表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

19 帰り道で

19 帰り道で


 その後で江ノ島を散策し、空が赤くなり始めた頃、海の見える街を後にした。日常とは違う雰囲気、デートによる胸の高鳴り、日常とは違う空間で過ごした余韻、帰り道と言う寂しさ等色々な気持ちが混ざり、車のなかでも話しはつきなかった。ヒロも時間を惜しむかのように色々な話を楽しんでいた。

 しばらくすると少し疲れもあり、言葉は少な目になった。少し混みはじめていたものの、渋滞することなく進み、見慣れた街に戻ってきたころヒロが話し出した。

「レイ、実はさ…」

「どうしたの?」

「私、神奈川の大学って言ってたでしょ。でも、本当はロンドンの学校なんだ」

「えっ」

 後ろの席で二人が顔を見合わせている。

「親の紹介も有って、春から向こうに住むことになっちゃった」

「ちょっと、何言ってもるの?ヒロ、よく分からないんだけど」

「ごめんね、うそついてて。早く話さなくちゃと思ってたんだけど、今日のこともあったから、なかなか言い出せなくて。許してね。キュウタ君もありがとうね」

「許してもなにも…。だって、あんなにジン君と仲良くしてたし…」

「ジン君には、今日1日、彼女にしてデートを楽しませて下さいって頼んだんだ。ね、ジン君。わがまま聞いてくれてありがとうね」

「いや…何言ってるんだよ。今日は楽しかったよな?」

 後ろの二人に向かって呼び掛けた。

「おぅ。楽しかった。弁当も美味しかった。それにしても突然だな…」

「で、いついくの?どのくらい?」

「出発は2週間後。最初の1年は帰らないと思う」

「そうなんだ…」

 田神は目を伏せて答えた。

「せっかく仲良くなったのに、寂しくなるな…」

 キュウタも適切な言葉が思い浮かばない、と言った雰囲気だった。


 ヒロの家に着いた。

「今日は本当に楽しかった、ありがとう」

「こちらこそ、ごちそうさま」

「ごちそうさま。今日の事は忘れられないよ」

「もうしばらく日本にいるから連絡するね」

 車を降りて荷物を取り出そうとトランクに廻った。一瞬だけ二人から死角になった。その時、ヒロの顔が近づき、唇が頬に触れた。

「ジン君、今日は本当にありがとうね。なんか、色々とごめんなさい。迷惑お掛け致しました」

「全然。可愛い子には優しくしろ、って言うのが我が家の家訓だからね」

「ありがとう。誉められると調子に乗っちゃうから」

「これ以上調子に乗らせたら大変だから、今の一言は撤回しておくよ」

 恥ずかしがることなく自分の気持ちに素直に行動するヒロ。自分の選んだ道に進むために1つの気持ちに諦めを付けたヒロ。人生は何故か試練の繰り返しだ。僕にはヒロの気持ちを受け入れ、処理するだけの能力があるのだろうか。

「本当にありがとうね。さようなら」

「元気でな」


 ヒロが車の中は三人になった。何となく雰囲気が重い。

「ジン君、知ってたの?」

 田神がミラー越しに真剣な視線を向けながら聞いてきた。

「いや、知らなかった。少なくても昼に弁当を食べるまでは」

「どういうことだよ、ジン」

 キュウタも不思議そうに聞いてきた。

「ちょうど水族館に着いたとき、トイレに寄っただろ。その時にヒロからメッセージが届いたんだよ」

「なんて?」

「春から留学するからみんなで遊びに行くのは今日が最後になる、だから、最初で最後になるけどわがまま許してくれって」

「複雑だよな…。それで仲良く振る舞ってたのか?」

「無理に、と言う訳ではないよ。純粋に楽しかっただろ?」

「確かに、ヒロの言葉に時折思い詰めたようなところがあったよね」

「そう言われるとそうかもな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ