01 悪友の思い付き
01 悪友の思い付き
高校時代の最後の新年を迎え、受験シーズンが始まった。
「なぁ、もうすぐ卒業だな」
帰り道でそう話し出したのは、ハンドボール部のキュウタ。身長は180cmを超え筋骨隆々、目鼻立ちも整っていて、好意を抱いている女子生徒も多いのではないか。クラスは違うが、3年生になって多くの時間を一緒に過ごしている。と言うのも、この学校は3年になると理系コースと文系コースに分かれる。そしてさらに選択授業を選ぶのだが、その選択科目が全て同じだった。なので、授業はほとんど一緒に受けているという間柄だ。
もう一つの共通点は、キュウタも進路が決まっているという事。校内で1・2を争う運動神経と恵まれた体格の持ち主は、スポーツ推薦で大学への進学が決まっている。年末に推薦入学者へ向けたオリエンテーションがあったのだけど、キュウタと僕の二人は異様に浮いているのではないか、と言う気がして落ち着かなかった。なかでも、終わり間際に「卒業を迎える最後まで気を引き締めるように」、などと言う注意事項は、成績優秀な他の推薦入学決定者に向けたものではなく、明らかに僕たち二人に釘を刺したのではないかと感じさせる言い回しに聞こえたのは気のせいだろうか。
「どうした、しみじみしちゃって」
いつもとなんとなく違う雰囲気を感じて、慎重にきりかえした。
「みんなバラバラになるって不思議な感じだよな」
「今だって学校で少し会うくらいじゃないか」
「同じ学校にいてたまにしか会わないのと、違う学校になって会わないのじゃ、状況がまったく違うだろ」
「なんだよ、卒業しても電話でもメッセージでも連絡しろよ、予定合わせるから」
最近の友達間の連絡、部活連絡等はほとんどかスマートホンのメッセージアプリを利用している。距離も時間も気にすることなくやり取りできると言う訳だ。
「お前とはそれで良いけど…」
「だろ、だいたいのメンバーは実家のままだし。今とあんまり変わらないだろ」
「だから、そうじゃね〜んだよ。卒業したらさ、生活エリアがまるっきり変わるんだから、偶然も起こせないだろう」
「なんだよ、偶然ていうのは」
「例えばさ、部活の帰りに自転車置場で待ってて「よ、久しぶり。今帰り?」なんて訳にはいかないだろ」
「それは偶然とは言わないだろ。キュウタ、お前そんな事してたのか?…ってことは…、えっ、誰のことなんだ?なんにも聞いてね〜ぞ?」
「まぁまぁ、いいじゃね〜か。でさ〜、無い知恵を絞って考えたんだけどさ………」
と言う事で計画されたのが、その名も『体育会系卒業祝賀会』。卒業を口実にみんなで集まる会を計画して、そこに現れた彼女と仲良くなるきっかけを作ろうと言う、何とも軽い思い付きなのであった。もう少し洒落た名前に出来なかったのかと言う不満をグッと飲み込んだことは理解して貰えるだろう。




