Scene17.5 未來さんと夏音ちゃんと七夕
まだ梅雨の季節。私と夏音ちゃんが付き合う前のお話。
駅前に大きな竹が設置されている。それを見て私は指をさした。
「夏音ちゃん、私たちもお願い事書いてみようよ」
もうすぐ七夕だった。
「子供じゃないんですから…」
呆れながら言う夏音ちゃんのことを無視して、私は係員から短冊を2枚とペンを受け取った。1枚を夏音ちゃんに渡す。
「ほら、一緒に書こ?」
「……はぁ、わかりました」
そう言ってスラスラと書く。最初から願う事が決まっていたのだろうか。
「なんて書いたの?」
「健康のことですよ」
「……なんかおばあちゃんみたい」
「……そういう未來さんはなんて書くんですか」
「うぅん、まずはお金が欲しいのと……。あとはあのゲームも欲しいし……」
「小学生みたいですね……」
思わず照れ隠ししてしまった。それでもこの願いを彼女に言うのは、この時の私からしたら、なんだか恥ずかしかった。
次の日のバイト帰り、私はまた駅前に来ていた。係員から短冊を1枚受け取った。
「叶うといいなぁ……」
そして私は、そこに本当の願いを書いた。
仕事帰り、駅前を通ると視線は自然と飾られた短冊に向いていた。
あの時、私が書いた願いは半分嘘だ。勿論健康も大事だが、それ以上に願いたいことがあった。
短冊を1枚受け取る。
そこに本当の願いを書き、飾ろうとする。すると1枚の短冊が目に映った。
『大切な人との暮らしがずっと続きますように。 未來』
未來の書いた短冊だ。
そこに書かれていた願いは、先日に言われたものとは別だった。
私の書いた短冊を見る。
『今の生活が長く続きますように。 夏音』
未來の願いと似ていた。しかし、決定的に違う部分があった。彼女は永遠を願っていた。それに比べ私は、長くと。終わりを先延ばしにするのを願っていた。
母の事を思い出す。私は永遠を願うことなんてできない。
だからこそ当時の私には、未來が眩しくて、苦しかった。
でも今は……。
私はずっと、未來と一緒にいたい。そう願っていた。




