感動の結末!!(勘違い)
帰宅後、僕は魔法陣について再確認をしていた。
「やっぱりおかしい。」
そう、おかしいのだ。
一度覚えた魔法陣は細部まで正確に思い出せる。
スキルの力かと考えたが、実際自分にそこまでの能力はあるのだろうか。
スキルは自分の力を最大限に発揮するというだけで限界以上の力は出せないはずである。
したがって、シャーペンで細かくかいたとしても正確に読み取るにはノート1ページは必要になるような複雑な魔法陣を覚え続けられるのは不自然だ。
ならば魔法陣を覚えているのはこの世界の仕組みの1つなのだろうか。
そういえば魔法陣には規則性があった。
1週間かかると思われた暗記が3日で終わったというのはそういう理由だ。
おそらくだがこの規則性に気づいている者は自分の他にいないのではないだろうか、と思うほど細やかかつ、えげつないほどに複雑な規則性であった。
普通の人は細かいところの違和感に気づけてもさらに調べようとは思わず、偉大な発見でも見逃してしまうことが多い。
そんな細かい違和感を数百数千と見つけて、その上で全てについて深く調べるというのは、スキルで強制的にそうさせられた自分以外には出来ない芸当だと思う。
そして規則性を見つけたらやる事は1つ!
新魔法を創る!!
よし、スキルの力を総動員して魔法を創.....
「創らずに魔力増やす訓練をしよう。」
そうだった.....
新魔法を使ってもどうせ使えない。
そういえば魔力を増やすのに1番効率の良い方法は魔力を2割以下に保つという方法.....はっ!?まずいっ!!えっと今日の晩御飯は仕方ないから非常食だな〜〜あ〜〜あのカリカリっていう感触が満載の乾パンは最高だっ!!
そんな茶番に意味はなかったのだった.....
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こんにちは、名無しです。
そう、名無しなのです。
このまま行くと、いつか名乗る時に「ナナシ」みたいな名前になるというテンプレ展開が待っている。
そんなテンプレあっただろうか....?
....何にせよそれだけは避けなければならない。
しかし、自分で前世の名前などを名乗ってみたがステータスに変化はない。
「ナナシ」なんて嫌だっ、、
神...じゃなくて誰かネーミングセンスの良い人よ。
名前のない子羊をお助けください!
あ〜乾パン〜何で乾パンの砂糖はパンより先になくなってしまうの?
酷いっ!パンを置いて先に逝くなんて!
残されたパンは口の中から水分を奪って心も体も枯らしきってしまうのよ!!
....はっ!?意識がまた飛んでいた。
魔力切れが続く感覚はなかなかに酷く、そして愉快なものだった。
最初に襲ってくるのは吐き気がするほどの疲労、空腹かつ徹夜のような感覚に近い。
次に来るのが虚無感。
そして不思議なまでの落ち着きの中、始まっていく思考は徐々に苛烈になっていく。
精神の中では2度目の自殺が行われそうな状況だった。
例えるなら、親しい友への人生相談(with酒)だ。
最後はよく覚えていない。
だが敢えて言うなら深夜特有のハイテンション。
自分でも何言っているか分からないのに言いたい言葉は出てくる感じ。
そして最期は今の状況だ。
目の前が歪んでいる。
これはきっと走馬灯のようなものだ。
異世界での人生はまだまだこれからだったし、努力は辛かったけどステータスが伸びていくのを見ていると達成感を感じた。
それは本当に久々に感じたものだった。
周囲の期待とか、失望されないためにとかじゃなく、自分を高めたことへの純粋な達成感。
短い人生だったが、前世より多くのことを学んだ気がする。
悔いはない。
さようなら、自分.....
お疲れ様、自分.....
完
まだ続くのである。