Scene10.5 未來さんと夏音ちゃんと水着
セミの鳴き声が聞こえてくる。
「そういえば、今年は海とかプール行けなかったねぇ」
「去年行く約束してましたもんね……」
「まあ、夏音ちゃん忙しかったしね……」
「そうですねぇ……。いやぁ……それにしても……」
夏音ちゃんの気持ちを代弁するように私は叫んだ。
「なんでこんな日にエアコンが壊れてるの⁉」
夏の終わりを感じたのはなんだったのか、本日の気温は真夏に逆戻りしていた。扇風機がぬるい風を送り続ける。私と夏音ちゃんはどちらも床に倒れ、ただうちわを扇いでいる。
「未來さんって家に水着持ってきてましたっけ」
彼女が突拍子のないことを言い出した。
「うぅん、多分引っ越すときに持ってきたとは思うけど」
「じゃあ今日は水着で水風呂にしましょう!」
彼女の頭が熱でどうにかなってしまったのではないかと、少し不安になった。
「冷たくて気持ちいいですねぇ」
「やっぱこれ無理があると思うんだけど…」
水着姿で水をいれた浴槽に浸かっている夏音ちゃんを見て私は呟いた。
「てかこれ大学生の時に買ったやつだからキツイんだけど…」
「は⁉ どういうことですか⁉」
私が胸を押さえると彼女が突然叫んだ。
「いやだってこれ四年前に買ったやつだよ?」
「私もそのくらいですよ……」
私は首を傾げた。彼女の着ている水着は水色のワンピースでとても似合っていた。
「あとこれ葉月と一緒に買ったからその時のこと思い出しちゃうし……」
「……未來さん、今ものすごい失言したってわかってます?」
夏音ちゃんに睨まれてから気づいた。彼女の言う通り、現在交際している相手の前で、以前の相手の話をするのはかなり失礼だった。
恐る恐る私も浴槽に入る。たしかに冷たさが気持ちよかった。目の前の彼女の顔を見ると、彼女は目を逸らした。
「ねえ夏音ちゃん」
「……なんですか?」
不機嫌そうに言った。
「来年は一緒に海行こうね」
「……そうですね」
「泊まりで遠くの海行こうよ。それでさ、一緒に水着買おう?」
「私のも選んでくれますか?」
「まあ、センスにはあんまり自信ないけど……」
そう言うと彼女の表情が明るくなった。よかった、機嫌は直ったようだ。
「約束ですからね!」
すると彼女は何かを思い出したようで、浴槽から出た。そして脱衣所に戻る。
「そういえば夏祭りの時にくじで水鉄砲当ててましたよね?」
あの日のことを思い出す。結果的にはいい思い出になったのだが、くじで散財したことを考えるとなんだか虚しくなる。
私が頷くと夏音ちゃんが笑いながら水着のまま部屋に走っていった。
「ちょっと水鉄砲持ってきますね!」
彼女が楽しそうでこちらも嬉しいのだが、風呂から出た後の部屋の惨状を考えると頭が痛くなった。
「まだまだ夏だなぁ……」
私は一人で呟いた。それでも、明日からは九月だ。秋はもう目の前まで来ていた。




