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未來さんと夏音ちゃん  作者: 梔子
2章 未來さんと夏音ちゃんと未来
18/24

Scene15 夏音ちゃんとダイエットとドーナツ

未來(みらい)さん、外に出ましょう」

「…なんで?」


 急に夏音(かのん)ちゃんが言ったので私は首を傾げた。特に外に用事もなかった。


「最近の未來さん、運動しないのに食事の量はドンドン増えてるじゃないですか」

「うん、夏音ちゃんの作ったご飯おいしいからねぇ」

「そ、それは嬉しいんですけど……」


 彼女は顔を赤くしながら目を逸らした。よし、この方向で攻めるか。絶対に運動なんてしたくない。


「でも…、ずっとそうやってたら太っちゃいますよ?」

「大丈夫だって、私も夏音ちゃんも全然痩せて…、あぁ……」

 笑いながら夏音ちゃんのお腹を触った。意識してみると、確かに前より少しだけ柔らかくなったような気がした。思わず真顔になってしまう。


「外、走りましょうね」

「……はい」


 涙目で睨まれたら、断ることなんてできなかった。


「ちょっと……、休憩……」

「もうですか……?」


 十分ほど走ると、私の身体が悲鳴をあげだした。高校生の時はほとんど幽霊部員ではあったのだが、運動部に所属していたはずなのに。体の衰えと運動不足を実感していた。

 私が息を切らしている間、夏音ちゃんは近くにあった自販機でスポーツドリンクを買い、それを飲んでいた。


「一口ちょうだい」


 私が言うと、彼女は無視してスポーツドリンクを口に含んだ。

 仕方ない、この前のプレゼントで金欠だけど飲み物くらい自分で買おう。そう思っていると、彼女がこちらに近づいてきた。

 唇が重なり、冷たい液体が口内に流れてくる。二人の口からこぼれた液体が、地面を濡らした。周りに人がいなかったとはいえ、大胆すぎる。


「もう少しがんばりましょうね」

「……うん」


 次からはちゃんと自分で飲み物を用意しようと決意した。

 それから数十分走り続け、彼女も息を切らしていた。満場一致で今日はここまでで帰ることにした。


「早く帰ってシャワー浴びたい……」

「そうですね……」


 帰り道も走る元気は私たちにはなかった。


「……ねぇ」

「なんですか?」

「外でするのは恥ずかしいからやめよ?」

「花火大会の時は未來さんからしてくれたんじゃないですか」

「そうだけどさぁ……」


 それを言われると困る。ただあの時はお酒も入っていたので、かなりネジが外れかかっていた状態だったのだ。


「それとも、もっと人の多いところでしたほうがよかったですか?」

「……それはほんとに勘弁して」

「じゃあ明日からは自分で用意してくださいね」

「するけど…、ほんとに明日もやるの?」

「わかりました、じゃあ未來さんに何か頑張ったご褒美をあげますよ」

「それならあれ買って!」


 私はドーナツ屋を指さした。彼女が信じられないといった目でこちらを見た。


「……太りますよ?」

「明日もがんばるから!」

 彼女はため息をつき、財布を取り出した。

「ひとつだけですからね?」

「うん!」




「夏音ちゃん太っちゃうよ?」

「……うるさい」

 口の周りをチョコで汚した未來が言ってきたので、私は小声で文句を言った。テーブルの上に置かれたドーナツの入った箱を見る。

 すでに2個が私のお腹のなかに入っていた。それでも3つ目を手に取ってしまう。


「明日もがんばりましょうね」

「でも今日消費したカロリーは無駄になっちゃったねぇ」

「……まずは習慣作りですよ」


 言い訳してドーナツを口に運んだ。……甘くておいしい。


「明日から頑張ればセーフ……。明日から頑張れば……」


 何故おいしいものを食べているのに、苦しまなければならないのだろうか。


「私も一緒にやるからがんばろ?」

「はい……」


 彼女の気持ちは嬉しかったが、なんだか嫌な予感がした。




「未來さん今日のランニング行きますよ?」

「もうちょっと待ってぇ」


 未來はスマートフォンの画面を見ながら、床に寝転がっていた。


「……もうちょっとってどれくらいですか?」

「うぅん……、というか今日はあんまり気分が乗らないからなぁ……」


 嫌な予感が的中してしまった。


「未來さん……」

「……なに?」

「まさか……、飽きたなんて言いませんよね?」

「失礼な。最初から飽きてたよ!」


 私は呆れて彼女の腕を掴んだ。


「いいから、行きますよ」

「嫌だ……」

「そうやってたらご褒美あげませんよ?」

「じゃあ行く……」

 彼女が渋々立ち上がった。

「……食べ物以外ですからね」

 さすがにこの前のドーナツの悲劇を繰り返すわけにはいかなかった。外に出ると、涼しい風が髪を揺らした。

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