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愛しさと友情は紙一重

 最近、思う事がある。人は誰かを愛さないと生きられないだとか、そういった戯言は得意ではないが、ないのだが、芽生えてしまったのだ。愛着という感情が。


「でさー、その山田って奴がズボン越しで尻にリコーダーを刺して.......」


 私には放課後部活内で集まって女同士駄弁り合う経験が無かった。部長が話すその口調を聞く度、思わずホッとするのだ。


「望ちゃん、笑ってないじゃんか」


「ううん。ちゃんと笑ってます」


 美帆先輩の顔には『楽しい』『興味』といった文字が浮かび上がっている。こんな明るい空間に身を置いて他人を観察するのも卑怯かなと感じた私は部長に質問した。


「そう言えばこの部活はパソコン部なんですよね?パソコン弄らなくていいんですか?」


「いいのいいの。普段言えない事をぶっちゃける場も必要って事で。顧問もそう言って諦めてる」


「随分と適当ですね.......」


 とはいえ、一室を借りて行う部活である。それなりの存在意義は見せないと駄目らしく.......。


「タイピングだけは上手くなっとけって顧問が言ってたな」


「部長、そんなざっくりと」


「なんか問題でもあるか?」


「もっと無いんですか?具体的な目標とか」


 私はハッとした。こういう時、真面目過ぎて興冷めさせてしまうのがよくある事であったのだ。これはまずい、と思った。


「ハハ。言われればそうかもな」


「う、こちらこそ何か言い過ぎてしまって.......すみません」


「良いって事よ。軌道修正も案外必要かもしれないしな。なぁ、桃代」


 部長が問いかけるとその文化系の女の子は同じくと頷いた。


「それまではのんびりしてていいって事ですね」


「良いって事よ。ストレスフリーな方が世の中楽しいぜ?」


「あの.......部長後ろ」


「ん?」


 美帆先輩の後ろには話に挙がっていた「顧問」の姿があった。


「部長、あなたまた放課後サボる為に.......」


「勘弁してください」


 その後、私達3人は説教を受け続けるのでした。


 時は移って3人で帰宅の時間です。桃代ちゃんの方をちらと見ると『道草』『寄り道』の文字がソワソワと浮かんでいます。


「何処か寄る?」


「「賛成!!」」


 本当にサボる事には抜け目のないこのメンバーです。近くのコンビニで10円やそこらの駄菓子を買って河川敷に転がりました。


「そういやさ、望ちゃんって好きな奴いんの?」


「好きな.......?考えた事も無かった」


「おいおい、華のJKなんだぜ?少しはそういうのも考えてみるといいんじゃないか」


 私には青春という感覚が存在していなかったのです。中学は帰宅部全振りでとにかく陽キャの目をすり抜けて生きる事しか考えていませんでした。


「強いて言えば、部長さんが好きぐらいですね」


 自分で言って、数秒考えました。急に恥ずかしくなって鞄で顔を抑えるまでは。


「お前、そういう所大胆だな」


「誤解です!別にそういった趣味は.......」


「あら^~いいじゃないですか。私は推しますよ。そのカップリング」


「桃代さんまで!?こういうのってなんて言うんでしたっけ!『無理みが深過ぎる』ッ!」


 そう言いながらも私は照れ笑いを隠せずにいました。友情だとか絆だとかそういったものを信じていなかった自分も何かが変わったような気がするのでした。

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