球技大会は続いている……
さて、球技大会は?
高松は橘とグラウンドに出た。
次の試合は5組と3組の試合であるが、橘は5組の応援席に居た。
「たーちーばーなー、俺達の応援しろよ〜!」
3組の男子達から大声を出されるが、橘は素知らぬ顔をしている。
「橘さん、みんなああ言ってるんだから……」
「いやいや、高木先生のがおかしいでしょ!」
「私は、高松さんが応援されないと可哀想なので……部活も頼んでるし、仕方ないですね!」
「私が変わりに応援しますから、先生はどうぞ、3組へ!」
「橘さんこそ3組にどうぞ!」
「2人共、3組にお戻り下さい!」
「「鈴木先生!」」
「高松さんが困ってますよ!」
高木先生と橘はグラウンドの高松を見た。高松は頭を右手で掻きながら、少し呆れた顔をしている。
高松の表情を確認すると2人は少し俯きながら、3組の応援席に移動した。
試合はなかなか面白い展開になっていた。
3組の方が押しているが、高松がシュートを決めさせない。高松を中心に5組はなんとか守り、カウンターで反撃するが、これがなかなか決まらず、無得点のまま前半が終了した。
ハーフタイム中にもう一つの準決勝、4組対6組の前半が始まる。
この試合も白熱しているが、こちらは前半からシュートが入り、2-3で4組リードで後半を迎えた。
3組対5組の後半、相変わらず3組は優勢に試合を進め、どんどんシュートを打っていく。
高松はこれを止めるが、ここで高松自身が言っていた問題が露呈した。
ハンドボールはGKがゴールエリアで触って後方にボールが飛んだ場合GKボールで試合再開するが、サッカーはコーナーキックとなり攻撃しているチームのチャンスが続く。
高松はボールをゴールに決めさせないが、ピンチを摘み取るまではなかなかいかなかった。
それでもゴールを守る高松、残り3分を切ってもスコアは0-0だった。
誰もがPK戦を考えていたが、3組はここでファウルをする。カウンターを仕掛けた5組のフォワードの足を引っ掛けてしまったのだ。
残り時間を考えると、これが最後のチャンスである。
誰が打つかをフォワード陣が話していると、
「高さんがいいんじゃねぇの?」
この一言でキッカーが決まった。
「………外してもしりませんよ……」
との事で高松のフリーキックになったが、これが意外に凄い事になる。
壁の横からカーブを掛けて、綺麗にゴールに吸い込まれていく。
ハンドボールのGKは、シュートを足を使って止める事があり足でボールを使う練習をする為、当然と言えば当然である。
芸術的なゴールで5組が1-0で勝利となった。
4組対6組の後半、4組は後半もかなりの攻撃を仕掛け得点を挙げていく。
6組も反撃するが、結果5-3で4組の勝利となり、決勝は4組対5組となった。
他の球技大会もほぼ終わり、1年のサッカーと共通種目の男女バレーの決勝を残すのみとなった。
共通種目では、それぞれ決勝に残ったクラスが応援に来ていたが、1年のサッカーは残ったクラス以外からも見学が来ている。高松のGKが凄いとの噂が広まったらしい。
4組の山田先生がチームに激を飛ばしている。
「いいか、絶対に勝つぞ……高松さん諸共撃破だ!」
『はい!』
一方、5組では、
「勝ったら私達女性陣で、手料理をご馳走します!」
「本当!……鈴木先生達の手料理ゲットするぜ!」
「楽しみだな………やる気出て来た!」
「大丈夫、うちには高松ちゃんが居るから!」
「頼むぜ介さん!」
「印籠でも懐から出しますか?」
「お?…松ちゃんギャグも調子いいじゃないか?」
「この辺の返し方に余裕を感じるね!」
「頼もしいわ〜!」
「……困りましたねぇ……私は疲れましたよ………」
「そう言うなよ松ちゃん!……絶対勝とうぜ!」
「そうだよ、優勝だ!」
「やるぞ〜!」
『おう!』
(出来たらベンチに引っ込みたい……)
高松以外が盛り上がっていた。
決勝が始まる。
前半、予想通り4組はガンガン攻めて来る。
2組と4組はサッカー経験者が多く、5組も居るが5組は3人、4組は全員が経験者であった。
さっきの準決勝同様、5組は守りに重点を置き、カウンターを狙う作戦の様だ。
前半は4組の攻撃を何とか凌いでいる5組という構図であったが、前半終了間際、カウンターが上手く決まり1-0で5組のリードとなった。
ハーフタイムとなり、一旦ベンチに下がる5組、
「もう少しだ、頑張ろうぜ!」
声を掛けて来たのは、佐藤健である。元々は佐藤がGKの予定であったが、高松と変わって控えに回った。
「佐藤君……」
「何、高さん?」
「後半、お願い出来ますか?」
『何言ってんだよ!』
「皆さん、私の膝はこれ以上は無理です。佐藤君に変わった方が優勝の可能性はあります……出来ますね、佐藤君……」
「高さん……分かったよ、任せてくれ!」
高松は佐藤とGKをチェンジした。
後半が始まると、高松は1人職員室に戻って行った。
試合が白熱していた事と、結構な人数が見学していた為、高松は上手く紛れ込みながら目立たない様に移動した。
職員室に戻り、高松は着替えた。その際に右膝のサポーターとその下にガッチリと固定したテーピングを外し、着替えが終わると氷を入れた小さなアイシングを右膝にテーピングで固め、スボンを降ろす。
「この程度で………」
高松は呟き、途中で呟きを止めた。
「康介さん、どうしたの?」
高松が振り返ると橘が居た。
「怪我でもしたの?」
「いや……年のせいですかね……疲れました」
「本当にそれだけ?」
「他に何かありますか?」
「ならいいんだけど……」
「……心配症ですねぇ……私は橘さんのテスト結果の方が気になります」
「何よそれ〜……そういえば、あの時アリスって言ってくれたよね?」
「お母さんと分ける為です……しょうがないでしょう、まさか富江さんと呼ぶ訳にもいかないし……」
「いいんだよ、いつでもアリスって呼んで!」
「はいはい、検討しておきます……」
「本当?」
「ええ、検討はしますよ……答えは出しませんけど……」
「ぶー、また意地悪!」
「はいはい、意地悪意地悪…」
高松はグラウンドに向かった。
「待ってよ〜!」
橘は高松の後を追いかけて行った。
球技大会の結果は、後半から出場した佐藤の頑張りで4組の攻撃を防ぎ切り、5組が見事に優勝した。
簡単な表彰式が開かれ、校長先生からそれぞれの優勝クラスに賞状が渡される。
賞状を持ちながらクラスに帰って行く5組に引っ張られる様に、高松も5組に連れて行かれた。
「5組、サッカー優勝おめでとう!」
『イエ〜!』
5組が盛り上がる。
「それでは、助っ人高松さんから一言!」
みんなが高松を見る。
「……困りましたねぇ……頑張った結果です、おめでとうございます……来年は、私も応援でお願いします……」
『あっはっはっはっは!』
高松の何とも言えない話に5組は大笑いだった。
その笑い声を聞き、
「くそ、高松め……必ず鈴木先生を取り返してやる………」
1人呟く山田先生の姿があった。
高松、1日ご苦労様!




