は飲み過ぎなんですよ」
「確かにそうだけどさ……あの時の酒は美味かった〜……康ちゃんが大学の時やその後も上手い酒は飲んだけどさ、あの時が一番美味かった〜……」
「今は飲んでないんですか?」
「今は酒は休み中!」
「なんでですか?」
「お酒好きそうなのに?」
「康ちゃんのお休みが終わるまでは、酒は休みなの……康ちゃんが休みを返上したら、俺の酒も再開……親父さんの墓でも行って、一緒に飲み交わすんだ……」
「結構ですけど、飲み過ぎないで下さいね!」
「なんだい康ちゃん……その言い方だと、休みを返上するのかい?」
「今はまだ準備段階です……10年以上も休みましたからね……」
「本当かい?……なら、今から楽しみだ!……おっと、仕事仕事……」
マスターは嬉しそうに厨房に戻っていった。
食事は高松が奢り、駐車場に移動した。
「高松さん、お休みは返上って?」
「色々ありましてね……まぁ、ゆっくりやりたい事をやっていきますよ……」
「どんな事をするんですか?」
「それは……見てのお楽しみですね」
「康介さん、何かすっごい輝いてる……格好いい!」
「ははは、ありがとうございます……格好いいかどうかはこれからです……さて、帰りましょうか?」
「高松さん、2人は私が送って行きます!」
「そうですか……それは助かります」
「え〜、私は康介さんと帰りたい!」
「私も高松さんに送って欲しいです!」
「いいえ、私が送ります!」
高木先生が物凄い形相で2人を睨む。
「「うっ………」」
「どうやら決まったみたいですね……では、よろしくお願いします」
高松は高木先生に頭を下げ、社用車に乗って実家に帰って行った。
高木先生の車の中は大変であった。
「余計な事して〜!」
「本当〜、1人で帰ればいいのに!」
「高松さんに迷惑ばかり掛けられません!」
「康介さんは迷惑じゃないです〜!」
「そうですよ、高松さんは私を送りたかった筈です!」
「そんな事は無いでしょう……はぁ、迷惑が分からない高校生と教師……高松さんが可愛そう……」
「ちょっと〜、40代のおばさんに好かれた方が可愛そうだよ!」
「高松さんには、私くらいの年齢がいいと思います!」
「ふざけるなよ!…高松さんは年が近い私が一番なの!」
かなりな言い争いが行われている。高木先生は、このコンビは2度と乗せないと心に誓った。
マスターは絶好調ですね!




