Scene11.5 未來さんと夏音ちゃんとギルド
普段ソシャゲをしない姉がここまでハマるとは思っていなかった。フレンド申請してきた姉のアカウントを見て私は驚いた。
「そういえば今度ギルドイベあるし、夏音ちゃんうちのギルド入る?」
「興味はあるんですけど……、知らない人と話すのはゲーム内でも緊張しちゃって……」
「大丈夫だよ、私と紫音ちゃんとあと一人紫音ちゃんの友達の三人でやってる身内ギルドだから」
ギルドというのは簡単に言うと、ゲームユーザー同士で作るチームのことだ。ギルドに所属することでユーザーは様々な恩恵を受けることができるのだが、こういった機能が存在するゲームの大半にはギルド対ギルドで争うイベントが存在する。
この手のイベントは、強いユーザーが多数所属しているギルドが勝ちやすいため、札束の殴り合いと揶揄されているが私たちにはあまり関係なかった。
「……まあ私たちもかなりエンジョイ勢だし、お姉ちゃんも全然遠慮しなくていいよ」
「そこまで言うなら……」
姉が渋々了承したので、私はスマートフォンを操作して勧誘メールを姉のアカウントに送った。
「でも夏音ちゃんなんでそのキャラ育ててるの? 人権キャラいっぱい持ってるのに」
「……別にどの子を育てようが自由じゃないですか」
未來が画面を覗きながら言った。姉が優先して育成しているキャラクターの見た目は、ボサボサの黒髪で長身の胸が大きい女性キャラだ。誰と重ねているのかは一目瞭然だった。気づいていないのは本人だけだ。
「というか、紫音の友達すごい強いね」
姉がそう言ったので、メンバーリストを開きここにはいない四人目のアカウント情報を開く。この前より格段に戦力が強化されていた。
「……スズ、今度はいくらつぎ込んだんだろう……」
涼香はこのゲームのヘビーユーザーだ。正直私は彼女のことが心配だった。
『まだバイト代の半分しか使ってないから……』
虚ろな瞳でガチャを回していた光景を思い出す。別に口出しをする気はないが、彼女の財布は誰かが管理しておくべきだ。
自然と彼女の財布を預かる自分の姿を想像してしまい、なんだか顔が熱くなった。
夏音ちゃんが私と紫音ちゃんと涼香さんのギルドに加入してから数日が経った。バイトから帰宅してゴロゴロしていると夏音ちゃんが興奮しながらスマートフォンの画面を見せてきた。
「未來さん! これ見てください!」
「へぇ、夏音ちゃんのお気に入りキャラSSRになるんだね」
見せてきたのはSNSに載せられたゲームの新キャラ情報だった。
「とりあえず今から課金してきます!」
テンションの上がっている様子の彼女を見ると、普段の私はああいう風に見えているのかなと考えてしまい、少し悲しくなった。
「……でもこれ性能そんなに強くないね」
性能を見た私がそう呟くと、彼女が睨んだ。
「いたっ、ごめん、やめて……」
彼女が無言で私のお腹を何回も軽く殴ってきた。
「……未來さんのバカ」
……わけがわからなかった。




