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最後の恋……  作者: 澤田慶次
25/221

何げ無い金曜日?

高松は今日も仕事……

大変みたいだね……

高松は会社に向かった。電車の中で会社携帯のチェックをする。毎日のルーティーンである。

ショートメールが4件あった。

橘からのメールは、毎朝・夕に入って来る。大体が学校に行く事と学校から帰って来た事、学校であった事の報告である。

本日も、[学校に行って来ます!]と短い物であった。高松は[行ってらっしゃい]と返信した。

高木先生と加藤先生からもメールが届いていた。今週の土日に県北大会があり、来て欲しいとの内容だった。高松は土曜日の午前中に用事かある為、あえて約束せず、[行けたら行きます]と返した。

もう1つあった。

[今度食事に誘って下さい!また、お弁当作って来ます。私の番号、登録して下さいね! 鈴木]

高松は文面を確認し、また絡まれる事が増えそうだと思った。お弁当のお礼と番号登録の旨を返信し、鈴木先生の番号を登録した。


高松は社用車にて駅から自分の事業所に出勤した。

時間は8時、始業時間の9時までまだ1時間ある。高松は早速パソコンを開け、仕事に取り掛かった。

本日の仕事はかなり詰まっている。

9時少し過ぎに初回サービスの同行、10時には入居があり、11時から市役所に行き、帰ったら訪問介護に必要な各ご利用者の書類のチェック、更に14時には訪問介護の契約がある。15時にホームページの更新、これは本社から義務化されている事であり、月1回の更新が必要で本日が締め切りである。16時に派遣会社の担当と、その後に人材紹介会社の担当と打ち合わせや金額等の話をし、そこから自分の仕事である。

本日も残業になりそうである。


本日の出勤者全員が出勤してきたが、高松はサービス同行の為に朝礼は任せてヘルパーと出て行った。

激務の様だが高松にとってはいつも通り、高松は何も気にせず業務を進めていく。

予定通りに午前中が終わり、昼食は摂らずにそのまま業務を続ける。高松は仕事の時、基本的には昼食を摂らない。忙しい毎日の為、それが当たり前になってしまっていた。その為に講師の日も買って行く事を忘れる事がある。


15時30分を少し過ぎた頃、事業所の電話が鳴った。高松が電話に出る。

少し話をした後、高松は渋い表情になって電話を切った。

「田中主任、悪いけど今から夜勤探して貰えないかな?」

「休みの電話ですか?…今からだと見つからないかもですね、とりあえず電話してみます」

田中がすぐに何人かに電話するが、なかなか見つからない。高松はホームページの更新に紹介会社と派遣会社の担当と会う為、そちらを優先する。

高松が各会社の担当との話し合いが終わった後、田中から話をされた。

「高松さん、見つかりませんでした……」

「そうですか、しょうがないですね」

「どうしますか?……自分なら何とかなりますよ!」

「いや、明日も出勤でしょ…私がやりますよ」

「高松さんも明日は用事が……」

「大丈夫ですよ、明日は勤務上公休です。何とかなるでしょう」

高松はこのまま夜勤をやる事になった。


介護事業の夜勤は少し変わっている。その会社によって多少の違いはあるが、夕方から夜勤が始まり朝まで勤務、勤務としては夜勤入・夜勤明となりこれで2勤務、その後は基本は公休になる。

高松の所も例に漏れず、16時から翌10時まで、休憩2時間だが1人夜勤の為に明確な休憩時間は無い。

高松は明日10時までは勤務する事になった。

18時を過ぎると課員は退社していく。田中は1人、遅くまで高松に付き合っていたが、20時を過ぎた辺りで一旦夜勤業務が落ち着く為、高松は田中を帰らせた。勿論、しっかりと残業を付けてである。


高松はパソコンで本日の自分の業務を始めた。

21時を過ぎた頃、高松の会社携帯が鳴った。

「はい、高松でございます」

「……玲子です。高松君、今大丈夫?」

「大丈夫って言えば大丈夫ですが?」

「出来れば会って話したいんだけど…」

「それは無理ですね…本日は朝まで仕事です」

「……だったら、仕事場まで行ってもいい?」

「もう遅いですよ」

「時間は大丈夫!、娘にも言ってあるし!」

「場所、知らないでしょう?」

「カーナビがあるから……ダメ?」

「………気を付けて来て下さいね」

「何で電話番号知ってるか聞かないの?」

「橘さんのお母さんですかね……まぁ、分かっても分からなくても事実は変わりません……それではお待ちしています」

高松は携帯を切った。


そろそろ22時になろうかという時、本田の車が駐車場に入って来た。

高松は職員入口を開け、本田を迎え入れる。

「ごめんね、高松君…」

「とりあえず、中へどうぞ!」

「ありがとう、高松君!」

高松と本田は事務所の椅子に座る。

「で、話したい事って何ですか?」

「仕事なんだけどね……私、今介護の仕事してるの」

「成る程……それで?」

「今の所、辞めようと思って……高松君の所、空きは無い?」

「ある事はありますよ、勤務形態は?」

「出来れば正社員!……難しいかな?」

「募集はしてるから、多分大丈夫でしょうけど……後で履歴書持って来て…面接しないといけないですね」

「履歴書なら持って来たんだけど…」

本田は履歴書を高松に渡した。

「6月から勤務出来る予定……」

「準備がいいですね……月曜日に本社に伝えて相談の形を取りますので、水曜日には連絡出来ると思います」

「ありがとう、よろしくね!」

「………用事はそれだけですか?」

「……分かっちゃうか…高松君、いや、康君…何で本当の事をみんなに言わないの?」

「本当の事?」

「康君、ハンドボールはちょっとじゃないでしょ!……日本初のプロだったでしょ、高校でも大学でも日本一になったし……」

「やっていた期間は10年と少しです……大した期間じゃない……」

「10年以上もやっていて、ドイツでプロになってオリンピックで銅メダルを獲得した……隠す必要なんて無い、凄い経歴でしょ!」

「特に自慢する経歴でも無いでしょう……私の経歴は関係無い、チームが強くなる為には必要無い情報ですね」

「どうして?……なんだか、康君が思い出したく無いみたい………怪我して引退した時、何があったの?」

「成る程、それが聞きたい事でしたか………特には何も無いですね、あそこが精一杯…そういう事です…」

「絶対に違う!…それなら事実を隠す必要無い!」

「事実は隠していません、教える必要が無いだけです……私自身は大した選手じゃなかったという事です……」

「違う、絶対に違う!……何で話してくれないの?…お父さんも亡くなってるんでしょう?優しくていい人だった……康君がハンドボールを辞めた時期と重なる…何かあったんでしょう?」

「親父か……関係無い…関係は無いです………あの時、私は限界だった……それだけです…ただそれだけ…私はやはり、大した男ではなかった……」

「康君………」

「みんな買い被りなんですよ、過大評価し過ぎです……さて、昔話は終わりにしましょうか……気を付けて帰って下さい」

「……もう1つだけいい?」

「何ですか?」

「あの時……康君が24歳の時で私が25歳……あの時私が、もし私が誰とも付き合って無かったら……康君を待っていたら、私と一緒になっていた?」

「……私は無責任な男ですからね…」

「康君!」

本田は厳しい顔を高松に向ける。

「………あの時…あの時やっと、誰かと生きていく決心が付いたんだ……やっと決断が出来た……」

「……そっか……私が待てなかったんだね……康君を信じて待てなかった、私が馬鹿だったんだね……」

「さて、どうでしょうかね?……今の私はこんな感じです…あながち間違いではなかったと思いますよ」

「ははは、相変わらず優しいね……そういえば誕生日おめでとう!……康君も43歳だね!」

「よく覚えてましたね、自分が忘れてましたよ……」

「康君、あの時言ってた……自分の誕生日が来て、私の誕生日の8月20日が来るまでは同じ歳だって…やっと追いついたっていつも言ってた……」

「そうですか?そんな事言ってましたか?」

「言ってたよ〜、もう!」

「とりあえず、気を付けて帰って下さいね…」

「ありがとう……結果、期待してます、高松管理者!」

本田は帰っていった。

高松は本田を見送った後、改めてパソコンに向かい仕事を進めた。

以外な過去がありました……

なんだか、複雑そうですね……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 高松さんはまだまだいろんな過去がありそうですね。 石谷さんはよく知っていたりするのですかね。 まだ隠された何がありそうです。
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