病院と高松……
高松が病気に……
球技大会の翌日、高松は午前中を有給休暇にし、病院に来ていた。
まだ高松が現役だった頃、怪我をする度に世話になった病院である。その時に担当していたドクターは現在もおり、部長となっていた。
名前が呼ばれ、レントゲンを撮ってから診察に移った。
「随分久しぶりですね、高松君!」
「…覚えていらしたんですか?」
「はっはっは、なかなか忘れられないよ……右膝が痛いのかい?」
「……物凄く痛い訳では無いんですが、多少の違和感がありまして……」
「こうすると痛いかい?」
ドクターは高松の右足を捻る。
「いや、そんなには痛まないです……」
「成る程……大丈夫、問題無いよ……まぁ、スポーツをするなら、しっかりトレーニングをしないとね!」
「大分鈍ってますかね?」
「そんな事は無いよ……ただ、いきなり動き過ぎて、筋肉がびっくりした感じなか?……しかし、40越えてこの体は凄いね……いつでも現役に戻れるんじゃないか?」
「ははは、ありがとうございます……考えてみます……」
高松の右膝は問題が無かったらしい。ホッと一息つく高松であった。
高松は午後から出社し仕事を進めて行く。
極めていつも通りである。
しかし、高松はある程度仕事を終わすとすぐに退社した。珍しく、残る事なく帰って行った。
帰った高松が向かったのは、24時間やっているトレーニングジムである。高松の住むアパートの近くの駅周辺に最近出来たのだ。
高松は入会の手続きをすると、早速着替えてトレーニングを開始した。
高松は主に右膝を中心に、基本的なトレーニングを約1時間続け、その後にトレーナーに手伝って貰い、かなり厳しいメニューを黙々とこなしていった。
結局、約2時間のトレーニングを行い、高松はジムのシャワーを浴びてアパートに帰った。
翌日からも高松は、仕事を早めに切り上げるとスポーツジムに行き、トレーニングを行った。
更に、朝もいつもより1時間以上も前に起き、朝のランニングを行ってから出社する。
当然、出社時間も早くなる為、仕事をいつもより早めに始めるので、当然仕事も早く終わる。
このルーティンを繰り返す事により、高松は毎日トレーニングを行い、自分の体を鍛えていった。
土曜日、高松は城北学院男子ハンドボール部の練習に参加する。
現役の高校生に混じり高松は一緒に動くが、現役高校生が疲れていくなか、高松は平気な顔をして練習を続けていく。
高松の練習をする姿に男子ハンドボール部も発奮し、いつも以上に集中の増した練習になっていた。
高松は男子の練習の後、高校のトレーニング室を使い、トレーニングを行っていく。その姿があまりにも集中している為、誰も高松に話し掛けられない。
高松は約1時間、しっかりと汗をかいた。
午後は女子ハンドボール部の練習である。
高松は女子の練習を見守りながら、1つ1つのプレーをしっかりと確認し、練習の合間に各自に課題を出していく。
インターハイ予選まで1ヶ月を切り、高松は残りの期間に少しでもレベルアップが出来る様に考えていた。
高松の分かり易い説明に、誰もが納得し練習していく。
3年生にとって最後になるかもしれない大会、誰もが悔い無く終われる事が望ましいが、なかなかそうはいかない。従って、少しでも悔いが残らない様にと考える事は至極当然な事である。
土曜日の練習が終わると、高松はすぐに帰って行った。高木先生が食事に誘ったが、本日は忙しいとの返答であった。
「もしかして、彼女ですか?」
高木先生のちょっとふざけた質問に、
「そうそう、そんな所でいいです。そんな感じそんな感じ……」
という訳の分からない返しをしながら、そそくさと帰って行った。
高松のそんな態度に何となく不満な高木先生が1人悶々としていたのは、言うまでもない。
高松は今日もスポーツジムに向かう。どうやら高松は、何か目的があって体を鍛えているらしい。
高松の本日のトレーニングもかなり厳しい物であった。
高松のトレーニングは、周りでやっている誰よりもきつく、見ている周りがその過酷さに顔を顰める程である。それでも高松はトレーニングを続けていた。
高松のトレーニングはずっと続いている。
水曜日の講師の後のハンドボールを手伝った後もスポーツジムに行き、体を鍛えている。
高松は少しずつではあるが、過去と向き合おうとしていた。その為にも、体を鍛え、昔に少しでも近付けたかったのである。
高松のそんな雰囲気が変わりつつある事に誰よりも早く気付いたのは橘であった。
「康介さん、最近何かあったの?」
橘からショートメールが入る。
「特には無いですが?」
「何だか変わったみたい!」
「気のせいでしょう」
「そんな事無いよ!」
「自覚してませんよ」
「だって、こうして返信をたくさん返してるもん!」
高松はここで気付いた。
確かにメールを何度も返している。前は一言しか返さないのが当たり前であったが、ここの所確かにメールでのやり取りを続ける事が多くなった。
しかし、この時高松は、自分がもっと変わっていく事を予想出来なかった。
それは誰もが同じ事ではあった筈だが、もしかしたら橘だけは予想していたかもしれない。
高松が何か行動してきました。
何を考えているのか……




