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最後の恋……  作者: 澤田慶次
30/221

高松とアリス……

橘アリスは高松の事が気になってしょうがない。

高松の後をすぐに追い掛けます。

1回戦が終わった高松は、職員室に戻り上着を羽織る。上着は薄手の前にチャックの付いたパーカーであり、高松がドイツに渡る時、本田からプレゼントされた物であった。

高松は職員室の自分の机に座った。高松以外は誰も居ない。

「失礼しま〜す!」

高松が声がした方に顔を向けると、橘が職員室に入って来た。

「康介さん、格好良かった!」

「……ありがとうございます…」

「康介さんて、凄いよね!」

「??…普通だと思いますが?」

「そんな事無いよ〜、ハンドボールも凄いし、サッカーも凄いじゃない!」

「……ただ上手く出来ただけです。たまたまです…」

「前にもそんな事言ってたよね?…本当の事教えてよ、康介さんはどんな人なの?」

「私ですか?……そうですねぇ……私は…高松康介、43歳、4月20日が誕生日なので歳が1つ増えました…O型で現在独身……こんな所ですかね…」

「足りないよ、ハンドボールの事は?……何で独身なの?……康介さんが前に言ってた、集中してた時期って何?……何でいつも優しく出来るの?」

橘は真剣な眼差しで高松を見つめる。

「………そうですねぇ………独身なのは…」

「相手が居ないって言うのは無し!」

「ははは、参りましたね……確かに相手は居ないんですけどね……結婚を考えた事はありました…ただ、タイミングが合わなかった…そんな感じです。集中していた時期については、これから分かる事です。自分なりの答えを見付けて下さい…ハンドボールは…関係無いのではありませんか?」

「関係なくない!……私はどうしても知りたい!」

「……拘りますねぇ……私とハンドボールの事を知って、何か得がありますか?」

「だって……だって、好きな人の事は知りたいって思うもん!…そんなの当たり前でしょ!」

「……ストレートに来ましたねぇ……でも、それは多分、勘違いですよ…」

「そんな事無い!」

「……橘さん、あなたは私を父親と重ねてるんじゃないですか?……だから、私が気になるんじゃないですか?」

「違う!……私は康介さんが…」

「私はあなたのお母さんとの方が歳が近いんです……どう考えても、あなたの気持ちは間違いである可能性が高い……」

「可能性であって、絶対じゃないでしょ!……何で康介さんは、ちゃんと向き合ってくれないの?」

「………少し話を戻しましょうか……私が優しい理由ですが、私は優しくないですよ……ただある程度、人生ってやつに見切りを付けてるんです……だから、見返りも求めないし押し付けもしない……」

「康介さん……」

「人生に見切りを付けている奴が結婚なんて出来ません……相手の人生を背負う責任なんて持てません……あなただけでは無い……私への好意は、お応え出来ません……私には、そんな権利は無い…」

「何言ってるの、康介さん……」

「後、ハンドボールの事でしたね……確かにハンドボールはある程度やっていました。期間にして約14年間、30くらいまでやっていました……私にはある程度の期間という感じです……これで大丈夫ですか?」

「何で康介さんは、人生に見切りを付けてるの?…何で気持ちに応える権利がないの?」

橘の目からは涙が溢れ出した。

「………ある程度諦めて生きていた方が楽なんです………誰にも迷惑は掛けない……自分のせいで不幸になる者は現れない……恩義ある大切な人を不幸にした私には、誰かと幸せになる権利は無いのかもしれません……」

「そんなの分かんないじゃん……やって見なければ分からないでしょう?」

「やってみて、誰かを不幸にするのは頂けません……謝っても謝りきれません……」

「康介さん…」

「さぁ、話はこれくらいにしましょう……球技大会が残ってますよ」

「待って、逃げないで!」

「……………」

「ちゃんと答えてよ……何で向き合ってくれないの?何でちゃんと見てくれないの?……昔に何かあったかも知れないけど、大切なのは今でしょう?……私は康介さんをこんなに必要としてるのに………」

「橘さんらしい、前向きな発言ですね……とても素晴らしいです……そうですねぇ…確かに今が大切なんです。良く分かってるんですけどね……それでも私は過去に拘ってしまう、弱い男なんです……愛想が尽きたでしょう?」

「何で自分をダメだって言うの!」

橘は高松の元に走って行き、高松に抱き付いて泣き出してしまった。

「康介さんはダメじゃない、凄い素敵な人なんだよ!」

高松は右手で自分の頬を掻きながら、左手で優しく橘の頭を撫でた。

「ありがとう、橘さん……本当にありがとう…………今はまだ、何も応えられないし、前に進めていないけど……ちゃんと前に進んで、いつかちゃんと応えます……今はそれじゃダメですか?」

橘は高松から離れ、高松の顔を真っ直ぐに見つめる。高松も真っ直ぐに橘を見つめた。

「分かった、大丈夫……それまで待ってる!」

「でも、応える前にいい人が居たら、遠慮なくそちらにいって下さいね」

「何よそれ〜?」

「そこは約束して下さい」

「分かりました〜」

「1つだけ、私から言わせて下さい」

「何ですか〜?」

「……泣くのは反則です……ずるいですよ」

「あ〜!康介さんの弱点なんだ〜!……分かった、何かあったらすぐに泣く!」

「いや、そうじゃ無いでしょう」

「あははは、康介さんが焦ってる!……楽しい!」

「あのね……楽しそうなので、まぁ、いいとしますか……」

「康介さん、一生独身で居るつもりだったの?」

「微妙ですねぇ………でも、結婚は悪くは無いとは思います」

「それなら、私にも可能性はあるね!」

「はいはい、可能性なら確かにありますね……」

「あ!認めた……少しは向き合ってくれたね!」

「……そういう事にしておきます……」

高松は橘に押し切られる形になった。橘の真っ直ぐな気持ちに応えないといけないと思った。

そして、多分これが、高松康介のこれからを変えていく分岐点だったのかもしれない。

高松は知らず知らずのうちに、失くした何かを少しずつ取り戻していく。

高松が少しずつ変わっていきます。

高松、どう変わるのか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 高松さん、少しずつ何か過去にあったから 今のような考え方になったのですね。 少しずつ、またかわっていきますね!
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