日曜日はハンドボール?
日曜日、高松は部活?
大変だ……
高松は昨日の土曜日に遅くまで仕事をし、本日は公休を取っていた。高木先生から連絡を貰った為、女子ハンドボール部のコーチに行く予定である。
高松は最寄りの駅まで歩き、事業所近くの駅まで電車で行き会社の車で城北学院に行く予定である。
高松は準備をし、6時半頃にはアパートを出た。途中のコンビニで軽めの朝食を摂りながら移動した。
駅に着いて社用車に乗り、会社携帯を見るが特に何も連絡は無い事を確認し、城北学院に向かった。
学校に着き、職員室に行くと高木先生と加藤先生が来ていた。
「おはようございます、高松さん!」
「今日もお願いします!」
「2人共おはようございます、加藤先生からは依頼されてませんよ?」
「この前言ったじゃないですか〜?お願いしますよ!」
「……分かりました…」
「高松さん、午前は女子、午後が男子です!加藤先生と2人で両方見る予定ですので、高松さんもお願いします!」
「いや〜、高松さんが居ると安心ですね〜!」
「…褒めても何も出ませんよ…」
高松はロッカー室に行き、着替えを済ませると加藤先生と高木先生と3人で体育館に移動した。
3人が体育館に着いた時間は9時少し前、練習の準備も終わり全員が集まっている。3人に気が付くとキャプテンが声を出し、全員が走って集合する。
「集中して怪我をしない様にしましょう!」
『はい!』
「しっかりと練習しましょう!」
『はい!』
「……………」
「高松さん、何か言って下さい!」
「…前に言った通りなので……しっかりとお願いします」
『はい!』
練習が始まった。
準備運動からコート内を右回りに10周、左回りに10周を行いフットワーク、キャッチボール、シュート練習に移って行った。
練習はしっかり声も出ており集中している様である。
シュート練習は斜め45度からのシュートとサイドシュート、ポストシュート練習まで終わるとワンマン速攻の練習に移る。
ワンマン速攻の練習が終わると高松から声が掛かる。
「2人で走って、キーパーは手前の選手を越えてパスを出す事…終わったら今度は手前の選手にパスを出し、1対1でシュートまでの練習…」
『はい!』
それぞれが移動し練習に移るが、キーパーのパスが上手くいかない。高松は練習を止め、もう一度最初からとし、高松がパスを見本で2〜3本出す。
「ポイントは前の選手を越える事、ボールはワンバウンドしても構わないよ…」
「はい!」
今度はキーパーのパス出しは何とかなっている様だった。その光景を見て、高松は椅子に座る。
「流石高松さんですね!男子の方も指導お願いします!」
「加藤先生…自分でもしっかり指導して下さい」
「はい、頑張ります…」
「高松さん…流石にポイントを押さえてますね!」
「…なんとなくです…」
高松からの指示された練習が終わると休憩になり、休憩後に4対4、6対6をやり本日の練習は終了となる。
練習が終わると部員達は集合する。
「体調管理も気を付けて下さい!」
『はい!』
「試合まで集中していきましょう!」
『はい!』
「…練習の為の練習をしない様に、試合の為の練習をして下さい」
『はい!』
3人は体育館から出て行こうとした時、高松は部員に声を掛けられ自主練に残る事になった。
シュートやディフェンス、キーパーのポジショニング等をある程度教え、高松は体育館を後にした。
体育館から出て、高松は少し考えながら歩いていた。ハンドボールの練習についてである。
「高松君?」
高松はびっくりして後ろを振り向いた。
そこには1人の女性が立っていた。本田玲子、昔の高松の彼女である。
「やっぱり高松君だ!…元気だった?」
「本田さん……まぁ、それなりに…」
「こんな所で会うなんて、本当に偶然ね!」
「ああ……本当に偶然だね…」
「高松君、ここで何してるの?」
「今日はハンドボール部の臨時コーチ…」
「高松君なら適任だね!」
「そっちこそ何してるの?」
「娘の迎え…私の娘、ハンドボール部なの!」
「!!!…そう…」
「あ、お母さん!」
「由美!…速く着替えて来なさい!」
「は〜い!」
「…本田由美が娘ですか…」
「そう、娘とその下に息子が1人!」
「そうですか……」
高松と玲子で話していると、本田由美が着替えてやって来た。
「おまたせ、お母さん!」
「お疲れ様!」
「お母さん、松ちゃんと知り合いなの?」
「松ちゃんって…」
「本人がいいって言ったの、ねぇ松ちゃん!」
「…そうだね…」
「ほら〜、だからいいの!…それより2人はお知り合いなの?」
「そうね、昔の友達かしら!」
「……そんな所ですね…」
「そうなんだ〜、お母さん、松ちゃんハンドボール凄いんだよ!」
「それはそうでしょう…なんたって高松君は…」
「私の昔は必要ありません……今は自分達の事をしっかりやって下さい」
「高松君…昔に何かあったの?…」
「私は今の事で精一杯なんです…色々大変なんですよ…」
「松ちゃん、お母さんも大変なんだよ…離婚してるんだから!」
「こら、余計な事言わないの!」
「…ごめんなさい…」
「…人それぞれ、大変ですよね……私はこれで…」
高松は頭を下げて職員室に向かった。
高松の背中を見つめる玲子、その背中が懐かしくももう戻れない昔である事を実感させられた。
何やらまだまだ終わらない日曜日……
本当に大変だ……