デート?いやいや、人がいいだけ!
高松は送っていく事にした様です。
竜舞駅…何処?
高松は駐車場に止まっている会社の車に少女を案内し、カーナビに目的地である竜舞駅をセットする。
少女を乗せた車は竜舞駅目指して走り出す。目的地までは約70km、なかなかの距離である。
「そういえば、自己紹介がまだだったね…」
「高松康介さんですね?」
「あれ?名乗ったっけ?」
「名刺に書いてあります!」
「そうか…まぁ、変わった縁だけど、よろしくね…」
「はい…私は…」
「別にいいよ…接点は無さそうだしね!」
「…私は、橘アリスです…何かの縁ですので、覚えて貰えると嬉しいです…」
「そう?分かった。しかし、15歳だよね?こんな遅くにどうしたの?」
「親と喧嘩しちゃって…勢いで出てきたら、帰り方が分からなくなっちゃって…」
「成る程ね…親には電話しなよ、心配してる筈だからね…そうか、色々大変だな!」
「はい…今電話します…」
橘アリスと言ったその少女はスマートフォンから家に電話し、これから帰る事と遅くなる事を伝えていた。
高松は静かに運転している。
「電話しました…」
「怒られたみたいだね?」
「はい…でも、いつも否定ばっかりだから、こっちがイラつくのだって分かりますよね?」
「ははは…誰もが通る道だからね…でもさ、橘さんの親も通った道なんだよ…そう考えると、見方が変わるんじゃないかな?」
「…誰もが通った道ですか…でも、だからって頭ごなしに…」
「親子だからね…どっちも素直になれないんだよ…まぁ、いずれ分かる事だろうけどね…」
「分かりますかね?」
「分かるよ、いずれね…そもそも俺の半分も生きて無いんだ…今を楽しみながら、一生懸命に生きていけば、いつか分かるよ…」
「そうですかね?…それより、いくつですか?」
「42歳だよ、親より年上かな?」
「はい、私のお母さんは38歳です。離婚してますけど、弟と妹がいます!」
「そうか…まぁ、何にせよ、まだ先だな…」
「あの…相談いいですか?」
「何?」
「私、男の人を見る目が無いっていうか…いいかもって思う人が全然ダメなんです…どうしたらいいですか?」
「焦りすぎだよ…まだまだ若いんだから、ゆっくり見ていけばいいんだよ…いつか、必ずこの人っていう人が出てくるからさ!」
「高松さんもいるんですか?」
「俺か?…俺はね、そんな事に脇目も振らずに生きた時があった…そんな人を見逃した…気付いたら、40歳を超えて独身だよ…」
「でも、凄くいい人じゃないですか?」
「そうかな?…俺はそんなにいい人じゃないよ…ただ、年齢を重ねただけ、若い人よりは冷静でいられるくらいかな?」
「私をこうして助けてくれたじゃないですか?」
「たまたまだよ…気まぐれさ…知らない人に簡単に付いて行っちゃダメだよ!」
「はい、気を付けます…」
「今高校生?」
「来年です…」
「大変だよな、色々考える事もあるだろうし…周りは子供扱いするから頭にくるし…やる事はいっぱいあるのに、時間は足りないしな!」
「そうなんですよ…周りはうるさいし、子供扱いするし、私だってちゃんと考えてるんです!」
「分かるよ、ちゃんと考えてる事…だけどね、まだ経験が足りない…だから周りはうるさいんだ…全部聞けとは言わないけど、頭の片隅にでも残しておけばいいさ!」
「はい…」
2人は色々な話しをしながら目的地に向かった。
橘の考えを高松は否定する事なく、アドバイス的な事を返しながら運転していた。
久しぶりに高松は楽しんでいた。
目的地に着いた。
高松は橘の家の近くまで送り、そこで降ろす。
「寄って行って下さい!」
「遅いから遠慮しとく…」
「でも…」
「早く帰りな…俺は明日も仕事だ…」
「あの…」
「気にすんな…俺が勝手にやった事だ…」
「あの…ありがとうございます!」
「おう、じゃあな!」
高松は車から降りる事なく帰って行った。
橘は家に入って行った。
高松は少し走った所で車を止め、カーナビに自分のアパートの住所を入力する。
「目的地まで70km、約2時間掛かります」
無機質な声がカーナビより流れる。
「おう?そんなにか?…この辺分かんねぇし、ナビ通りに行かないと帰れないしな…明日も俺は仕事なんだが…」
高松はスマートフォンを見る。
時間は23時13分と表示されている。
「明日、遅刻出来ないよなぁ〜……とりあえず帰ろう…」
高松は一路、アパートを目指して運転した。
結果として、高松は自分のアパートに到着した時は翌日になっていた。しかも、社用車を乗って来た為、社用車で出社しないといけない。
高松は翌日の会社への通勤時間を考え、シャワーを浴びてすぐに眠った。
明日の出勤の事を考えると大変ではあるが、今日の事は特段悪い事だとは思わなかった。
長い1日が終わったが、明日も仕事…
中間管理職はきつい!